この二日間、カエール侯爵はベッドから出なかった。ずっと本を読んだり、何かを書いたりして、日を過ごしていた。
侯爵は起きている間に、私は部屋にあったテーブルに座り、本を読んでいた。夜は執事にカエール侯爵のことを頼んだ。
なぜだか私とカエール侯爵はあまり言葉を交わすことはない。長い長い沈黙はずっと続いていた。
「ファオラン隊長に手紙を書かないか」と二日ぶりに聞くカエール侯爵の声だった。
「手紙を書かなくてもいいと言われました。それに特に書くものもありませんし」
「じゃ、ワタシが書こう。娘に既に手を出したと」
「変なことを書かないでください。それに父上は字が読めないんです」
「でもワタシの手紙をいつも返事しているのではないか」
「あれは私が書いたものです。父上にカエール様の手紙を読みあげ、父上に言われたことを書いていました」
「どうも女性っぽい字だと思った。誰と読み書きを覚えたか」
「小さい頃に住んでいた家の隣のおばあさんと。戦場に来てからずっと父上の代わりに手紙を書いたり、届いたものを読み上げたりしていました」
「結構分かりやすい字だね」
「カエール様の字こそ分かりやすいです。初めて見たときに、なんて上品な字と思いました。文章もとても分かりやすいです」
「上品なのかなぁ」
「15歳の少女に王子様の字に見えましたよ。カエール様はどんな人かずっと頭の中で想像していました」
「本人と会ったら、王子様のイメージが崩れただろう」
「そうでもないんです」
カエール侯爵は微笑んだ。いつも思うが、私と父上よりよく感情を顔に出す。しかし嘘をつくのも得意な男だ。
つづく
ランキングに参加しているので、クリックお願いします!