新型コロナのコの字もない去年の11月頃だったか。夫が同窓会でひとり帰郷して実家に泊まり、88歳一人暮らしの義母から蘭の鉢をもらってきた。端的に言って押しつけられてきたが、息子たる夫は面倒くさがって、いつものごとくされるがままだ。鉢には四つ株が植えられていて、観葉植物のように葉のみだった。
 仕方ないので(あ、ゆった)、適宜水をあげてテラスの日当たりのいい場所に置いた。月日は流れ、葉がボーボーと茂るばかり。花の咲く気配が全くない。既にコロナの脅威もリアルになっていた三月、義母と電話で話す機会があったので、
「お義母さん、葉が茂るばっかりで、花が咲く気配が全くないよ」
「まだだよ。四月か五月にならないと。水だけあげていればいい。でも花がつかない株もあるんだよね」
 なんと。結局観葉植物の可能性もあるというのか。うちはテラスの目の前に緑が広がっており、観葉植物の必要はない。普通にもらったものなら「花がつかない」と捨てられるが、義母がくれたものだけにおいそれとはいかない。「そういえば蘭はどうした?」なんていわれようもんなら、ねえ、あなた。マザコンの夫に「捨てちゃおうか」と相談するのも気が乗らない。夫は鉢の世話なんてまったくしないけど。
 そんなんでなんとはない気の重さとともに毎日蘭の様子を一度はチェックしていたら四月上旬、つぼみがついた。四つある株のうち、二つに明らかにつぼみがついた。他の二つは相変わらず葉っぱのみだが。
 コロナ騒ぎで自粛を余儀なくされ、何をするにもなんとなく気鬱な日々だった。
「お義母さん、ありがとう。心の中でとはいえウザがってごめんなさい、感謝です」
 とまでは思わないけれど、ふくらんだつぼみを見た時、確かにほっこりした。

 

 そうこうするうちに茎はスルスルと伸び、1メートル以上に。意外な展開。一株についてひとつと聞いていたつぼみも、ついた二株には複数ついている。二つ目以降のつぼみは一つ目に比べれば小さいものの。そして5月中旬。つぼみがようやく開いてきた。これまた意外なことに、中に小さい百合みたいな花がたくさんあるじゃありませんか。大きな花がひとつベカっと咲くパターンを想像していたのに。
 

 それにしてもネットの「義実家」って言い方、なんとかならないだろうか。「夫の実家」だっつーの。


※ニョキニョキと茎が伸びたつぼみの頃。来たときは下の葉の部分だけで、葉ももっと短く少なかった。




※つぼみが開いたら意外にもこんな感じ。小さな花がいっぱい入っていた。しかし花をみたままの魅力に撮るのって難しいな。どうもアガパンサス(紫君子蘭)のようです。



 

★今週の出来事★
5/22  黒川弘務検事長、緊急事態宣言中に朝日、産経の記者らと賭け麻雀をしていたとの文春報道をきっかけに辞任。朝日と産経のその後の対応も疑問なら、黒川氏は訓告処分となり懲戒免職を逃れ辞任も受理。
5/25 4/7に7都府県、同16日に全国に発令した緊急事態宣言を全面解除。