ラブホから港北ICに戻り、第三京浜を玉川ICに向かう。彼女の自宅のある自由が丘までは20分ほどだ。
すっかり夕闇に包まれた途上では、対向車線を走る抜ける車のヘッドライトと眩く交差する。

「旦那はもう、帰宅しているんじゃないか? 夕飯の支度とかしていなくても大丈夫かな?」と気にかけると、
「いいのよ、今日は遅くなるから外食すると言っていたわ。」
「そうならいいけど、旦那も仕事が忙しいみたいだな。」
「どうだか、どこまで仕事なのか怪しいものだわ。オフィスラブの愛人とまだ、続いているから、今夜も逢引きしているかもしれないわね。」
「まあ、今日は君も同じだから、お互い様ってことになるなあ。」
「ええ、いっその事、よくある出張などと言う口実で、その愛人と旅行にでも出かけてくれた方が中途半端に帰って来られるよりはっきりしていて、私も貴方とゆっくり時間が取れるからいいわね。」と笑いながら話す。
「そっか~、君もすっかり割り切っているから、旦那についてはなんら気にもならなくなっているんだ。娘さんの方はどうなの?」
「娘は、今夜は友達と飲み会だと言っていたわ。そうそう、娘は研修してくれた女子社員の子とは親友みたいになっているようよ。」
「う~ん、彼女は仕事も出来て性格もいい子なんだけど、ただ遊び慣れている分、娘さんがそんな影響を受けることが無ければいいけどさ。」
「娘は、主人の私へのDVを目のあたりにしているから、男性との付き合いという面では引け気味になっているから、そのくらいの刺激があった方がいいわよ。だけど、優しい年配の既婚男性なんかに惹かれるのは心配ね。」と穿ったような目つきで僕を見る。
どうやら、僕と女子社員との関係を訝しく思ってのことだろう。実際、あの女子社員は終わったとはいえ、彼女と親子ほどの年の離れた僕の経営クラブの後輩と恋愛関係になっていた。

自由が丘の彼女の自宅から少し離れた人目につかない所で降ろす。
自宅へ向かう彼女の後姿は、どう見ても良家の奥様にしか見えない気がした。

帰途、夜もまだ早い時間なので、目黒通りを走っていつものライブパブに立ち寄った。
店に入ると、偶然にも仮面妻と噂をしたあの横浜の男性がいて、愛らしい片平なぎさ似の女性が寄り添っていた。

その隣の席が空いていて、店のスタッフに案内される。
着席する時に彼に軽く会釈をすると、彼も同じように会釈を返す。
しばらくして、彼の方から言葉をかけて来た。
「どうですか、彼女とはうまくいっていますか?」
彼女とは、もちろん、彼がかって、カーセックスをしたという仮面妻のことだ。

「彼は勤めていた会社から独立して教育関係の事業を立ち上げていて、彼女が結婚退職してから十数年経って、信頼していた元上司の彼に子供の進学相談に行ったのが付き合いの切っかけみたいね。」
「なんで君がそんなことまで知っているんだ、彼と話をしたのかな?」
「店のマスターに聞いたのよ。客の情報は人づてに聞ける立場だから詳しいのかもね。
彼女の相談事は子供だけではなく、ギャンブル依存症で家庭を顧みない夫のことにも触れ、ちょうど、彼も妻とは不仲で別居中だったこともあり、二人の仲は、過っての上司、部下の関係から男女の関係になるのも当然の成り行きだったのでしょう。」
「女性が不倫する動機は夫婦の性格の不一致もあるが、夫の素行に問題がある場合が多いなあ、君は夫のDVだし、彼女は夫のギャンブル狂いに起因している訳か。」

「貴方はどうなのよ、現に私と不倫しているのは、何があるの?」と突っ込みを入れてくるので、
「う~ん、あえて言えば、恋愛依存症なのかもなあ、既婚であっても、いつまでも恋はしていたいというところかな。」と応えると、「へえ~、綺麗ごと言ってさ、ただの女たらしじゃないの。」と皮肉る。
「フェミニストと言ってもらいたいな。」と僕も笑いながら言葉を返した。

ランチを終えて、オープンして間もない赤レンガパークまで散策する。
並木が色づいた秋の気配に海風がひんやりと心地よく頬にふれて、大桟橋の客船越しにベイブリッジが海上にそびえている。

赤レンガ館内にはお洒落なファショングッズを扱う店が連なり、僕は彼女が気に入った香りがする高級なフレグランスソープを買い求める。
「これ、家に持って帰って浴室で使うと、旦那に怪しまれないかな?」と気に掛けると、「女友達から貰ったことにするわよ。」と平気な様子だ。

館内から出て、地下駐車場に戻り、仮面妻の彼女を乗せて東京に向かう。
みなとみらいのインターから第三京浜に入り、途中、港北インターで高速道路を降りる。
このインターの周辺は有数のラブホテル街で、夜間には高速の路上から見ても、煌びやかなネオンがカップルを誘い込むかのように光り輝いている。

まだ田畑が散見する立地にある南国風の洋館のラブホテルに、彼女と昼下がりの情事をするために乗り入れた。
彼女といつも利用している恵比寿のホテルに比べると、室内は広々としていて、バスルームもゆったりとしている。
早速、その大きめのバスタブに二人で混浴して、抱き合いながら擦れ合う肌の感触を楽しむ。
すでに浴室で欲情が高まり、風呂上がりにそのままベッドインして、二人は快楽に身をまかせた。

「そうなの、気立てもいいし、面倒見のいい子なのね。しかも可愛いから男性社員からモテモテじゃないの?」
「うん、だけど彼女は社内の男性にはあまり、関心がないみたいだね。」
「だったら社外に彼氏はいるんじゃない?」
「いたけど最近、別れたみたいだな。遊び慣れている子だから、普通の男性じゃ、満足出来ないところもあるしさ。」
「そういえば以前に、ライブパブで貴方の友人のオッサン連中とあの子の女友達を集めた合コンも嫌がらずに仕切っていたわね。まさか、オジ専で、その別れた彼氏って年配男性じゃないの?」

彼女が、女子社員のことで突っ込みをいれてくるので、これ以上、この話が続くとその別れた彼氏が経営クラブの僕の後輩だと分かり、しいては僕と女子社員の関係にも及びかねないので、
「さあ、どうだか、俺はあまり詳しくはわからないよ。」と曖昧にする。
「ひょっとして、オッサン合コンや私の娘のパソコン合宿といい、貴方の依頼にはすごく協力的だから、やっぱり貴方にも好意があるのかもしれないわね。」と疑うようなまなざしで僕を見つめる。

「うちの女子社員ことより、君の娘さんはどうなのかな? あれだけの美形だし、彼氏には不自由しないだろう。」と話をそらすと、
「娘は、主人の私へのDVを目の当たりにしているから、ちょっと男性不信のところがあり、警戒心が強く、本当に優しい男性しか心を開かないわ。だから貴方には私が嫉妬するくらいに好感を持ったみたいなの、あの女子社員の子も娘と同じ心境かもね。今回の研修旅行は、そんな二人が同行して貴方も内心はうきうきしたんじゃないの?」と問いかけるので、
「そうなら、嬉しいけど、社内の女性と君の娘じゃ、とてもそんな気にはならないよ。」と応えたが、若い女性二人の浴衣姿に欲情を感じたのは否めない。

「娘より母親の君だって、充分、熟女の色気があるから、例の同窓会の彼とか、横浜の男性とか、その後の誘いはないのかな?」と話しの矛先を彼女に向ける。
「あら、珍しいわね、貴方がそんな詮索するなんて・・、ええ、もちろん、あったわよ。でも、男女の深い関係にはならなかったわ。貴方が私の事を思っていてくれるうちは、そんな軽はずみなことはしないわよ。
それに横浜の男性は彼女ができたみたいで、最近は私に誘いは無いのよ。」
「そういえば、前にライブパブで、アベックで来ていたのを見かけたことがあるなあ、彼らも不倫関係なのかな?」
「そう、お互いに妻も夫もあるW不倫関係なの。聞いた話によると、彼女のほうはあの男性が会社勤めで役員していた時の部下だった女性だそうよ。」
「そうなんだ、会社の女性に手を付けたのかな? まあ、よくありがちな話だね。」
「いいえ、関係したのは、彼女が結婚退職した後のことだというわ。」