音 | いつか旅立つ日が来たとしても

いつか旅立つ日が来たとしても

ひとりと一匹と、その日々のこと。

夜、おまえの姿が見えなくても、音がおまえがいることを教えてくれる。

 

窓際の食事スペースで水を飲む音

トイレで用をたしたあとで砂をかける音

そして、プラスチック板がバンバンバンと鳴る

最初、トイレがあるケージの横にはダンボール箱があり、トイレから出るとき、おまえが、それに爪を立てるので、トイレに紙くずが落ちて汚くなってしまったことがあった。

それを防ぐために、薄いプラスチック板を設置したら、おまえは好んで、そっちを引っかくようになった。

その音がバンバンと鳴る、まるで、手を洗っているかのようだ。

 

そしてお気に入りの場所で爪を研ぐ音。

フローリングを歩いてくるとき、爪が立てる音。

目を閉じた、まどろみのなか、おまえがいることを音が教えてくれる。

 

 

ただ、「ケポッ、ケポッ、ケポッ」という音がしたときだけは、

オレはティッシュをつかんで、飛び起きる。

夜中のゲロ掃除の始まりだ。