「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」~闇堕ちの悲劇 | ネコ人間のつぶやき

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 今回は「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」(2005年)。

 

 この「シスの復讐」はスター・ウォーズ サーガにおいて最も重要なパートだと思います。

 

"Episode 3" Photo by Matt Watts

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 以前、名古屋駅南の笹島に「ささじまミュージアム」がありました。

 

 愛・地球博のサテライト会場として作られたと記憶してます。

 

 現在、跡地はどうなったかは分からないですけども、そこで2005年に「アート・オブ・スターウォーズ展」が開催されたんです。

 

 ワクワクしながら僕は観に行きましたよ。

 

 公開直前の「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」(2005年)のアートデザインが中心で、面白かったなぁ。

 

 ジョージ・ルーカスは、スター・ウォーズをアナキン・スカイウォーカーの物語として構想していたんだな、と改めて認識。 

 

 で、 「シスの復讐」が公開されると映画館へGO。

 

 「シスの復讐」を説明する前フリとして「エピソード1/ファントム・メナス」「エピソード2/クローンの攻撃」の二作があるんですが、あまりに冗長なんですよ。

 

 でもその苦行を経た分、「シスの復讐」はよかったですけどね。

 

 旧三部作と新三部作を繋ぐ「シスの復讐」は、アナキン・スカイウォーカーが遂にフォースの暗黒面に堕ちてしまい、ダース・ベイダーとして復活するエピソードです。

 

"starwars3" Photo by Geoffrey Chandler

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 古より預言された「フォースにバランスをもたらす者」として皆から期待され、実際、凄い才能の持ち主のアナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)。

 

  アナキンはパルパティーン議長救出作戦を決行。

 

 かつて全く歯が立たなかったドゥークー伯爵よりも強大なフォースを操るようになっていました。

 

 アナキンは今や師匠のオビ=ワン(ユアン・マクレガー)をも超えて成功を収める存在となっています。

 

 しかしアナキンの危うさを危惧するジェダイ評議会は、アナキンをマスターに昇格させない。

 

 この処遇に自己愛を傷つけられたアナキンは怒りに震えます。

 

 一方、秘密裏に交際しているアミダラ女王(ナタリー・ポートマン)が妊娠。

 

 それを機にアナキンは予知夢でアミダラの死を見るようになるのです。

 

 かつて母を自分の力が及ばず死なせてしまった後悔からアナキンはアミダラは救いたい、と苦悩します。

 

 それを察知したパルパティーンは、アナキンにフォースの暗黒面のパワーについてある伝説を語ります。…

 

"Lord Darth Vader, con accesorios" Photo by Arkangel

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 持ち前の傲慢さが仇となり、パルパティーンの周到な罠にまんまとハマったアナキン。

 

 ジェダイ評議会 への疑念と怒りに駆られ、復讐に手を染めるうちにダークサイドに堕ちてゆくのです。

 

 義兄弟オビ=ワンとアナキンの火山の惑星での一騎打ちは「新たなる希望」公開の70年代に、 ネットも無い時代なのに、ファンはなぜか噂で知ってました。

 

 「あんたが憎い!」と罵るアナキン。

 

 「お前を愛していた。期待していたんだ!」と悲痛の面持ちで返すオビ=ワン。

 

 切ないんです。

 

 そして本作でダース・ベイダーとして蘇るアナキン。

 

 僕の中で四半世紀待っていたシーンを観られたようで、感慨深いものがありました。

 

 スター・ウォーズの人気の一つが魅力的な悪役。

 

 その究極のアンチヒーロー・ベイダー卿の複雑なキャラクターの秘密が本作で明かされます。

 

 「シスの復讐」で描かれるのは、ジェダイの希望、共和国の希望の星アナキンがフォースの暗黒面に堕ちてしまう悲劇です。

 

 闇堕ちしたかつての偉大なジェダイマスターの父が後に息子と邂逅して、さいごに再び善の心を取り戻す「ジェダイの帰還」が、本作を観るとより感動が増すんですよね。

 

Untltled Photo by WCM 1111

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 アナキンは憎悪に身をゆだねてしまい、闇堕ちしてしまいました。

 

 己の中の憎しみの炎に焼かれてしまったんです。


 危うさはありましたが、ハンサム だったアナキンは人相まで変わって悪の権化と化してしまうのです。

 

  もし個人に留まらず、集団単位で闇堕ちが起きたなら?

 

 「シスの復讐」では、ついにパルパティーンが掌握した議会で皇帝を名乗り、共和制を解体・再編して独裁の銀河帝国を宣言します。

 

 議員達は拍手喝采。

 

 その光景を見ながらアミダラは「こうして自由が死んでゆく。万雷の拍手の中で…」と涙して悲しむ。

 

 ルーカスがこの有名な場面で描いたのは、民主主義が(大衆が権力に操作、扇動されて大多数になることで)自由を自ら手放してしまい、ファシズムに突き進んでしまう仕組みなんですね。

 

 さて、「スター・ウォーズ」が描いているように、悲劇の歴史は繰り返されてしまうのでしょうか。

 

 それとも人類は今度は踏みとどまれるのでしょうか。

 

"starwars3hayden" Photo by Geoffrey Chandler

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 ジェダイの目標とは内面の平和。すなわち幸せの追求です。

 

 でも、欲望に駆られて道を踏み外すと、最強のジェダイマスターでさえ、フォースのダークサイドに堕ちてしまう。

 

 この設定が秀逸なんです。

 

 もし我々が怒りと暴力を正当化してしまったのなら?

 

 自分の闇堕ちを正当化し始めたなら?

 

 闇堕ちしないために何が出来るか、「スター・ウォーズ」はその答えも提示しています。

 

 ひとりひとりが怒りや憎しみといったネガティブな感情を煽る刺激を避け、自分が直感した違和感に敏感になることなんですね。

 

 このキナ臭くて生きづらい時代にますます必要だと思いました。

 

 「スター・ウォーズ」を観ていると、そういう生きる道を学ぶような思いがするんですよね。


 「スター・ウォーズ」は現代の神話ですから。