といったわけで。
皆さんぞうきんですか?干し柿ですか?
MUSiC楽しんで聴いていますか?
望まれもしないのにアルバム曲について語るシリーズ第5弾、やってしまいます。きょうはトラックNo.5・曇天についてです。面皰、日記に続く吉澤嘉代子さんの楽曲です。サクサクっといきます。
■エビ中さんとお天気さん
エビ中さんの歌ってきた楽曲は、いろいろなお天気と共にありました。
まず、好天方面。
なないろで見上げた空に広がっていたのは、きれいなブルーでした。
ほぼブラジルで差し込んできたのは、やる気をなくさせるような陽光と蒸し暑さでした。
一方で、悪天方面。
どしゃぶりリグレットでは、涙が隠せるくらいの強い雨が降りました。
春の嵐は雨感は薄めなものの、突発的な風の強さが伺えます。
大人はわかってくれないのMVでの土砂降りっぷりも印象深いですね。
そして曇天はその曲名の通り、晴れでもなく、雨でもない。どっちつかずであり晴雨どちらに針が振れゆくかわからないバランスの心情を描いた歌であります。歌詞のディテールを追うと色々面白いと思うのですが、今回はなんとなくサウンドと天気についてを考えてみたいと思うのです。
■サウンドで沸き立つ曇天の空
お天気のお話をしてみます。
南からの温かな空気と、北から流れ込む冷たい空気がぶつかりあって混じりあう所。そこに雲は発生し、空は曇天となります。
2方向からの空気の緩やかな温度差が発生させる曇り空は、ちょっとしたにわか雨をもたらしたり薄日を見せてくれそうになったりの、ただ曖昧な曇天になります。
一方で、両方の空気が持つ気温差が大きかったり、ぶつかりあうまでの風が強かったりすると、大気の不安定度が増します。不安定であればあるほど天気の崩れは大きくなって、急に凄まじい涙雨が落ちてきたり雷を伴ったりするタイプの荒天をもたらす曇天となります。
サウンドの方に耳をやります。
ドラムスティックのカウントから、堅く乾いた感じのヴォーカルが静かに入って、ミドルテンポの穏やかなビートで演奏が始まります。まずは、穏やかなんです。
それが安本彩花の発する曇天世界というワードを機に一転。にわかにかき曇って、ビッグマフのトーンを全開にしたかのようなシューゲイザー風ギターサウンドの轟音が爆発していきます。
まさにこの流れが、信頼と不安の混じりあいにより生ずる感情の不安定さを表しているのと共に、混じりあった空気によって雲が発達してゆく天気の不安定さをも表しているようにとれるのです。つまり、サウンドが感情と荒天のふたつの不安定感をリアルにいっぺんに描いているんですよね。
そしてシューゲイザーチックなギターの音って、ディレイとか空間系エフェクトがかまされるので、激しいんですけど音の輪郭がぼやけてつかみどころがないんですよね。だからこの音に包まれていると、厚い雲の中でもがいているような、そんな印象さえ受けるんです。
このサウンドワークでマルチに切り取られる曇天世界。ものすごい説得力を感じます。吉澤嘉代子さんと野村陽一郎さんのプロダクトには納得するしかありません。凄い。
■天気といえば
曇天の話は上記のとおりなんですけどね、ここでちょっと思い出しちゃったんですよ。
エビ中さんの天気に関わるエピソードで避けて通れないのは、2014年の氣志團万博についてですよね。
オープニングアクトとして初登場のエビ中さん。中止も危ぶまれるような荒天の中、それをものともしないパフォーマンスで豪雨をすべて受け入れて、後続の出演者に晴天をもたらしたってーのが語り草。「永遠に中学生(仮)2」の最終巻特典映像などで、そのときの様子を見ることができます。
その日の朝9時の天気図がこちら。大型の台風18号が四国の南海上から紀伊半島方面に進んできています。そして台風から湿った空気が前線に向かって流れ込む状況。この日、例えば神奈川県海老名では9月の観測史上1位の1時間雨量を記録したりしているんですよね。71.5ミリ降ったそう。
で、会場である木更津の10分ごとの雨量を調べてみました。
上図の通り、最も雨が降ったのは10時40~50分にかけての10分間で9.5ミリ。そして11時頃から夜にかけて雨量はショボって、降っても0.5ミリ程度になったのでした。
ででで、この日のタイムテーブルがこちら。
10時40分開始って…エビ中さん、雨が一番ひどくなる時間だけをピンポイントで狙っていたとしか思えないようなピッタリ賞っぷり。そりゃ綾小路翔も森山直太朗も心を打たれるわけですよ。
あ、9.5ミリの雨って大したことがないように見えるかもしれません。でもね、あくまでもこの雨は10分間に降った分量。もしこの強さの雨が1時間続いたら、1時間60ミリ弱ということ。気象庁の区分では非常に激しい雨で、滝の様に降るため傘が役に立たなくなり、車の運転は危険だと言われる強さなのですよ。
なんていうか、持ってるなあエビ中さんは。
■まとめとか
後半はぜんぜんMUSiCと関係ない話になっちゃいましたけど、なんつうか、土砂降りの日もあれば、晴れる日もある。世界ってのはそういった繰り返しで回っています。
だからもう一回繰り返しをしておきますが、このサウンドワークで切り取られる曇天世界に、僕はものすごい説得力を感じましたですよ。吉澤嘉代子さん、とても素晴らしい曲をありかとうございました。
主人公の頭上に広がる曇天の空は、このまま雨を降らせてしまうのでしょうか。それとも徐々に晴れていくのでしょうか。
あと、本筋とはズレた感想になっちゃうかもしれないんですけどね。
この曲を聴いていると、断片的な言葉から、例えば真山さんっていう存在を、様々なしがらみがエビ中っていう名の青春に綴じこめすぎないでいてほしいなあとか考えてしまったりします。彼女達にとって居心地の良いはずの場所が、これからも壊されないようにあってくれれば良いな、なんて。
ケセラセラ。どうにかなるさ、いつか晴れるさ。
あの日のエビ中さんが晴天を呼んでくれたみたいに。
良い春ツアーになりますように。
良い10周年イヤーになりますように。
それではそろそろ寝ますです。
おやすみなさいグー。