ドノヴァン公爵は夕食後帰った。
カエール侯爵は居間のソファに座り、また本に夢中になっていた。私が話したいことがあるけど、声なかなかかけない。
私のことをやっと気づいたようで、侯爵は
「おいで、アリアネ」と隣に座ってと言わんばかりに手を差し伸べた。
「猫ではありません」と私は抵抗できず、侯爵の隣に座った。
でも隣に座っても、侯爵は何も言わないでいる。ただ本を読み続ける。
沈黙がしばらく続くと、侯爵はやっと言い出した
「何か言いたいことがあるだろう」と
「はい。質問があります」
「アリアネが話を始めるのを待っている」
「本当にいいですか」
「いつ質問禁止にしたのかなぁ」
「ジャン将軍を負けさせるための作戦のことです」
侯爵はただ聞いている。
「ファオラン隊長も行くのですか」
「いいえ。ファオランの隊はワタシの下にいる隊だから、行かない」
「負けさせるつもりなら、我が軍の兵は死ぬのでは?」
「カルロはあくまでも攻撃を防止するだけだ。無駄な戦いをしないはずだけど、ジャンの出方や他の兵の出方によって、戦闘になる可能はある」
「そうですか」
「カルロも犠牲を増えるつもりはないと思う」
「分かりました」
「戦場では死は仕方のないものだ、アリアネ」
「はい、分かっています」
「分かっていればいいが・・・。ワタシも質問したいことがある」
「はい」
「右のすきのこと。傷でも背負っているか」
「いいえ。二年前戦闘で傷を背負い、二ヶ月寝込んだのです。今は傷跡だけ残っています」
「二年前、まだワタシの下ではなかった」
「はい。そしてエンリが死んだ日に、また同じところで・・・」
「それで、一ヶ月位ファオランの親のところに行っていたんだ」
「はい」
「まだ痛みなど感じているか」
「いいえ、特に。傷跡だけ残っています」
侯爵は私を見つめた
「この前の命令無視の罰はその右のすきを克服することだ」
私は何も言えない。
「そのすきのせいで、エンリ副隊長が死んでしまったんだろう」
「私はミスなどさえしなければ、私を守る必要なく、まだ生きていたと思います」
「じゃ、そのミスを二度としないためにも、克服」
「古い傷に触らなくてもいいのでは?」
「ファオラン隊長は君に甘い。そのすきのことを大目に見てきた。しかしそのせいでまた誰か死んだら、アリアネはもう二度と戦えないだろう。ワタシの護衛兵を務めている以上、それを見ないフリをするつもりはない」
「でも・・・」
「アリアネのためだ。死ぬつもりでその命令を守った方がいい」
「ずるい男ですね、カエール侯爵は」
「君に甘い夢を見せないと言っただろう」と侯爵は立った「ワタシは少し部屋で仕事してくる。アリアネはもう寝ていいから」
「克服ができるととても思えないんです」
「命令だと言ったろう。二回同じものを言わすな」と怒っている侯爵だった。
つづく
ランキングに参加しているので、クリックお願いします!