ヴィンセント・ギャロ監督・主演・脚本・音楽の「バッファロー’66」(1998年)をご紹介します。
"Buffalo '66" Photo by Craig Duffy
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主人公ビリー(ヴィンセント・ギャロ)は情けない男です。
オープニング、5年の刑を終えてムショ出たばかりで、寒い中バスを待つうちにオシッコ漏らしそうになるという。
ビリーはバスで故郷のバッファローに戻り、トイレを借りた建物から実家に電話。
で、勢いで「政府の仕事で音沙汰ナシだったんだ」と母親に嘘を言い、さらには妻もいるんだ、今から一緒に行ってやる、と嘘を重ねる。
電話を切って困ったところに現れたレイラ(クリスティーナ・リッチ)を羽交い締めにして脅し、愛妻のフリをするよう命令するんです。
で、レイラのマニュアル車が運転出来ず、レイラに運転を代わるくだりも、そのあと立ちションするくだりもビリーの情けなさ全開です。
実家に2人で行くんですが、レイラの演技でうまくやり過ごす。
同時に、ビリーが両親から愛されてこなかったことが分かるんですね。
"Buffalo 66" Photo by Jason Garrattley
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ビリーは見た目やさぐれたあんちゃんですが、内面は愛情に飢えて泣いている少年なんです。
ビリーの馴染みのボウリング場に行ったりするうちに、レイラはビリーのデリケートな内面を見抜くように。
クラスのマドンナとの再会場面は、ビリーが惨めを通り越して哀れです。
しかし、観ている方も情けないくせに横暴なビリーに嫌気がさすかと思いきや、不思議とそうでもない。
ムショ出たばかりの男が女性を捕まえて車に乗り、逆恨みでも復讐相手がいるという設定だけ知ると「アメリカン・ニューシネマ的なエンディングなのかな?」と思っちゃいますが、良い意味で裏切られます。
純愛物語なんですね。かわいらしい恋物語なんですよ。
今まで良いことなんて何にも無かった男が幸せに気づく。
そりゃ、関係ないオッサンにもクッキー奢りたくあるというもの。
このシーン、よかったですね。
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"Buffalo '66" Photo by Wolf Gang
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でも、多くの男性は皆ビリーの情けなさに大なり小なりシンパシーを抱くんじゃないですかね?
ビリーと母性的なレイラは、典型的なカップル像、男女の姿だと思いました。
何にも無い男が、ずっと無縁だった愛やら幸せを知るには、奇跡的な出会いが必須でしょうね。
で、やっぱり、そういう男の中にも純粋さだとか優しさだとかなんか埋もれた宝物がないとそういう存在は現れないでしょう。
公開当時話題になった本作はお勧めです。
才人ヴィンセント・ギャロ、佳いですね。作りも実験的なやり方を入れてきたり楽しかった。
ピッタンコの薄手レザーはあの時代感(1年のうち快適な日はほぼナシ)。
そしてクリスティーナ・リッチの存在感。印象的でした。
あと、脇役に名優がズラリで驚きですよ。