医者の訪問から5日。疲れの様子なく、出会ったときの明るいカエール侯爵に戻っている。
都に帰るための馬車に乗るなり、侯爵は言う。
「ワタシと合わせるのは大変だと思うが、ワタシはどんな立場から物事を言って、行動をしているか考えながら、アリアネ、行動しろ」
「はい」
都の屋敷に着くと、侯爵の母親と侯爵によく似ていた男の人が待っていた。
「母上、兄上、お久しぶりです」とカエール侯爵は顔の色を変えず言う。
「体調は大丈夫ですか」とマリエ様は問う。
「はい、大丈夫です、母上。今日なぜここに?」
「もうすぐジャンの結婚式だから、二人が仲直りしてほしいの。だからジャンを連れてきた」
男の人はジャン将軍であった。とても不愉快な顔をしながら、マリエ様の隣に立っている。カエール侯爵は座り、二人に向かいのソファを示した。この状況を楽しんでいるようだ。
「仲直りですか」と侯爵は聞く。
「そうよ。兄弟なのに、話したりもしないなんて」
「しかしワタシは兄上と喧嘩した覚えがありません。兄上も同意見だと思います」
「オレも喧嘩した覚えがない」と侯爵より少し低めの声でジャン将軍は言う。
「そうなの?でもあまり話したりしないんじゃない?」
「あまり会わないからですよ、母上。それに同じ軍の中で働いていると言っても、やっていることは違いますから、話す機会も少ないです」
「ジャンと一緒に働けばいいじゃないの」
「それは無理」とジャン将軍は言う「カエールの上司は、我が弟のことを手放さないと言っているし」
「あら?上司がいるの、カエール?」
「あいにく将軍ではありませんので」
「下級兵だってこと?」
「いいえ、母上、カエールは准将軍だ」
「立派なことじゃないの」
カエール侯爵はただ少しだけ頭を下げた。
「じゃ、二人ともは喧嘩していないということね」
「はい、母上」とカエール侯爵は答える。
マリエ様とジャン将軍が立ち上がり、ドアに向かった。
カエール侯爵は立つだけ、二人、イヤ、ジャン将軍をドアまで送ろうとしない。
「結婚式に来るのよね」
「准将軍宛の招待状が届いたら、行くとしよう」
ジャン将軍がその言葉を聞くと振り返って、侯爵を睨んだ。
「弟として来い」と命令口調で言う。
「あいにく、兄上、立場上頭を下げるわけにはいきません」とカエール侯爵は一歩を譲るつもりはない。
ジャン将軍は呆れたようで違う方向を見る。そして初めて私のことを気づく。
「何その女?」
「上司に護衛兵の一人でも雇えと言われたので・・・」
「それで腕のいい男より女か」
「女性の方がワタシの好みです」とカエール侯爵が笑う。
ジャン将軍は屋敷のドアを大きい音立てながら閉めた。
つづく
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