大学生を中心に?売れているらしいこの本を読んでみた。タイトルからすると内容は「我々は暇と退屈をどうとらえ、どう向き合うべきか」ということになる。「仕事で忙殺されているが毎日退屈だ」などという言い方が充分成立する現代社会。むしろ「遊びも仕事も忙しいが、実は常に退屈している」といいうる世の中というべきかもしれない。

 東大准教授のこの著者。話は人類が狩猟生活による移動生活を止め、農耕生活による定住生活を始めたことから「暇と退屈」が始まると説く。話はそっから始まるんかい、と思う。続いてパスカルに始まる古来の学者たちによる「暇と退屈」に関する学説の歴史を紐解く。そりゃそうだ。暇と退屈について考察したのは何もこの先生が初めてではない。その時々で学者たちはその時代における「暇と退屈」の意味に向き合っている。
 というわけで、いよいよこの「消費社会」という歴史的に稀というか発展した結果?のこの特殊な現代における「暇と退屈」の意味についての考察が始まる。「商品が消費者の必要によってではなく、生産者の事情で供給される」。消費社会において「浪費」はない。浪費にはやがて限界がくるが、「消費社会は、私たちが浪費家でなくて消費者になって、絶えざる観念の消費ゲームを続けることを求めるのである」。
 一度通読しただけだが、けっこう大変だった。本が難しいと感じる理由は①文章そのものが難解でわかりにくい、②内容を理解するにあたり前提とする知識のレベルが高い、の二つが主にその理由となることが多いが、この本はどちらも基本的にあてはまらない(一部引用については①があてはまるが)。にしても一度ざっと読んだだけであたしくらいの知性で消化できる内容でもなかった。私たちが無意識のうちに「当たり前」としている視点、感じ方の土台を相対化、可視化していく。さらっと一読でも、読書の楽しみはそれなりに味わえる作品ではあるが、けっこう厚いし、こういう本を読みなれない方は書店で一度ぱらぱらと手に取ってみてから実際読むといいかもしれない。図書館とかね。

(新潮文庫 800円)