物語32 | Thinelの世界

Thinelの世界

私の描く世界へようこそ


   「アリアネ」と私を呼んで、頭を優しく撫でていた。「アリアネ、もう起きる時間ですよ」と言われた時に、私は目覚めた。
  私を呼んでいた声も、頭を撫でていた手も近くに立っていたカエール侯爵のものだった。侯爵は眠った後、私はテーブルに座り、本を読み始めたが、いつの間にか寝てしまった。
  「侯爵、横になった方がいいです」と驚いて、立ち上がった私だった。
  「この位のことは大丈夫ですよ」とまだ疲れた顔で、侯爵は微笑む。そしてテーブルに座る。「今週、田舎にあるワタシのもう一つの屋敷で過ごそうと思っていますが、一緒に来てもらえますか」
  「しかし移動はよくないと思います」
  「医者の許可もありますから。それにこの状態で人とあまり会いたくないのですね」と私は初めて侯爵の誇り高い一面を見た。
  「侯爵は行くのなら、もちろん私も行きます」

 田舎の屋敷は馬車で一日くらい都から離れていた。私たち着いたのは日が沈んでいる時刻だった。
 ドアのところに、もう80歳過ぎているおばあさんがいた。
 「カエール坊ちゃん、お久しぶりです」と満面の笑顔で言う。
 「お久しぶり。元気だった?」
 「もちろんです。・・・顔色悪いですね」
 「体調が・・・」と気まずそうに侯爵は言う。
 「だめじゃないですか、無理して」と怒っているようにおばあさんが言う。
 「一週間、世話になるからね」と侯爵は笑い、家に入った。
 「アリアネです」とおばあさんと目を合わせた時に、私は言った。
 「カエール坊ちゃんの友達ですか」
 「いいえ、護衛兵です」
 おばあちゃんは悲しい笑顔を見せた。
 「じゃ、暖かいものでも作りましょう」と言いながら、家に入った。

 都にある屋敷より、この屋敷は一階だけあって、かなりシンプルな感じがした。
  
                                         つづく

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