12月に見た映画 その2 | やせっぽちのヒロシのブログ

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趣味は国際交流?(笑)。

1950年代アメリカで、アフリカ系アメリカ人による公民権運動を大きく前進させるきっかけとなった実在の事件「エメット・ティル殺害事件」を劇映画化。
1955年、イリノイ州シカゴ。夫を戦争で亡くしたメイミー・ティルは、空軍で唯一の黒人女性職員として働きながら、14歳の息子エメットと平穏に暮らしていた。ある日、エメットは初めて生まれ故郷を離れ、ミシシッピ州マネーの親戚宅を訪れる。しかし彼は飲食雑貨店で白人女性キャロリンに向けて口笛を吹いたことで白人の怒りを買い、8月28日、白人集団に拉致されて凄惨なリンチの末に殺されてしまう。息子の変わり果てた姿と対面したメイミーは、この陰惨な事件を世間に知らしめるべく、ある大胆な行動を起こす。
「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール 報復の荒野」のダニエル・デッドワイラーが主人公メイミーを熱演し、ゴッサム・インディペンデント映画賞など数々の女優賞を受賞。名優ウーピー・ゴールドバーグが共演し、製作にも名を連ねる。(以上、映画ドットコムより)

 

☆かなりハードな内容でしたし、また1950年代のアメリカの黒人がどれだけ虐げられていたか、いいかげんな司法の元どれだけ闇に葬られた事件があったのかを思い知らされます。この事件も母親が勇気を出して息子の凄惨な遺体を世間に晒してまでして告発したからこそ明るみになった訳で、それでも結果としては....ただ、それが後の公民権運動に繋がっていったことで、やはり行動を起こすことの大切さを感じます。

エメット・ティルについてはボブ・ディランやエミルー・ハリスなど様々なミュージシャンが歌にしていますので、名前とそうした事件があったことは漠然と知っていましたが、それ以上詳しく知ろうとはしてこなかったことを今はとても後悔しています。

 

 

「僕たちは変わらない朝を迎える」「名前」などの戸田彬弘監督が、自身の主宰する劇団チーズtheaterの旗揚げ公演として上演した舞台「川辺市子のために」を、杉咲花を主演に迎えて映画化した人間ドラマ。
川辺市子は3年間一緒に暮らしてきた恋人・長谷川義則からプロポーズを受けるが、その翌日にこつ然と姿を消してしまう。途方に暮れる長谷川の前に、市子を捜しているという刑事・後藤が現れ、彼女について信じがたい話を告げる。市子の行方を追う長谷川は、昔の友人や幼なじみ、高校時代の同級生など彼女と関わりのあった人々から話を聞くうちに、かつて市子が違う名前を名乗っていたことを知る。やがて長谷川は部屋の中で1枚の写真を発見し、その裏に書かれていた住所を訪れるが……。
過酷な境遇に翻弄されて生きてきた市子を杉咲が熱演し、彼女の行方を追う恋人・長谷川を「街の上で」「愛にイナズマ」の若葉竜也が演じる。(以上、映画ドットコムより)

 

☆実は主演の杉咲花は苦手な女優さんでしたが、何度か予告編を見て、ミステリアスそうな内容に興味を持ち観ることにしました。で、これまた苦手な時系列がやたらと入れ替わり描かれるのにはちょっと混乱させられますが、それによりストーリーがこんがらがる訳でもなく、市子失踪の謎が次第に紐解かれていきます。そうした背景にはちょっと松本清張作品を思い浮かべたりしました。

ところで、この映画ではそもそも戸籍が無かったがゆえに起きてしまった悲劇が描かれていましたが、戸籍だの住民票なんてものはマイナンバーカードが普及すれば不要になるのでしょうかね? いや、少なくとも今の時点では保険証をペーパーレスにするとかどうでもいいことくらいしか出来ないでしょうね。

 

「エリザベス」のシェカール・カプール監督が、多文化が共存する街ロンドンを舞台に描いたラブストーリー。
ドキュメンタリー監督のゾーイは幼なじみの医師カズと久々に再会し、彼が見合い結婚をすると聞いて驚く。今の時代になぜ親が選んだ相手と結婚するのか疑問を抱いた彼女は、カズの結婚までの軌跡を追う新作ドキュメンタリーを制作することに。ゾーイ自身は運命の人の出現を待ち望んでいるが、ダメ男ばかりを好きになり失敗を繰り返していた。そんな中、条件の合う相手が見つかったカズは、両親も交えたオンラインでお見合いを決行。数日後、カズから婚約の報告を受けたゾーイは、これまで見ないふりをしてきたカズへのある思いに気づく。
「シンデレラ」のリリー・ジェームズがゾーイ役で主演を務め、テレビシリーズ「スター・トレック ディスカバリー」のシャザト・ラティフがカズ、「クルエラ」のエマ・トンプソンがゾーイの母を演じた。(以上、映画ドットコムより)

 

☆原題はティナ・ターナーのヒット曲と同名の"What's Love Got To Do With It?"ということで興味を持ったから...という訳ではありませんが、ちょっと気になるタイトルでした。

ドキュメンタリー監督の主人公ゾーイの幼なじみで隣に住みファーストキッスの相手でもあるカズはパキスタンにルーツを持つムスリムで、文化も価値観も全く異なる環境にあり、その彼がお見合い結婚(英語ではarranged marriageと言うらしいです)をするということで、それを取材させてもらいながら、自身の価値観との相違に葛藤しながら向き合っていくストーリーは、パキスタンでの婚礼のお祭り騒ぎも盛り込みながら、多文化共生の意義も考えさせられました。実際はこの映画のような異教徒同士のロマンスがハッピーエンドに繋がるのは難しいことでしょうが、個人的には観ていてとても心温まる作品で、後日もう一度観てしまいました。

 

「青いパパイヤの香り」「ノルウェイの森」などの名匠トラン・アン・ユン監督が、料理への情熱で結ばれた美食家と料理人の愛と人生を描き、2023年・第76回カンヌ国際映画祭で最優秀監督賞を受賞したヒューマンドラマ。
19世紀末、フランスの片田舎。「食」を追求し芸術にまで高めた美食家ドダンと、彼が閃いたメニューを完璧に再現する天才料理人ウージェニーの評判はヨーロッパ各国に広まっていた。ある日、ユーラシア皇太子から晩餐会に招かれたドダンは、ただ豪華なだけの退屈な料理にうんざりする。食の真髄を示すべく、最もシンプルな料理・ポトフで皇太子をもてなすことを決めるドダンだったが、そんな矢先、ウージェニーが倒れてしまう。ドダンはすべて自分の手でつくる渾身の料理で、愛するウージェニーを元気づけようとするが……。
「イングリッシュ・ペイシェント」のジュリエット・ビノシュが料理人ウージェニー、「ピアニスト」のブノワ・マジメルが美食家ドダンを演じた。ミシュラン3つ星シェフのピエール・ガニェールが料理監修を手がけ、シェフ役で劇中にも登場。(以上、映画ドットコムより)

 

☆日本のかつての人気マンガ(の割には今は書店から100数巻の単行本が全て姿を消している)「美味しんぼ」に登場する美食倶楽部を思い浮かべてしまいました。とにかく出てくる料理が皆美味しそうで、洋食の苦手な私も思わずよだれが出てしまうような料理がこれでもかと出てきますし、その調理の過程も流れるような美しさに見入ってしまいました。映画で「香り」を届けることの出来ないのが残念になるほどです。そうした料理のひとつひとつの中に美食家と料理人の間にある信頼関係と愛情が味付けされているような感じ?

 

「パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」などで知られるドイツの名匠ビム・ベンダースが、役所広司を主演に迎え、東京・渋谷を舞台にトイレの清掃員の男が送る日々の小さな揺らぎを描いたドラマ。2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、役所が日本人俳優としては「誰も知らない」の柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる男優賞を受賞した。
東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山。淡々とした同じ毎日を繰り返しているようにみえるが、彼にとって日々は常に新鮮な小さな喜びに満ちている。昔から聴き続けている音楽と、休日のたびに買う古本の文庫を読むことが楽しみであり、人生は風に揺れる木のようでもあった。そして木が好きな平山は、いつも小さなフィルムカメラを持ち歩き、自身を重ねるかのように木々の写真を撮っていた。そんなある日、思いがけない再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少しずつ光が当たっていく。
東京・渋谷区内17カ所の公共トイレを、世界的な建築家やクリエイターが改修する「THE TOKYO TOILET プロジェクト」に賛同したベンダースが、東京、渋谷の街、そして同プロジェクトで改修された公共トイレを舞台に描いた。共演に新人・中野有紗のほか、田中泯、柄本時生、石川さゆり、三浦友和ら。カンヌ国際映画祭では男優賞とあわせ、キリスト教関連の団体から、人間の内面を豊かに描いた作品に贈られるエキュメニカル審査員賞も受賞した。(以上、映画ドットコムより)

 

☆一人の公共トイレ清掃員の男性のほぼ決まり切った一日が幾度となく画面に繰り返されることで、一見単調な日常のように見えながらも、その中に起こる小さな波紋や異変、時に起こる歓びなどが淡々と描かれているところに、この映画の美学のようなものを感じました。そして渋谷など都心各地のモダンなトイレが仕事場ながら、戻る住み家は墨田川周辺(桜橋が何度も出てくる)で、飲みに出る先は知る人ぞ知る浅草駅の地下街というギャップ。

音楽の選曲にも監督ならではのこだわりがあった中、パティ・スミスやルー・リード、ニーナ・シモンといった人達に混ざり金延幸子の歌が聞こえてきたのも嬉しかったですし、個人的にはバーのママさん役の石川さゆりが常連客役のあがた森魚の弾くギターで歌う「朝日楼(The House Of Rising Sunの浅川マキ訳詞ヴァージョン)」に痺れました。

主人公が相手していた〇×の主が最後までわからなかったのが残念です(笑)。

 

フィンランドの名匠アキ・カウリスマキが5年ぶりにメガホンをとり、孤独を抱えながら生きる男女が、かけがえのないパートナーを見つけようとする姿を描いたラブストーリー。カウリスマキ監督による「パラダイスの夕暮れ」「真夜中の虹」「マッチ工場の少女」の労働者3部作に連なる4作目で、厳しい生活の中でも生きる喜びと誇りを失わずにいる労働者たちの日常をまっすぐに映し出す。
フィンランドの首都ヘルシンキ。理不尽な理由で失業したアンサと、酒に溺れながらも工事現場で働くホラッパは、カラオケバーで出会い、互いの名前も知らないままひかれ合う。しかし不運な偶然と過酷な現実が、2人をささやかな幸福から遠ざけてしまう。
「TOVE トーベ」のアルマ・ポウスティがアンサ、「アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場」のユッシ・バタネンがホラッパを演じ、「街のあかり」のヤンネ・フーティアイネン、「希望のかなた」のヌップ・コイブが共演。2023年・第76回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。(以上、映画ドットコムより)

 

☆物語が始まって間もなく、主人公が聴いているラジオで聞き覚えのある日本語の歌が流れてきて、それが何と「竹田の子守歌」。そこから一気に引き込まれていく感じでした。途中、ゴードン・ライトフットの名曲「朝の雨」のフィンランド語ヴァージョンも聞こえてきます。

まるで「君の名は」(あの人気アニメではなく菊田一夫の昭和のすれ違いドラマの方)を想い起こさせるストーリー展開を観ていると舞台は20世紀かとも思ってしまいそうになりますが、時折挟み込まれるロシアのウクライナ侵攻のニュースにこれが現代の話であることに気づかされるのでした。

主役の女性は以前何かで見たことがあると思ったら、映画「トーベ」でトーベ・ヤンソン役を演じた人だったのですね。

 

2013年に発表した中編作品「天使の欲望」が海外で話題となった磯谷渚の初長編監督作品。「リング」シリーズなどで知られる高橋洋との共同脚本により、12歳の少女が宿命の女性と出会い、激情に囚われながら大人になっていく姿が描かれる。
12歳の少女・真琴は、絵画教室の教師である衣良に心を奪われる。しかし、あるトラブルをきっかけに、衣良は街から姿を消す。それから6年の時を経て、大学生として絵を描くことを続けていた真琴はある展覧会で衣良と再会する。衣良はあの時と何も変わっていない姿だったが、彼女にはある秘密があった。衣良は生身の人間でありながら、血を吸わなければ生きていけない宿命を背負っていたのだ。
「ザ・ミソジニー」「水いらずの星」に出演し、本作ではプロデューサーを務める河野知美が衣良役を、「MOON and GOLDFISH」峰平朔良が真琴役をそれぞれ演じる。(以上、映画ドットコムより)

 

☆主演の女優さんの佇まいにはちょっと惹かれるものがありましたが(私も彼女に血を吸われてみたいものですw)、面白みのない大雑把なストーリー、安っぽい演出、一部出演者の素人っぽい芝居に、少々イラッとしてしまいました。

で、2023年の最後をこんな映画で終わりたくなくて、再び「枯れ葉」を観て口直しして締めました。