なぜ公共事業悪玉論が根強いのか | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

結論から言えば、公共事業を増やしても経済成長に繋がらなかった『記憶と経験』があるからです。

近年日本の公共投資がピークに比べ大きく減っており、そのせいで日本の経済が成長しないと主張される方々がいます。では公共投資がピークだった頃の日本は経済成長していたのでしょうか?



平成4~14年にかけて、日本は毎年公共事業関係費に10兆円以上を投入し続けていました。平均では11.7兆円/年と、現政権の約1.8倍ですね。

では同時期のGDPを見てみましょう。

平成4年(1992年):495兆円
平成14年(2002年):516兆円
https://ecodb.net/country/JP/imf_gdp.html
10年かけて21兆円しか増えていません。年平均の経済成長率は約0.4%です。
現政権が消費税を5%から8%に引き上げた後の平成27年→30年でさえ、3年間でGDPは+18兆円。年平均の経済成長率は約1.1%です。

安倍政権が消費税を引き上げたことによって景気が腰折れしたと言われますが、公共投資を大々的に実行していた10年間の平均成長率はその4割に満たないものだったのです。
十年・・・言葉にすればわずか二文字ですが、生きてみれば随分長い年月です。今から10年前と言えば民主党政権が誕生し、オールスター内閣などと持て囃されていた頃。そこから現在に至るまで年間10兆円以上の公共事業関係費が費やされてきたと考えると、非常に長い期間だったと感じられるでしょう。

MMTerを筆頭に経済停滞の原因を緊縮財政に求めたがる人がいますが、日本が財政出動を積極的に実行していた時期の経済はこのような状況でした。

日本で公共事業悪玉論が根強い原因は財務省のミスリードなどではありません。10年間も積極財政を実行したにも関わらず経済成長できなかった『記憶と経験』なのです。

なお、私は公共事業による経済成長を100%否定するつもりはありません。GDP=C+I+G+EX-INですから、政府支出(G)が増えればそれだけGDPも増えます。
但し、それだけです。
バブル崩壊後や不良債権問題噴出(消費税3%→5%による停滞ではありません)後の大不況を吹き飛ばすほどの効力はありません。当然今の日本経済を大きく成長させるほどの力もありません。
今の日本は建設業が未曾有の人手不足であり、無闇に公共事業を増やすとそちらに人手を取られて民間投資が縮小してしまう恐れもあります。

公共事業待望論者はまず20年前の日本を振り返ることから始めましょう。