物語35 | Thinelの世界

Thinelの世界

私の描く世界へようこそ


  「しかし自分の命を危険にそらしてまでこの国を変えたいですか」と私はじっと侯爵を見つめている。
  「それより・・・」とカエール侯爵は私の唇に優しく指を触れた「アリアネとキスしたいなぁ」
  「カエール様と付き合えないと言ったはずです」
  「こんな状況で、まだワタシのことを好きではないと言えるか」
  私は言えるはずがない
  侯爵は顔を寄せてきた
  「軽い言葉でつくった約束より、君に嘘のないキスを捧げよ。甘い恋の言葉を聞かせることはないが、アリアネだけは裏切ったりはしない」
  「甘い言葉を言われても、信じませんよ」
  「その肩苦しい話し方もやめてほしいなぁ」
  「でも、自分の立場を忘れるわけはいかない気がします」
  「立場か。でもここにいるのはカエールという男とアリアネという女性だけだよ」
  「物事をそんな簡単に片付けないでください」
  「ね、アリアネ。何がそんなに怖い?」と私の心の不安は見通しだった
  「取り消しのつかないことをしてしまうこと・・・」
  「それから?」と意地悪く、侯爵は聞く
  「カエールを愛してしまうこと・・・」
  侯爵は微笑んで、顔を遠ざける。
  「もうしていることから逃げられないと思うけどね。戦場で絶対死なないと言えないよ、アリアネ。現実はそんな甘くないと君も知っているはず。君に甘い夢も見せるつもりはないし、守れない約束するつもりもない。ただ一緒にいられる間、一緒に戦い、一緒に同じ道を歩んでほしい」
  「私に現実しかくれないのですね」
  「ああ」
  「ずるいです」
  侯爵は正直な笑顔を見せてくれた。芝居のない笑顔を。
  「でもその嘘のない唇は私のものだと言うのなら・・・」と、私からカエールに口づけをした。
  この戦いは私の完全な負け。

                                               つづく
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