1960年堀川弘通監督作品。モノクロ。松本清張原作。2020年にNHKで谷原章介主演でドラマ化されたが、なかなかの秀作で見ごたえがあり、またブログも長く多くの方に読んでもらえている。このテレビドラマでは主人公が同性愛者で、ゲイの不倫を隠そうとする設定に変えらていた(原作は未読)。この設定変更が内容に大きな説得力を与えていたが、この映画はおそらく原作通り、あるサラリーマン(小林桂樹)が妻に内緒で通っている女の愛人との密会を隠そうとすることをきっかけに破滅の道を歩んでいく。



※ややネタバレあり



 石野(小林桂樹)は42歳。都内の中堅会社で課長職にあり、妻と子供二人、堅実でそれなりに余裕のある暮らしを営なむと同時に、会社の若い女の部下を愛人にして大久保に住まわせていた。ある日向島で若妻が殺され、保険外交員の杉山が容疑者として逮捕される。杉山は石野の隣人で、事件当夜愛人の家から出てきた石野に出くわし、互いに目礼を交わしていた。杉山は自分のアリバイ立証のため大久保で石野に会ったことを警察で話し、刑事が石野の会社に裏を取りに来るが、石野はそんな時間にそんなところにはいないし、会ってもいないと偽証する。


 こちらも手堅い作りの上質なサスペンスだ。ただ前出のゲイバージョンと当然だが話は途中からかなり違ったものになる。こっちはかなり原作に忠実なのかな? 要は杉山と同じ立場に立たされてしまうという因果応報もの。ドラマ作りのお手本のような正統派で上質な脚本と演出でテンポもいい。2020年版は主人公が同性愛者であるという重い秘密を生涯にわたって抱えていたが、こちらは愛人がいても大した良心の呵責や後ろめたさもなく、うまくやっていると気にもしてない。ズルい男が、「大したことはしてないのに、なぜ近所の男とすれ違っただけでこんなことに」と思いもしない転落にいつのまにかはまる話だ。