つつじです。
私は、いつも山のつつじに憧れていました。
だって、
山に咲けば、綺麗な空気の中で、
咲けるもの。
それに比べて、私は道路の端。
あるのは排気ガス。
山のつつじに比べたら、
もう惨めで、苦しい。
だれも、
私を見てくれない。
春先に、華を咲かせれば、
最初は、みんな見てくれる。
だけど、最初だけ。
すぐに相手にされなくなる。
こんな端に咲いているから。
もう、こんなところで、
華なんて咲かせたくない。
と思う毎日でした。
だけど、ある日、
一匹のハチがやってきて、
おいしそうに、私の蜜を吸います。
彼に聞きました。
「どうしてこんな私の蜜を吸うの?」
「排気ガスに汚れた、
汚い蜜を、そんなおいしそうに。」
「山に咲くつつじの蜜は、
おいしいよ。
そっちのほうがいいんじゃない?」
その質問に、ハチは答えませんでした。
毎日、毎日、
そのハチは、蜜を吸いにきました。
「山に行けばいいのに
私のせいで、こんなところに居させて、
ほんとごめんね。」
「私のせいで、あなたは人間や鳥に殺されそうになったり。」
「早く、枯れたい。」
私が、小さく嘆くと、
初めて、そのハチは話しました。
『そんなこと言うなよ。』
『ボクは、たくさんの花の蜜を吸ってきた。
どれもどれもおいしい蜜だった。』
『だけど、キミを見て、初めておいしい蜜じゃなく、
花の美しさに気付いたんだ。』
『世の中には、運が悪いハチがいる。
運が悪いハチが気付いているのは、
蜜のおいしさだけなんだ。
花の美しさなんかには、ちっとも気付かない。』
『それに比べたらさ、ボクは運がいい!
こうやって花の美しさに気付いて、
その花の蜜を吸えているんだもん。
ボクは幸せハチだ。』
『だから、ボクに花の美しさを気付かせてくれたキミが、
枯れたいなんて言わないで。』
オスのミツバチって、
ほんとは蜜を吸いにこないんです。
ほとんどが、メスバチ。
なのに、それからも、
彼は毎日、毎日、
私の蜜を吸いに来てくれました。
ふふっ♪あ、思い出し笑いです。
ごめんなさい。
彼はダンスが得意で、
いつも8の字ダンスを見せてくれました。
そのときの、お尻がかわいいの♪♪
だけど、いつも喜びや悲しみって、
突然やってきます。
人間が、私を摘み取ろうとしたとき、
ハチは私を必死に守ってくれました。
最後の最後に、
その人間を刺してしまったんです。
ミツバチって、
針を刺すと、一緒にお尻も取れて、
死んでしまうんです。
お尻が取れたハチは、
花びらの中で、横になりました。
『いいさぁ。
ボクは、なんの後悔もしていない。
知っている?
日本人の間じゃ、数字の1つをハチっていうらしいんだ。
その8っていう字を、
横にすると、∞っていう形になるだろ?
それって永遠っていう意味らしいんだぁ。
ボクは今、君のなかで、
横になった。
だから、永遠なんだ。
キミの中で、永遠になれるなんて、
幸せものだね。
世界中のハチを見たって、
こんな幸せなハチはいない。
いつまでも、
キミとの思い出が、永遠でありますように。』
そう言って、彼は眠りました。
今、私は精一杯に華を咲かせています。
もう山のつつじには、
憧れない。
だって、私は彼が愛したつつじですもの。
いつまでも、生まれた場所を嫌わない。
だって、生まれた場所を嫌ったって、
何も変わらない。
それにこの場所は、
彼が愛したつつじが咲いた場所ですもの。
本当は、華を咲かせようと思えば、
どこでも咲かせれる。
場所なんて関係ない。
だって、どこの場所にいたって、
ドラマは毎日、起きているのですもの。
私は、満開のつつじになってみせる!