ICHE1ガイドラインの以下の記載をRule of 3と共に読み解く。
Rule of 3は頻度が0%又は100%のとき,それぞれの95%信頼区間の上限又は下限を算出する方法で,ICHE1では頻度が0%で95%信頼区間の上限を算出する方法を利用している(詳細は統計WEBを参照)。 「3/被験者数×100=有害事象発現割合」を用いて,仮に0%だったときに,ある有害事象は95%信頼区間の上限に相当するリスクがあると解釈する。
①期間が6ヶ月以下の試験
(a) 「短期間のうちに発現する 有害事象の発現率(例えば,3カ月間の累積発現率が約1%)が明らかにされることが期待されている」
解釈:Rule of 3 より,3/n×100=1を導ける。この式を解くとn=300となる。つまり,ICHは1%程度で発現する有害事象を収集するために,治験薬を300例に投与することを求めている。この300例という人数は,次の例に示す「300~600例」の下限値に該当している。
(b) 「このためには,妥当な頻度(一般的には 0.5~5%程度)の遅発性の有害事象が観察できるとともに, より高頻度に発現した有害事象がその後の期間中に増加するのか,あるいは減少するのかを観察できるだけの 十分な症例数が必要である。通常300~600例の対象症例数が適当である」
解釈:3/n×100=0.5と3/n×100=5が導ける。この式を解くと,一つ目のnは600,二つ目のnは60となる。つまり,ICHは0.5%程度で発現する有害事象を収集するために,治験薬を600名に投与することを求め,5%程度で発現する有害事象を収集するために60名に投与することを求めている。ただし,5%程度で十分と判断されることはないので,現実的には300例~600例が求められ,発現率が0.5%~1%の有害事象を収集することを推奨している。
②期間が12ヶ月の試験
「100例の患者に対して最低1年間投与して得られた成績は,安全性データベースの一部として採用できると 考えられる。1年間の投与期間中に何ら重篤な有害事 象が認められない場合には,そのような有害事象の1年間の累積発現率は3%未満と考えてよい。」
解釈:3/n×100=3が導け,n=100と解ける。重篤な有害事象の発現割合が0%であった場合,95%信頼区間の上限が3%となることは上記の「3%未満」と完全に一致する。ICHは1年投与を継続する試験においては,人数が100例程度になることはある程度容認している。1年間投与して発現割合が3%未満の有害事象を収集するために100例に投与することを求めている。
③臨床データパッケージ
「短期投与も含め,治験薬が投与され る総症例数は500~1,500例程度が望ましい。」
解釈:①,②でみたように個々の試験から収集が期待できる有害事象の発現割合は短期試験では0.5%~1%,長期継続投与試験では3%である。個々の試験の評価ではn数に限界があるため,臨床試験データパッケージの安全性データを併合して全体的なデータを算出する。
Rule of 3より,3/500×100=0.6%と3/1500×100=0.2%が導ける。ICHは臨床データパッケージにおいては,治験薬の総投与数が500例のときは発現割合が0.6%の有害事象を収集でき,1500例のときは発現割合が0.2%の有害事象を収集できると考えている。
「治験段階での安全性評価においては,例えば1,000例に1件未満の割合[0.1%(追記)]で 発現するような稀な有害事象を検出することは期待されていない。」
解釈:直前の項より,ICHは臨床試験データパッケージ全体でも判断できるのは,発現割合が0.2%~0.6%の有害事象であり,到底1試験でも期待できる確率ではない。したがって,治験段階においては,発現割合が0.1%程度の有害事象の収集は期待されておらず,市販後の調査で実施していくものとなる。
④まとめ
⑤疑問点
Rule of 3では,公式の中に「時間」の概念が含まれていないため,3ヶ月と12ヶ月で100名に対し,同じ95%信頼区間の上限が算出されるのが理解できない。一般的に12ヶ月投与するほうが,リスクは上昇するはずである。
また,長期にすると短期より,期待される有害事象の発現割合が減少することが直感的に理解できない。
引用
ICHE1(日・英)
https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0015.html
統計WEB