「あおいちゃんやはるちゃんのお手当は高くつくよ。」とふざけて川上に言うと、
「私達、コンパニオンじゃないからね、招待していただけるだけで充分よ。」とあおいが少し苛立って応える。はるちゃんは「それより私達でいいのかしら?」と控えぎみだ。
「もちろん、こんな美人二人が乗船してくれば最高の気分になるよ。」と川上も嬉しそうだ。


「しかし、君もクルーザーの船舶免許をよく取得したね。」と聞くと、
彼は、「得意先の接待ゴルフなんかもあるけど、クルージングなら船内で接待がてら、ゆっくりと商談もできて営業活動の一環になるから、会社で購入したんだ。それに私的にも利用したいので、社員だけじゃなく、僕自らも免許とったんだよ。」と応える。
彼は、僕のソフトウェア系事業とは違い、設備関連のハードウエア系の物づくり事業だから、メカには慣れているのだろう。


「沖に出れば陸から離れて、船内は完全な隔離されるから、良くも悪くも長時間、拘束できるという訳なんだ。公的利用なら取引先との親睦には効果があるけど、私的利用なら女性を乗船させるには問題あるかもなあ。僕と川上は大丈夫だけどね。」と笑いながらあおいとはるちゃんに目を向ける。
「もっともはるちゃんと川上さん二人だけなら心配するけどね。」とあおいも笑いながら応える。
「じゃあ、クルージングは後日に日程を決めるということでよろしく。」と川上が言うと、二人も「楽しみにしています。」と満面、笑顔で了解する。

そんなクルージングの話から、話題を戻すように、あおいが、
「ところで、先ほどの採用した女性は、それからどうなったの?」とまだ興味があるのか聞いてくる。
「う~ん、1年あまりで退職したよ、社長の愛人みたいだと社内で噂が広がってね。」と川上が応える。
「愛人みたいって、実際、愛人だったんだろ。」と僕が突っ込みを入れると、
「まあ、そうだけど、やっぱり、社内不倫はうまくいかないね。」と自省している。


「社長が女子社員でしかも人妻と不倫していたら、社内への悪影響はさらに大きいんじゃないか。」と話を続けると、
「君の会社も、確か美人の秘書で人妻の女性がいたよね。今まで何もなかったのかな?」と聞き返してくる。
「彼女は会社設立以来20年勤めているけど、火のないところに煙は立たないというか、そんな気配は微塵も無かったね。だから今も社長秘書の他に営業企画責任者を兼務して要職に励んでいる。だいたい、そんな不祥事があれば、頗るモラルダウンして社内の士気は低下してしまうよ。」

「まあ、君の言う通りだけど、彼女から相談を受けた時は、最初から彼女に対して下心があって、入社させたという事ではなかったよ。
あの彼がデートの後に自宅まで送った際の、旦那の待ち伏せでひと悶着あった件以来、旦那の彼女への束縛が厳しくなったんだ。
それで専業主婦のままだと外出するにも疑われるので、会社勤めをしたらいいのじゃないかということになり、ちょうどうちの会社で秘書的な仕事の要員を考えていたので、入社を勧めたんだ。」と言い訳をする。
「だから彼女を採用して社長直属の部下にして、君の私的な身の回りの世話までさせたということなんだろ。あの女性なら社交的だし、旦那がヤキモキするぐらいの色っぽさがあるしさ。」とからかうと、
「人聞きの悪いことを言うなあ、でもよく気が利いて、仕事もしっかりしていたよ。」と応える。

「そう言えば、彼女のママ友合コン仲間のフラワーショップの女性から聞いたけど、君の会社所有の芝浦のマンションでのパーティを彼女が仕切っていたみたいだね。僕は招待されなかったけどさ。」
「あれは経営クラブの所属する会務系の仲間内の催しで、バーテンダーも入れたケータリングから、会場のセッティング、参加女性を集めたりするのを彼女が手配してくれたんだ。」
「参加女性を集めるって、コンパニオンを派遣してもらえばいいだろう?」
「そうだけど、彼女の発案でそんなに大人数でもないし、素人ぽっさがあった方が良いということで、彼女の女友達を5人程、集めることになったんだ。もちろん、ちゃんと手当は出すことにしてね。」
「だから、フラワーショップの女性にも声をかけたのか・・。なんか妖しいパーティだな。」

川上とそんな話のやりとりをしていると、
「私も参加してみたいわ、芝浦のプライベートフロアーで、ウオーターフロントの夜景を見ながらのカクテルパーティなんて素敵ね。」とあおいが口を開く。
「ほんといいわね、川上さん、またそんなパーティをやっていただけないかしら?」とはるちゃんも賛同する。
彼女達の要望に気をよくしたのか、川上が、
「よかったら、船上プライベートパーティなんかどう? 海から陸の夜景をみるのもいいよ。」と話しかける。
「船上パーティって、船はどうする?」と聞くと、
「会社で接待用のクルーザーを保有しているんだ。葉山に係留してあるよ。ヨットハーバーの近くにはリゾート施設もあるんだ。」と応える。
「そうなんだ、儲かっている会社はいいなあ。」と感心する。
「え~、凄いわね。是非、お願いするわ。」とあおいもはるちゃんも感激している。

「その彼女は綺麗な人だったのね。」とあおいが僕に向かって返答を求めるように言うので、
「まあ、あおいちゃんみたいな感じだったかな。」と曖昧に応える。
「そうそう、あおいちゃんによく似たスタイルの良い美人だったよ。」と川上がさらに口を挟む。
「ふ~ん、そうなんだ。私に似ていると言われると、なにか、元カノの面影を私に求めているみたいな感じがするわね。」とあおいは釈然としない様子だ。

するとはるちゃんが、「いいじゃない、好きになった人が、たまたま似ていただけで、前カノのひろみちゃんとはタイプも違うことだし。」とあおいをなだめる。
言われて見れば、前々から、あおいとその彼女は、たしかに年齢も同じぐらいで、外見はなんとなく似ていると思ってはいた。
後日談になるが、あおいとその元カノは鉢合わせすることがあった。

はるちゃんが、「それで川上さんは、ママ友グループの別の彼女とはどうだったの?」と彼に話題をふるので、
「そうだよ、僕もその後、どうなったか聞きたいね、あの彼女は合コンの男性陣の一番年下の食品会社経営のメンバーとできたんだけど、いつの間にか君と付き合っていたみたいだね。合コンの時、君はフラワーショップの女性を気に入っていたようだったが。」と突っ込みを入れる。『参照 前述ママ友12、ママ友16』
「そのフラワーショップの女性から、ある程度は君も聞いてはいたんだろ。彼女にはうちの会社のショールームのフラワーアレンジメントを頼んでいたから。」と川上は苦笑いしながら応える。

「その彼女は、確か食品会社の彼とは合コンのあと交際していて、ナイトデートで彼女の自宅近くまで送った車から降りるところで、嫉妬深い彼女の旦那に待ち伏せされて、ひと悶着あったとは聞いていたよ。」と僕が話すと、
「まあ、その場はなんとかごまかして乗り切ったようだけど、食品会社の彼はトラブルを避けたいということで離れていったので、彼女から僕に連絡があって相談に乗ることにしたんだ。」と川上は顛末を話す。

「それで相談に乗っているうちに彼女と関係ができたということなんだろ、そして社員として彼女を採用すれば、勤務という事で公然とオフィスラブもできるし、ナイトラブのアリバイに残業という名目もたつわけか。」と笑いながら僕が推察して応える。
そんな僕と彼との話のやりとりを、あおいもはるちゃんも興味津々で耳を傾けている。