2018年度の経済成長(一次推測値=一次改定値)の結果と分析 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

2019年も終わりが近づいてきましたが、先週2018年度の経済成長率の一次推測値が発表されました。
結果を見ますと、
実質経済成長率:0.3%
名目経済成長率:0.1%
GDPデフレーター:▲0.2%


と、かなり厳しい状況となりました。なお、GDPデフレーターには輸入品の価格変動が反映されないので消費者物価指数とは異なる値となります。

(以下、特に指定がない場合はGDPとは実質GDPを指します)
内訳を見てみますと、まずは貿易赤字と民間住宅の減少によるマイナスがGDPをそれぞれ▲0.1%押し下げています。
他の要素はどれもGDPの寄与度0.0~0.2%(国内需要の合計は0.4%)と、低調に終わりました。特にGDPの6割弱を占める民間最終消費支出が前年比+0.1%に終わったことが低成長の主要因と言えるでしょう。
消費支出の伸び悩みと書くと収入≒賃金の伸び悩みを連想しがちですが、雇用者報酬は前年比+3.0%と非常に大きな伸びを示しており、賃金と消費が異なる動きをしていることが読み取れます。なお、こちらの統計においても雇用者報酬が統計史上の最高値を更新しました。
それでは消費が伸びなかった要因は何なのか。ここでもう一度GDPデフレーターに注目したいと思います。
GDPデフレーターがマイナスということは国内付加価値の総額としては前年と比べて物価が下がったということですが、消費者物価指数は2017年→2018年で+0.9%と物価の上昇を示しています。
また、輸入の増減を名目GDPと実質GDPで比較してみると、名目GDPでは+6.8%、実質GDPでは+2.2%と大きな相違があります。この差から輸入デフレーターを計算すると106.8/102.2=1.045で実に4.5%も輸入物価が上昇していることがわかります。つまりGDPデフレーターには表れない輸入品の価格の上昇が消費を減少させた原因ではないかと思われます。
輸入物価が上昇すれば輸入量は減少を示しそうなものですが、実質ベースでも輸入は前年比+2.2%と増加しており、「価格が上昇しても国内で代替できない」物の値上がりが深刻だったことが伺えます。
日本が国内で代替できないものの筆頭品目としては原油が真っ先に連想されますが、その価格を確認するとドバイ(中東)価格で前年比+30%もの猛烈な値上がりをしており、さらに原油価格を確認してみると、2005年以降は明らかに原油価格が高値で推移していることが分かります。

東日本大震災以降、火力発電への比重が高まっている日本では原油価格の影響が経済成長にダイレクトに響くようになりました。そしてその原油価格は高値の推移を続けています。この状況を打破するためには原発を再稼働させるかコージェネレーションシステムの導入などESG投資を促す仕組みを整える必要があるでしょう。
どちらも政治案件です。是非とも進めてほしいものです。