※作品のキモに触れるネタバレあり。

 映画やドラマにもなった小説(未見)。46歳で突然死したデパートマン椿山はそのまま成仏するのを拒否し、3日間の猶予をもらって現世に返してもらえることになるが、その姿は39歳の美女だった。タイトルの七日間は死んで直後から「初七日」の意で、現世に戻れる期間は三日。椿山は戻ったばかりに、実父、妻、息子を含む自分の家族のとんでもない事実を知ることになる。むしろ自分だけが何も知らなかった。同時期に中年ヤクザと少年も三日の猶予をもらって現世に戻り、生きている時とは別の姿になって、それぞれ思い残していることを果たそうとする。
 読んでいる最中は笑えるし面白い。先はどうなるんだろうとグイグイ読ませて感動もする。しかし読み終わって作品を振り返ると違和感というか、突っ込みどころが多いというか、破綻しているいうか、それほど緻密な作品世界ではないし、かつ好きになれる世界観でもなかった。納得はできない。
 例を挙げるならラストにおけるあの世のシステムとか、椿山の妻の設定とか。あの世のシステム関して言うと、ラスト「現世に戻るに際しての三つの約束」を破ったヤクザと男の子は地獄に行くことになるが、事情を知った椿山の実父が少年の身代わりになる。この辺のやりとりは現代社会の「お役所仕事」批判なのかもしれないが、小説世界としては後味悪い。椿山の妻はずっと不倫を続けて不倫相手の子供を椿山の子として育てた。子はそのことに感づいて幼心に重いものをしょわされているが、妻は椿山が死んで不倫相手をすぐ家に入りびたりにさせている。恐るべき鈍感さと利己主義。恥も外聞もない。生き様に関する美意識なんてあったもんじゃない。裏切り続けた夫に死なれて良心の呵責とか、天罰の意識はないのかね。あたしにすればあの妻の行動は立派なモンスターだが、モンスターとしては描かれていないし、あまつさえそそのまま放置。息子に一生ぬぐえない遺恨を負わせた罪の深さは底知れないのに、まるで平然。その心情やキャラ説明も不十分で、その妻を椿山は真相を知っても愛しているとのこと。この妻も死後「邪淫の罪」に問われるのは決定となるが(ここまではもちろん書かれていない)、問われて「反省してます」と言えばOKというのがこの小説での「あの世」のシステム。誠実無私で死後まで生き抜いた椿山の実父が身代わりとはいえ地獄に行っているのに。この辺もすんごいモヤモヤする。ああいう子が大人になって異性と無邪気で健全な関係を形成できるのかね? 根本的に女性不信、人間不信になりそう。本当に好きなひとができたとき、自分の出自について話すことに大きな苦痛を伴うだろうし、自分の罪でないのに隠し事のある重荷。母親をどこか許せない気持ちを死ぬまで持つことになるのも哀れ。それ全部母親の罪だ。そんな女がほったらかしで、その上許されてしまうこの小説。作り事とはいえどうかと思う。というか作り事だけに嫌悪。あたし、大人同士でゴチャゴチャやる分にはともかく、子供を巻き込むのは本当に許せないのよね。
 というわけで、大人同士でゴタゴタ、「邪淫の罪」に問われた椿山が「セフレ」の知子の心情を知るくだりや、ラスト、
「生い立ちを嘆いている暇なんかないぞ。人生はおまえの考えているほど長くはない。泣いたり憎んだり悩んだりする間に、一歩でも前に進め。立ち止まって振り返る人間は、けっして幸せになれないんだ」

 というこの作品全体を貫いているであろうメッセージには感動したけれども。まあ、作品としてはあまり評価しません。

(朝日文庫 600円)