「最近は国際共同治験(Multi-Regional Clinical Trial,以下MRCT)で実施されるから,ブリッジング試験はもう使用されない。」という旨の発言を耳にすることがある。もうブリッジング試験は廃れたのか?と思ったが,日本では2000年頃から大きく減少しているものの,ブリッジング試験は未だに実施されている。以下に状況を整理し,考察してみる。

 

ICHE5が示すブリッジング試験とICHE17が示すMRCTは,申請国の医薬品開発の成熟度がまるで異なる。

 

ICHE5:外国では標準治療とされているのに,自国で未だ開発されていない医薬品を対象としている。外国人のデータを自国申請に用いるために,自国でブリッジング試験を実施する。この試験で用量反応,有効性,安全性等の類似を示せれば,外国データを申請に用いることができ,申請者の試験実施に対する負担は大幅に減る。

 

ICHE17:欧米でも使用されていない,世界的にも未だ開発されていない医薬品に対する開発を想定している。地理的地域(geographic region)等で世界をグループ分けし,全体の結果とグループの結果に大きな違いがなければ,グループ内に含まれる自国の人数に問わず(0人も可),承認申請できる。

 

ICHE5は,医薬品開発の後進国が世界的標準に追いつくための施策であり,ICHE17は,世界が更に標準を推し進めるための施策である。ICHE5は,先進国である欧米をターゲットとしておらず,欧米で使用されていたけど,自国に導入していない国々(2000年頃の日本を含む)をターゲットとしている。

日本において,MRCTの増加とブリッジング試験の減少は直接的な相関はない。単に日本で利用できる医薬品の水準が欧米とほぼ同等になったため,ブリッジング試験の欲求に繋がるような,日本で未開発の薬が欧米になくなってきているのである。

 

以上より,ブリッジング試験とMRCTは,「MRCTの増加→ブリッジングの減少」という直接的な関係はなく,「利用できる医薬品の水準が欧米水準に追いつく→ブリッジングをしたい薬が減る→MRCTに注力できる医薬品開発リソースの増加→MRCTの増加」という間接的な関係と考える。しかし,海外で利用できて日本で利用できない薬を,日本に導入する際に,ブリッジング戦略は強力なツールであり,今後も適宜利用されていくと考える。日本では世界最先端の薬の開発をMRCTで行いながら,適宜海外だけで使われている薬をブリッジング戦略で導入していることが行われていくであろう。

 

 

引用

1)外国で実施された医薬品の臨床試験データの取扱いについて(日・英)

2)国際共同治験の計画及びデザインに関する一般原則に関するガイド ラインについて(日・英)