オレたちと3・11ーその6 | いつか旅立つ日が来たとしても

いつか旅立つ日が来たとしても

ひとりと一匹と、その日々のこと。

おまえの非常食やリードなど
必要なものをまとめて、暗い階段を
ロビーまで降りた。
1階のロビーには住人たちが集まっていて
ーここも危ない
ー津波が来るらしい
ー崩れたら下敷きになるので上の方がいい
など口々にしゃべっていたが
誰も動かず
この時点でテレビも携帯も使いモノに
ならかったので、揺れが収まっても、
どうしていいのか、皆、途方に暮れている
ようだった。
これほど大勢の人間に囲まれたことが
ないおまえは、気配を消そうと懸命で
声も上げなかった。

やがて、外に雪がちらつき
吹雪になった

ひょっとして世界の終わりは
こんなふうに始まるんじゃないかと
ぼんやり、オレは思った。