あおいは、帰りの車中で伊豆旅行がよほど嬉しかったとみえて、
「ねえ、また時々、旅行に連れ出してくれない? 地味な職場と陰気な夫から解放されて、気分爽快になれるわ。」とねだるように言う。
「もちろん、それに僕らも夜の盛り場やラブホデートばかりじゃなくて、たまには旅行するのもいいね。だけど、あおいちゃんが外泊して家を空けるのは、やっぱり難しくないかな?」と聞いたら、
「私、日帰り旅行でもいいわよ、貴方といろんな所に行ってみたいの。今回は良い思い出づくりにもなったしね。」と話す。
僕にとっても、混浴美人との体験という、あおいとはまた違った意味での思い出づくりができた。
旅行から帰った二日後に、あおいといつものライブパブで逢うことになった。
店に入ると、彼女はすでに着席している。
「ごめん、残務があって遅くなったよ。待たせたね。」と言うと、
「いいのよ、私は役所勤めなので定時で帰れることが多いから、早く着くので気にしないで。」とにこやかだ。
「旅行から帰った日、旦那は大丈夫だった?」
「ええ、旅行については特に怪しまれることはなかったわ、それに、もし疑われたらアリバイ工作もしていて、さっちゃん(あおいの仲良し3人組のアラフィフ女性)にも頼んでおいたから。」
「そうなんだ、実際、伊豆の観光ホテル先で出会ったママ友グループみたいに、主婦同士で旅行に来ていることもよくあるみたいだしね。」
「貴方のおうちの方は大丈夫なの?」
「僕は出張も多いし、経営クラブなどの関係先の付き合いも多いから、もう外泊も日常茶飯事になっていて、特に問題になることはないよ。」
「今度、貴方の出張にも付いて行っちゃおうかな?」
どうやら、あおいは伊豆旅行から、旅行好いたようだ。
「まあ、タイミングがあえばね。だけど、やっぱり君は人妻だから油断は禁物だよ。」とたしなめると、
「ええ、夫は今回の外泊を怪しむようなことはなかったけど、旅行から帰った夜に迫られて、やむをえず、受け入れたの。彼の欲求不満のはけ口になるのは苦痛だわ。」と浮かぬ表情だ。
ゆったりした気分で朝風呂に浸ると、昨晩の美女との混浴体験は甘美な夢のように思われた。
朝食を済ませて部屋を出て、あおいとフロントに向かう。
チェックアウトの時に、それらしい一行がいないか見回したけど、全裸の彼女しかイメージできないこともあるのか、見受けることはできなかった。
残念ながら、その観光ホテルの混浴ジャングル浴場は、現在は男女が水着を着用して入浴するスパになっている。
旅行二日目は、あおいが子供の下校時刻までには帰宅したいと言っているので、ホテルから車で数分の近場にある熱川バナナワニ園に寄って帰途につくことにした。
園内は世界中に生息している多くの種類のワニを集めている他に、ゾウガメやマナティーなど珍しい動物にも出会え、熱帯植物や熱帯果実なども鑑賞できる。
ワニ園では、幾つもの水槽で飼育されているワニの甲羅干しや水中から頭を持ち上げていたりする姿を見て、あおいは子供のようにはしゃいでいる。
水槽のガラス越しに、水中のワニも横から観察でき、
「ワニは怖いってイメージがあったけど、水面から鼻先だけ出して立っているワニは滑稽で可愛いわ。」と言うので、
「そんな姿のワニは、一番リラックスしている状態だと説明されていたよ。」と教える。
水性植物の展示池には、2mを超す大きな葉っぱの、多くのオオオニバスが浮かんでいて、その迫力にあおいは目を丸くして見入っている。
「この葉の上に子供が乗ることもできるみたいね。」と話すと、「まるでおとぎの国の船みたいね。」と感心する。
彼女はレッサーパンダやマナティーの飼育施設でも、そのひょうきんな動きを面白がっている。
バナナ園では、たわわに垂れ下がるバナナを見て、あおいは、
「バナナって一房で数十本も実るのね。スーパーの店頭ではせいぜい一房5本ぐらいしかないのにね。」と言うので、
「バナナは木でなく草で、だから枝も付いていなくて成長も早く、たくさん実るそうだよ。」と説明書きにあったことを教える。
フルーツパーラーで一休みして、彼女はバナナパフェを口にしながら、「取り立てなのかしら? 美味しいわ。」と満足気だ。
僕は、バナナジュースを飲んだが、確かに新鮮な味わいがした。
「貴方、彼女さんは、今、大丈夫なの?」と気にかけて聞いてくる。
「たぶん、まだ寝ていると思うよ、僕が部屋を出るときには、熟睡している様子だったから。」
「なら、いいけど、彼女が起きないうちに戻ってあげないとね。私も部屋を抜け出してきたから、妹が心配していると思うわ。」
「何となく、これで別れるのも惜しい気がするなあ。お互いに名前も知らないままだし。」と名残惜しそうに言うと、
「でも、貴方は彼女もいることだし、このまま別れたほうがいいわね。お陰様で晴々した気分になったわ。」と笑顔を見せる。
「そうだね、お互いに一夜限りのアバンチュールを楽しんだということにしてね。」と応えながら、浴湯の中で彼女を抱きしめる。
彼女も肌を密着するようにすがりつき、互いに舌を絡ませながら、ラストの口づけを交わす。
そして、彼女は岩風呂から去っていった。その後姿の色白のシルエットは、ふと降臨した天女が天空に舞い戻るようにも思われた。
お互いの氏素性はよく分からないまま、美女と裸で知り合い、裸のまま別れた、まさに裸だけの付き合いだったという、この逸話を後日に男友達連中に話すと、誰もが信じがたく羨ましがっていた。
僕は部屋に残したあおいのことは気になったが、あおいと混浴の彼女との立て続きのセックスで、精力を使い果たしたような気だるさで、しばらく岩風呂でぐったりしながら休んでいた。
部屋に帰ると、あおいはまだ熟睡している。混浴情交の余韻なのか、肌恋しくなり、添い寝するように、あおいの布団に入り込み、彼女の身体を抱きながら眠りについた。
「もう、起きてよ。」とあおいの声で目が覚める。彼女は、昨夜、僕より先に寝た分、早起きしていて、時刻はすでに7時を過ぎている。
「貴方がよく寝ていたから、先に朝風呂に入ってきたわ。部屋に戻ったら、貴方がまだ寝ていたから起こしたのよ。朝食も8時だしね。」と話しかける。
「もう、こんな時間か、僕も朝風呂に行かないとさ。」と起きる。
あおいが「私、昨晩は早く寝てしまったけど、貴方は遅くまで起きていたの?」と聞くので、「君が寝た後にしばらく飲んでいて、酔い覚ましに、もう一度入浴して来たよ。」と言うと、
「またジャングル風呂なの? 女性はいたの?」とさらに聞くので、
「12時過ぎていたから、さすがにその時間は婆さまもいなかったよ。」としらを切る。