物語75 | Thinelの世界

Thinelの世界

私の描く世界へようこそ


  
  結婚式前夜。
  カエール侯爵に頼まれて、部屋まで水を持ってきた。
  明日からこの屋敷にアンヌも住み始める。この2週間、引越しの準備で何回も来ていた。侯爵の部屋の右にある部屋がアンヌの部屋となり、私はいつもの左の部屋で寝続けることになった。つまり私とアンヌの部屋の間にカエール侯爵の部屋がある。
  部屋に入ると、侯爵はテーブルに広げていた地図を見つめている。テーブルに肱を置いて、顎を手の中に
預かっていた。目は鋭く、表情が厳しい。
  「水を持ってきましたよ」と私は言う
  「ありがとう」とカエール侯爵はコップを受け取り、中身を見る
  「侯爵と同じ水を先に飲みましたので、心配ありませんよ」
  「やめてくれ。アリアネはワタシより先に死んだら、困る」
  「多少の毒に慣れていますから、大丈夫です」
  「さすがファオランの娘と言うべきか」
  「小さい頃から、そういうことに慣れされてきました」
  侯爵は少し微笑む、皮肉的に。
  「明日の飲み物と出される料理をさっき全部味見を終えました。明日は執事と一緒にものを出す前にまた確認するつもりです。会場のことを少しジェアン伯爵といつも家を見張ってくれている者に任せるつもりです」
  「ワタシの命令なく動いたね」
  「カエールを護るのは私の仕事、否、使命です。カエールの命令を無視することになったとしても、何があっても護りますよ」
  「明日はパーティーが終わったら、ジェアンと一緒に行け」
  「はい?」
  「明日ジェアンの家で泊まってねと言っている」
  「あり得ない」
  「分かっていないね、アリアネ」と不機嫌そうに侯爵は言う 
  「分かっていますが、カエール侯爵はこの屋敷で寝るなら、私もここで寝ます。外に泊まる時は、侯爵も一緒の時のみです」
  「君を傷つけずに、明後日の朝を迎えたいんだ」
  「私はそんな簡単に傷つけられる女ではない。心配ありません」
  カエール侯爵は話すのを呆れて、また地図を見つめた。深い溜息の後、自分の背中を座っていた椅子に任せる。
  「どうしましたか」と少しの沈黙の後、私は聞く
  「次の戦いは長引かないようにしたいが、全部片付けるのに一ヶ月かかると思う」
  「一ヶ月は長すぎますか」
  私にとっては戦いが終わりのないものだから
  「一ヶ月都から離れることになる。それだけは避けたい」
  「ファオラン隊長に細かいことを任せばいいのではありませんか」
  「でもファオランは字が読めないから、戦略を書いておくという手がない」
  「今副隊長として勤めている者は字が読めますよ」
  「信頼できる人なのか」
  「はい。かなり長くファオラン隊長と一緒にいます」
  「戦場の状況を見てから、考える。でもファオランに任せられるなら、早く都に帰られるかもしれない」
  そしてまた黙って、カエール侯爵は地図を見つめた。
  咳を少し出す。
  「薬を飲みませんか」
  「そうだった」と薬のことを思い出した侯爵「薬といえば、アリアネに渡したいことがある」と。そして私に黒いカバーのノートを渡した 
  私は中身を見る
  「それはワタシの病気の説明、飲んでいる薬、今までの病気の症状、そして予想されているこれから出る症状など書いてあるノートだ。医者から言われたこと、自分で調べたもの、全部書いておいた。どんな症状が出れば、どんな風に対応すればいいか、どんな薬をワタシに飲ませればいいか分かる。アリアネは医者じゃないから簡単な言葉で書いた。そのノートがあれば、ワタシを救うことも殺すこともできるーアリアネにだたワタシの背中を預かっているのではなく、命を任せている」ーカエール侯爵はノートを持っていた私の手を強く握った
  「戦場に出かける日まで、読んでおきます」
  「ワタシはどのような死でさえむかえるか書いてある。・・・正直戦場で死んだ方がマシだ」とカエール侯爵は痛みを押し殺した声で呟いた

                                          つづく
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