物語38 | Thinelの世界

Thinelの世界

私の描く世界へようこそ


  ドノヴァン公爵は夕食後帰った。
  カエール侯爵は居間のソファに座り、また本に夢中になっていた。私が話したいことがあるけど、声なかなかかけない。
  私のことをやっと気づいたようで、侯爵は
  「おいで、アリアネ」と隣に座ってと言わんばかりに手を差し伸べた。
  「猫ではありません」と私は抵抗できず、侯爵の隣に座った。
  でも隣に座っても、侯爵は何も言わないでいる。ただ本を読み続ける。
  沈黙がしばらく続くと、侯爵はやっと言い出した
  「何か言いたいことがあるだろう」と
  「はい。質問があります」
  「アリアネが話を始めるのを待っている」
  「本当にいいですか」
  「いつ質問禁止にしたのかなぁ」
  「ジャン将軍を負けさせるための作戦のことです」
  侯爵はただ聞いている。
  「ファオラン隊長も行くのですか」
  「いいえ。ファオランの隊はワタシの下にいる隊だから、行かない」
  「負けさせるつもりなら、我が軍の兵は死ぬのでは?」
  「カルロはあくまでも攻撃を防止するだけだ。無駄な戦いをしないはずだけど、ジャンの出方や他の兵の出方によって、戦闘になる可能はある」
  「そうですか」 
  「カルロも犠牲を増えるつもりはないと思う」
  「分かりました」
  「戦場では死は仕方のないものだ、アリアネ」
  「はい、分かっています」
  「分かっていればいいが・・・。ワタシも質問したいことがある」
  「はい」
  「右のすきのこと。傷でも背負っているか」
  「いいえ。二年前戦闘で傷を背負い、二ヶ月寝込んだのです。今は傷跡だけ残っています」
  「二年前、まだワタシの下ではなかった」
  「はい。そしてエンリが死んだ日に、また同じところで・・・」
  「それで、一ヶ月位ファオランの親のところに行っていたんだ」
  「はい」
  「まだ痛みなど感じているか」
  「いいえ、特に。傷跡だけ残っています」
  侯爵は私を見つめた
  「この前の命令無視の罰はその右のすきを克服することだ」
  私は何も言えない。
  「そのすきのせいで、エンリ副隊長が死んでしまったんだろう」
  「私はミスなどさえしなければ、私を守る必要なく、まだ生きていたと思います」
  「じゃ、そのミスを二度としないためにも、克服」
  「古い傷に触らなくてもいいのでは?」
  「ファオラン隊長は君に甘い。そのすきのことを大目に見てきた。しかしそのせいでまた誰か死んだら、アリアネはもう二度と戦えないだろう。ワタシの護衛兵を務めている以上、それを見ないフリをするつもりはない」
  「でも・・・」
  「アリアネのためだ。死ぬつもりでその命令を守った方がいい」
  「ずるい男ですね、カエール侯爵は」
  「君に甘い夢を見せないと言っただろう」と侯爵は立った「ワタシは少し部屋で仕事してくる。アリアネはもう寝ていいから」
  「克服ができるととても思えないんです」
  「命令だと言ったろう。二回同じものを言わすな」と怒っている侯爵だった。

                           つづく


ランキングに参加しているので、クリックお願いします!

にほんブログ村 小説ブログへ にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ