物語90 | Thinelの世界

Thinelの世界

私の描く世界へようこそ


  カエール侯爵は倒れてから2週間。今日やっと部屋から出て、居間に座り、本を読んでいる。
  今日は日曜日、アンヌは教会に行き、その後友達の家でお茶会。
  アンヌは家にいたかったが、もう話せるカエール侯爵はアンヌを説得した。
 
  侯爵は本を読んでいる。私は隣に座り、いつもの勉強。
  「カエール!」とジェアン伯爵は居間に入ってきた。
  カエール侯爵は親友を見る
  「相談したいことがあって、都に帰ってきた」と、ジェアン伯爵はカエール侯爵の座っていたソファに近づいてきた。
  普通なら、カエール侯爵は立って、親友に挨拶する。が、苦笑いでジェアン伯爵を見ている。
  ジェアン伯爵は近くのソファに座る
  「体調が悪いか」と心配な顔をするジェアン伯爵だった。
  「二週間前、倒れたよ」と正直にカエール侯爵は言った
  「無理していたろう?」
  「いいえ。家でずっと仕事していたし、週に三日位休んでいた」
  執事がワインを持ってきて、二つのグラスに注いだ
  「今日やっと部屋から出た。二日前まで、筆談で人と話していたよ」
  グラスに手を伸ばしたジェアン伯爵は固まった。カエール侯爵はグラスをとり
  「乾杯しよう」と言う
  「何を祝するんだ?」
  咳を少し出して、侯爵は口にハンカチを当てる。ハンカチを見つめてから
  「回復ができない日々を」と皮肉な微笑みを見せる侯爵
  「薬を飲んで、休めば、回復できるだろう」
  「いいえ。ワタシはこれから一歩ずつ最期に向かうよ」
  ジェアン伯爵は持っていたグラスをテーブルにおいた
  「今までしてきた生活が少しずつできなくなる」と話し続けるカエール侯爵「もう夜一緒に出かけることがないし、もう少ししたら、家から出ることもない」
  「違う国の医者に診てもらったら?治る方法があるかもしれない」とジェアン伯爵は希望を探す
  「やめてくれ、叶えない希望を抱くのは残る人を傷つけることになるだけだ」
  「僕はただ親友を救いたいよ」
  「ジェアン、ワタシの最期を見たくなければ、目を逸らせばいいさ」
  「僕に背を向けたことがないカエールから目を逸らすことができないよ」
  「人間は理解に苦しむ。辛いものから、目を逸らせばいいのに、逸らすどころか、真正面からぶつけることにする」と呆れたようにカエール侯爵は言う
  「カエールは一度も目を逸らしたことがないだろう」
  「この体で、他の見る場所がないからさ。受け止める方が簡単なだけ。でもジェアンは見ていればいいものがたくさんあるじゃないか」
  「僕は親友を見守ることにする」
  カエール侯爵は一気にワインを飲み、グラスを見つめた
  「ワタシは6年保たないと思う」
  ジェアン伯爵はワインに咽ぶ
  「冗談じゃない」と怒るジェアン伯爵
  「怒られてもね。咳をだす度に、血を吐くから、体すぐ弱ってくると思う。後何年保てるか分からないけど、4年は限界という予感がする」
  「昼ごはんをここで食べていいか」とジェアン伯爵は突然に聞く
  「いいけど、マリーの顔を見に行ったほうがいいじゃないか。すぐ出発するだろう」
  「伸ばすことができないから、残りの時間を楽しむ方が大事だ」

                               つづく

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