オレたちと3・11ーその4 | いつか旅立つ日が来たとしても

いつか旅立つ日が来たとしても

ひとりと一匹と、その日々のこと。

ふとんをめくると
目をまんまるにして
おまえがオレを見上げた

おまえを撫でながら
痛がるところがないか
チェックする。

おまえは緊張していて
動かずじっとしていた。

逃げるぞーとおまえに言った
おまえが頷いた気がしたが
その後が不味かった。

ケージを持ち出すと
おまえは暴れて散らかった部屋の
中を逃げ回った。
パソコンラックの上に登り
威嚇の声を上げる
こんなときにどこに連れて行くつもりだー
とでも言いたげで
散らかった部屋の中、追い回すこともできず、オレは途方に暮れるしかなかった。

そうだよなぁ。ケージにはいい思い出が
ないものなあと

ここから動かないぞ。と言いたげに
窓辺に座り込むおまえを見てると

もういいや、と思った。

同居人にコートと万が一のために
ヘルメットを渡すと、先に避難するように
言って、オレもおまえの隣に座った。

逃げたくなければ、逃げなくていい
オレも一緒だ
約束したよな、絶対見捨てないって
おまえが逃げないなら、オレも逃げない
死ぬときゃ一緒だ

涙が出そうになったが
静かな気持ちで、そう口から出ていた。

これが最後だとしても
おまえと一緒なら、そう悪くないと
本気で思えた。

穏やかな日差しを感じた
余震が続いている。