『 速さの公式は使えるように 9 』
○ 並列回路
電圧が 12 [ V ] の電池を、
電気抵抗がそれぞれ 1 [Ω] , 2 [Ω] の2つの抵抗 R₁ , R₂ を
並列につないだ回路の電源として接続したとき、
抵抗R₁ の電圧と電流を求めよ。
抵抗R₂ の電圧と電流を求めよ。
この回路の概形 : 左側が正極になるように電池をおく。
その上のところに、抵抗R₂ をおき、
さらにその上のところに、抵抗R₁ をおく。 ( 上からR₁ , R₂ , 電池と3つ並べておく )
R₁ とR₂ の左側どうし、右側どうしをそれぞれ導線でつなぐ。
いまつないだそれぞれの導線の真ん中あたり と 電池を
左側どうし、右側どうし導線でつなぐ。
次の [ ] に適切な語句・式などを入れてください。
R₁ の電圧と電流をそれぞれE₁ , I ₁ とし、
R₂ の電圧と電流をそれぞれE₂ , I ₂ とする。
ⅰ) 並列の部分は、[電圧]が同じだから、
[ E ]₁ = [ E ]₂ = 12 [V] である。
12 / 1 と 12 / 2 より、 (電圧は分子に)
I ₁ = 12 [A]
I ₂ = 6 [A]
ⅱ) 並列部分の全電気抵抗は、
その部分に存在する抵抗の電気抵抗の逆数の和の逆数 だから、
1 の[逆数] は、1 / 1
2 の[逆数] は、1 / 2
(1/1) + (1/2) = 3/2 の[逆数] は、2/3
12 / (2/3) より、 (電圧は分子に)
電池からの電流は、18 [A]
この全回路の電気抵抗を出して、電池からの電流を求める解き方は、
この問題には、あまり適していない。 ( 手間がかかる )
ⅲ) 電池の正極から 12 [V]で流れでた電気は、
R₁ で E₁ = [ 1 × I ₁ ] 電圧を下げて0 [V]で負極に流れつく。
あるいは、
R₂ で E₂ = [ 2 × I ₂ ] 電圧を下げて0 [V]で負極に流れつく。
よって、
E₁ = E₂ = [ 12 ] [V]
12 = [ 1 × I ₁ ]
12 = [ 2 × I ₂ ]
ゆえに、
I ₁ = 12 [A]
I ₂ = 6 [A]
必要な知識
並列の部分で
同じものは、[電圧]、
和であるものは、電流、
逆数の和の逆数であるものは、[電気抵抗]である。
【 公式 と 計算力はセット 】
電気抵抗が r₁ , r₂ , r₃ , r₄ , ・ ・ ・ ・ ・ の抵抗を並列に接続したとき、
その並列部分の全電気抵抗を R とすると、
1 / r₁ + 1 / r₂ + 1 / r₃ + 1 / r₄ + ・ ・ ・ ・ ・ = 1 / R (公式)
が成り立つ。
これは、ほとんどの生徒が使えない公式です。
中2のとき公式を覚えるだけで使えるようにしていないからか、
中3になっても
覚えたこの公式に数値を代入するだけで、計算できません。
ほとんどの生徒が必要な計算力を身につけていません。
代入後の式変形の手順 や
式が表していることを 理解していないのです。
「 公式を覚えたら、できる 」 という心地好い言葉に
捕らわれることはやめて、
しっかり言葉(言語)を使って、考えましょう。
代入後の式変形の手順
まず、できることは、左辺の計算だけだから、
① 左辺を計算し、分数 = 分数 にして
② 両辺をひっくり返す。( 両辺 を 逆数にする )
式が表していること
逆数の和 の 逆数 は R と等しい。
なぜ、直列では、電流が同じなのか ?
なぜ、並列では、電圧が同じなのか ?
言葉を使って、考える。
電圧 : 導体内または電場の2点間の電位差。 単位はボルト。
電気抵抗 : 電流の通りにくさの度合を表す値。 単位はオーム。
電流 : 導体を伝わる電気の流れ。 単位はアンペア。
導体 : 電気・熱を伝えやすい物体。伝導体。良導体。例えば金属など。 ↔ 絶縁体・不導体
抵抗 : [ 物理 ] 作用する力に対して反対の方向に作用する力。また、導体が電気の通過をある程度拒む働き。
良導体 : 電気または熱の導体のうち、伝導率の比較的大きいもの。
電位 : [ 物理 ] 電場に関し水位になぞらえた概念で、1点A から 他の点B に電気が流れるとき、
「 A は B より電位が高い 」 という。
電場 : 電気の作用の働いている場。電界。
電流について
直列は、電池の正極から流れでた電気が1本の道を通って、電池の負極に流れつくから、
流れる電気の量は、どこでも同じ。
並列は、通り道が2本以上あるから、
電池の正極から流れでた電気が、2本以上の道を分かれて通り、合流して電池の負極に流れつく。
並列部分で、和であるものは、電流。
電圧について
並列は、電位の高い電池の正極から流れでた電気が、2本以上の道に分かれて、
それぞれの抵抗で同じ電位下がって合流し、電位の低い ( 0 [V] ) 電池の負極に流れつく。
直列は、電位の高い電池の正極から流れでた電気が、1本道を、抵抗を通るたび電位を下げて、
電位が最も低い ( 0 [V] ) 電池の負極に流れつく。
回路の電位についてわかること
たとえば、12 [V] の電池 は、正極と負極の電位差が12 [V]であるから、
負極の電位を 0 [V] とすると、正極の電位は12 [V] になる。
ゆえに、
正極から最初の抵抗までの部分の電位は、12 [V] であり、
最後の抵抗から負極までの部分の電位は、 0 [V] である。
○ 全電気抵抗についての公式を導く。
次の [ ] に適切な語句・式などを入れてください。
・ 電気抵抗が r₁ , r₂ , r₃ , r₄ , ・ ・ ・ ・ ・ の抵抗が直列に接続されている。
この直列部分の等しい[ ]を I とすると、
E = R I を使って、
各抵抗の電圧は、 r₁ I , r₂ I , r₃ I , r₄ I , ・ ・ ・ ・ ・ である。
よって、全電圧は、各電圧の[ ]だから、
r₁ I + r₂ I + r₃ I + r₄ I + ・ ・ ・ ・ ・ になる。
また、全電気抵抗を R とすると、全電圧は、[ ] である。
ゆえに、 [ ] = [ ]
両辺を I でわって
r₁ + r₂ + r₃ + r₄ + ・ ・ ・ ・ ・ = R が導けた。
以上より、
直列部分の全電気抵抗は、各電気抵抗の [ ] である。
・ 電気抵抗が r₁ , r₂ , r₃ , r₄ , ・ ・ ・ ・ ・ の抵抗が並列に接続されている。
この並列部分の等しい[ ]を E とすると、
E = R I を使って、
各抵抗の電流は、 E / r₁ , E / r₂ , E / r₃ , E / r₄ , ・ ・ ・ ・ ・ である。
よって、全電流は、各電流の和だから、
E / r₁ + E / r₂ + E / r₃ + E / r₄ + ・ ・ ・ ・ ・ になる。
また、全電気抵抗を R とすると、全電流は、E / R である。
ゆえに、 E / r₁ + E / r₂ + E / r₃ + E / r₄ + ・ ・ ・ ・ ・ = E / R
両辺を E でわって
[ ] が導けた。
以上より、
並列部分の全電気抵抗は、各電気抵抗の [ ] である。
○ 直列と並列の複合回路
電圧が 12 [ V ] の電池 と
電気抵抗がそれぞれ 1 [Ω] , 2 [Ω] , 4 [Ω] , 12 [Ω] の4つの抵抗 R₁ , R₂ , R₃ , R₄ がある。
回路の概形 : 左側が正極になるように電池をおく。
その左上方に、左から直列で抵抗R₁ と R₂ を導線でつなぎ、
R₂ の右側に、上から並列でR₃ と R₄ を導線でつなぐ。
そして、
電池の正極 と R₁ の左側を、
R₂ の右側 と 並列部分 (R₃ と R₄) 左側を、
並列部分右側 と 負極をそれぞれ導線でつなぐ。
電池から 何A の電気が流れ出ているか求めなさい。
抵抗R₃ にかかる電圧を求めなさい。
抵抗R₁ にかかる電圧を求めなさい。
抵抗R₂ にかかる電圧を求めなさい。
抵抗R₃ を通る電流を求めなさい。
抵抗R₄ を通る電流を求めなさい。
この回路の全電気抵抗を求めなさい。
次の [ ] に適切な語句・式などを入れてください。
R₃ の電流を I ₃ とし、
R₄ の電流を I ₄ とすると、
R₁ と R₂ を通る電流は、[ ] である。
並列部分は電圧が同じだから、[ ] = [ ] が成り立つ。 (電圧はかけ算で)
よって、電池の正極から[ ]極までの電圧降下を考えると、
12 = 1 × ( [ ] ) + 2 × ( [ ] ) + 4 × I ₃ ( 下線部は 12 × I ₄ でもよい )
以上の I ₃ , I ₄ についての2元1次連立方程式を解くと、
I ₃ = [ ] [A] (答え)
I ₄ = [ ] [A] (答え)
I ₃ + I ₄ は、[ ] より、 2 [A] (答え)
[ ] より、 R₁ の電圧は 2 [V] (答え)
[ ] より、 R₂ の電圧は 4 [V] (答え)
[ ] より、 R₃ の電圧は 6 [V] (答え)
(1/4)+(1/12) = 1/3 の逆数は 3 だから、1 + 2 + 3 より、
または
12 / 2 (電圧は分子に) より、
全電気抵抗は 6 [Ω] (答え)
次回 『 速さの公式は使えるように 10 』 につづきます。