3.2.2 ブリッジング試験の性質と範囲
ブリッジング試験により、新地域での用量反応、安全性及び有効性が元の地域におけるそれらと類似していることが示されれば、その試験によりその外国臨床データについて“ブリッジング”できると解釈できる。
この記載は,大きな概念が示されているのみであり,実際の運用を知らないと具体的なイメージは湧かない。「用量反応,安全性,有効性をそれぞれ主要評価項目とした試験をやるの?1試験ではだめなの?」と疑問も湧く。ガイドラインでは以下の記載がある。
ほとんどの場合、1つの試験によって新地域における追加データが得られ、かつそれにより元の地域のデータが新地域に外挿可能であることが立証されれば、その試験で十分であり、それ以上の繰り返しは必要ない(3.2.2項)。
ガイドラインでは1試験で十分と記載はあるものの,製薬協等が公表している資料をみても,国内試験1試験で済んでいるものは見当たらない。少なくとも,日本人を対象とした第1相薬物動態試験と第2相用量反応試験はされているのが実情と伺える。
また,E5のガイドライン全体を読んでも,承認をとれるまでのプロセスがいまいち理解しづらい。実際の運用は(1)事前に治験実施計画書や統計解析計画書に,ブリッジング条件(一般的には数項程度)を定義する。(2)試験結果がそのブリッジング条件を満たしているかを判断する,という段階を踏み,ブリッジング成立可否が判断される。私見だが,ブリッジング条件は試験開始前に規制当局と協議しているのが一般的なので,ブリッジング条件さえ満たしていれば,ほぼ間違いなく承認されるものとみていいと思う。一方,仮にブリッジング条件を満たさなくても規制当局との協議の結果承認されることもある。
ではブリッジング条件には何が含まれるかは,ブリッジング試験の種類により変わる。以下に後追いブリッジング試験として代表的な用量反応ブリッジング試験のブリッジング条件例を示す。
(a)ブリッジング対象試験(先行する海外試験)で高用量薬と低用量薬の用量比例性が示される。(=用量比例性)
(b)ブリッジング試験で高用量薬のプラセボに対する優越性が示される。(=有効性)
(c)ブリッジング試験で高用量薬の低用量薬に対する用量比例性が示される。(=用量比例性)。(a)との類似性をみる。用量比例に関する線形性を統計学的に比較することもあるが,目視的でよいとする場合も多く感じる。
(a)と(c)の達成で,海外の検証的第3相試験の結果を日本人と外国人で用量比例性の類似性が示される。(b)で国内第2相規模のブリッジング試験でプラセボに対する有効性が示せれば,(a)と(c)によりブリッジング対象海外第3相試験の結果を日本に外挿することができる。
以上の例のように,有効性のブリッジング試験では,安全性に関するブリッジング条件は含まれていないことも多い。もちろん,安全性に対する評価も行っている。またブリッジング試験には種類があり,ICHE5でも3.2.3項 有効性に関するブリッジング,3.2.4項 安全性に関するブリッジングと項立てされていが,安全性のブリッジング試験は予定していたブリッジング試験で有害事象事象の外挿情報が不足していたときに行うものであり,あまり一般的なものではないと経験上感じる(別試験を要求されることはメインのブリッジング試験の限りなく失敗に近い印象をうける)。ブリッジング試験ときいたら,有効性に関するブリッジング試験を想像してよいと思う。一方,有効性に関するブリッジング試験についても,ブリッジング試験が不要な場合,薬理学的エンドポイントを用いたブリッジング試験,臨床的エンドポイントを用いた比較臨床試験と分類されていて,個々の事例で要求が異なる。
引用
2)臨床データパッケージにおける 外国データの利用状況 -国内承認品目を対象とした詳細調査・分析- (2006年-2012年)
3)上坂浩之_医薬の世界同時開発と多地域試験_保健医療科学 2011 Vol.60 No.1 p.18-26