物語8 | Thinelの世界

Thinelの世界

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   「失礼します、お持ちいたしました」と執事は言いながら、部屋に入ってきた。
   「ありがとう、そこのテーブルにおいていいよ。そしてもう寝ていいから。必要なもの、ワタシ自分でやる」
   「わかりました。傷の手当ては?」
   「大丈夫。自分でできる」
   「外の者は今日何人にしましょうか」
   「二人」
   「わかりました。失礼いたします」

   「外の者・・・つまり見張りですか」と私はカエール侯爵に問いかけた。
   「ワタシの命を狙ってる者はいますからね。アリアネを雇ったのも、そういう心配があったからでしょう」
   「そして今日の傷は敵に負わせた傷ですか」 
   「それはちょっと違いますね。今日情報のやり取りしていた相手はワタシが貴族であることを気づいてしまったようで、怒って、ワタシに刃を向けただけです」
   「そういう時に私はお供した方がいいのではないですか」
   「でも、アリアネをあのような所に連れていけない上に、護衛兵がいったら、貴族だってことばれるでしょう」
   「では、剣の腕をあがるように、私は指導しましょう」
   「それはいいですね。じゃ明日から早速」
   「しかし側にいない護衛兵の意味がわかりません」
   「アリアネはカエール侯爵の側にいれば十分です」
   「傷を負えたのはカエール侯爵ではありませんか」
   「いいえ。ピエヘという使用人ですよ」と侯爵は意味のありげな微笑みを見せてくれた。
 カエール侯爵はちゃんと言葉で説明してくれないものを全て自分の微笑みや表情で説明している。必要以上のことを話さず、自分のやろうとしていることを秘密にできる上に、余計なリスクを負えずに済む。危険なゲームに慣れている男だ。
  
                        つづく