子育てと仕事に追われる日々を過ごすワーキングマザー等々、日々一生懸命時間を過ごす様々の方に複数の角度から不快感を持たれそうだが、私はよく寝るし、実際寝るのが好きだ。気持ちがいい。夫には「人生を無駄にしている」「もはやおばあちゃん」とよく言われる。自分にとって気持ちのいいことをしているので無駄だとは全然思わないし、おばあちゃんは寝るのが早くても長時間は寝られない。
私は若い時から長時間寝るのが習慣だった。基礎体力がそもそもないというのもあると思う。高校受験を控えた中三のとき、
「勉強をしているので7時間しか寝てない」
と言ったら、同級生の男の子に「そんなに寝ているのかよ」と驚かれたことに私が驚いたことをよく覚えている。あたしひとより寝てるの? 独身OL時代は平日は6時間程度だったりしたが、子ナシ専業主婦の現在、午後9時ごろ寝て5時に起きるのが通常だ。結婚以後何度か夫が転職して、そのたびに時間は多少変わっているが、現在のペースは私にはなかなかベストだ。
基本的には夜8時半過ぎには猫を抱いて寝室に行く。夫は居間でテレビを見ている。寝子と書いて猫と読むなんて話もある。私も本物の猫には及ばないが、人間のなかではかなりの寝子だ。猫を抱き、ベッドの中で何度も読んだ軽いエッセイの好きなパートを読み返したりしながら9時頃には消灯する。5時に目覚ましをセットしているが、たいていトイレに行きたくなってその前には起きている。三時台とかあまりに早いのでトイレに行ってからまたベッドに入ることも多い。こうしてうとうとしながらベッドのなかでウダウダしている時間も大変気持ちが良い。こんな生活をしているので、夫が仕事で遅くなって10時以降の就寝を強いられると体力的に翌日キツい。通常夫は7時台に帰ってくることが多い。夫が朝出るのも7時頃だ。ここまで寝ているので体調がよければ昼寝はさすがにしないが、ホルモンバランス不調の時(更年期障害)は昼寝もする。不調期は順調期以上に寝るが、やはり睡眠の快感はなく、質も悪い。昔「人生の三分の一は睡眠です」とかいう枕かなんかのCMがあったが、私の場合は1/3ではきかないだろう。
夫が飲み会で遅くなるときは待たずに寝る。こういうときはもっとひどい。7時くらいには既にすることがなくなって、見たいテレビもやってないしと猫をつれて早くも寝室へ行く。冷暖房の時期は特に広い居間にひとりより、狭い寝室の空調をとなる。そうすると寝室でゴロゴロしながら、結局7時台や8時台には消灯して翌朝五時まで寝ている。ちなみに寝すぎは寝不足同様肥満のもとになるそうなので、その辺に関心の高い方には注意されたい。これは経験的にみても真実だと思う。私の場合平日は日によって違うが早くて午後一時、遅くとも夕方4時頃までに昼ご飯兼夕飯が終わっているので、例えば六時ぐらいに夕飯を食べ終わってすぐ寝るということではない。睡眠時間は長すぎても短すぎても太る。というわけで、夫が飲み会の日は私は食事量を減らしても太ることが多い。寝不足でずっと疲れが残るような状態もダイエットには向かない。ダイエット中は規則正しくしっかり適正時間寝ることがダイエットを効率的に進める要因となる。以上ダイエット豆知識でした。
しかし減量中のボクサーじゃないが、ダイエット中ってやっぱりよく眠れなくなる。おなかが減って目が覚める。睡眠の質もやっぱりちゃんと食事をとっているときほどよくない。眠りの快感もあまりない。でも試合前のボクサーの減量を考えたら、あたしのダイエットなんてゴミだよな。いくら目指すところが違うとはいえ。こうして考えると、常に長時間寝ているのは変わりないが、「気持ち良い睡眠」は全体の半分あるかどうかなのがわかる。
50歳目前によくそんなに寝ていられるね、と思う方もいるだろう。実際明け方になるまで何度か目は覚める。まず猫と一緒に寝ることが多いが、朝まで一緒にいることはない。わりと早く外に行くと言い出すこともあるし、深夜を過ぎてからのこともある。私と一緒の布団で寝ていた猫がテラスに出る引き戸の前に飛び降りると、猫を外に出してまた私は寝る。トイレでももちろん起きるし、夫の寝言やいびきに起こされることも多い。うちの夫は寝言が多く、しかも何を言ってるか明瞭に聞き取れて声も大きい。マジでびっくりする。心臓に悪い。内容はほぼ100%仕事のことで、たいてい相手に対して「どうしてこんなこともわからないんだ」的な不満をぶつけて怒鳴っている。彼がどれだけ真剣に仕事に身を入れ、かつストレスにまみれているかが察せられる。そういうときは「うるさい」と私が怒鳴り返し、夫の手を引っ張ったりすると静かになって、私はまた寝る。こんな睡眠生活で日々の体調はいたって良い(更年期的ホルモンバランスの不調のある時期は除く)。
こんな私なのでどこでも気持ちよく眠れるかというと、そんなことはない。むしろ神経質だ。というか今現在夫と暮らしているこの家で夫や猫といるときだけに限定されることに最近気づいた。昔からそうだが、枕が変わるとダメというやつで、ホテルや夫の実家はもちろん、現在は自分の実家ですらロクに眠れない。アウトドアのテントで寝袋なんて問題外。うち以外の場所でそれなりの時間に布団に入ると「眠れるだろうか」と緊張感すら感じるし、実際なんとなくウトウトして終わり。翌朝しっかり寝て疲れが取れたという感じは全くないし、眠りの快感も全くない。連泊しても同じ。つい先週私の実家に夫と泊り、やはり私はほとんど眠れなかったが、夫は熟睡。
「ひとり70円というのを強調していただけると」
と機嫌のよさそうな営業モードの口調で寝言を言っていた。この時に限らず、寝言を聞いたときには翌朝身に覚えがあるか確認しているが、いつも全然覚えてないし、関連づいた夢の記憶もないという。本当に記憶がないのか説明するのが面倒なだけなのかは不明だ。
自分の家で誰かが泊まるときもやはりよく眠れない。他人はもちろん義母他の身内でもそうだ。もちろん別室で寝てもらっている。この場合は夫や猫がいてもダメになる。「寝るのが好き」な私の睡眠の快感は実は条件によってかなり限定されている。
ファミリータイプのうちのマンションで70代女性がふたり一人暮らしを長年続けていくうちに、ひとりは神経症的になり、ひとりはもはや限界と狭いURに引っ越してしまった。その気持ちというか感覚は想像がつく。他人事ではない。神経症的な言動が垣間見えた女性の家には最近娘が孫二人と出戻ってきた。そのせいで治ってしまったと私は想像している。直接的にも間接的にも彼女のそういう言動に最近接していない。この方もひとり広い家でよく眠れなかったのが、ぐっすり眠れるようになってしまったのではないだろうか。
ちなみに私は今の家に日中ひとりで猫といるのも大好きだ。街や駅に出るのにはちょっと不便だが、その分家の中にいるとなると、高台にあるこのマンションはとても居心地がいい。駅に近かった実家にいたころは、三日間ずっと家にいるなんて病気になる、と思ったことすらあった。でもこの家にひとりでいるのが好きというのも「亭主元気で留守がいい」じゃないが、夫と暮らすのが前提で、一人暮らしとなったら私もここにひとりではいられないと思う。前出の二人の70代女性の心情はよくわかるつもりだ。夫と暮らすのが前提というのも、ずっと一緒は苦手で、やっぱり働きに出ている旦那様を待って平日は家事をして過ごし、土日を一緒に過ごすというのがベスト。結局現在当たり前にしている居心地の良さは実は複数の条件に支えられている。いずれにしても、徹頭徹尾旦那様が私に与えてくれているもので、まこと感謝に堪えない。