「小さな兵隊」~自分が無いという虚無感 | ネコ人間のつぶやき

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 「小さな兵隊」(1960年製作・1963年公開)はジャン=リュック・ゴダールの長編第二作です。

 

"Godard Le Petit Soldat" Photo by Gaurav Mishra

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 ゴダール初期のミューズ、アンナ・カリーナが主演です。

 

 前作「勝手にしやがれ」出演をアンナ・カリーナに断られたゴダール。


 「勝手にしやがれ」がヒットしたゴダールは「小さな兵隊」で彼女に再オファー。


 ゴダールの願いが叶ったんですね。

 

 当時のフランスの政治的状況を大雑把にでも知っておいた方が映画を観やすいと思います。

 

 1954年、フランスとその植民地だったアルジェリアで独立戦争が勃発。

 

 本作製作当時、フランス国内の世論もアルジェリア独立の賛否を巡って二分化されていたという背景があるそうです。

 

 映画の舞台ははスイス・ジュネーヴ。

 

 ブリュノ(ミシェル・シュボール)はカメラマンですが、裏の顔はOAS(アルジェリア独立に反対する組織)のスパイ。

 

 ブリュノは友人の紹介で知り合った美しいベロニカ(アンナ・カリーナ)にわずか5分で恋してしまいます。

 

 OASから二重スパイと疑われるブリュノは、あるジャーナリストの暗殺指令を受ける。

 

 一度は断ったブリュノですが、結局引き受けざるを得なくなる。

 

 ブリュノは暗殺に失敗しますが、今度はその動きを察知したFLN(アルジェリア側の独立運動組織)に拘束されてしまう。…

 

Untitled Photo by poppet with a camera

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 ブリュノは政治的思想が何も無い青年です。

 

 ノンポリがなんでOASに所属しているかと言うと、元脱走兵だから母国に送還されちゃうと死刑になる、という弱みを握られているから。

 

 そんな男が政治の闘争どこじゃない争いに巻き込まれてしまうのですから地獄なはず。

 

 しかも拷問までされてしまうし。

 

 ところがブリュノは妙に醒めている人物なんです。

 

 鏡に映る自分と実際の自分に違和感を感じるブリュノ。

 

 ブリュノは自分というものが無い。

 

 自身が何者かわからないブリュノが誰かのことを本当の意味で愛せるなんて出来ない。

 

 だから彼には時間が必要。あるいは、自分の無い彼だけど時間だけはある。…


 そういうラストだったのかな、と思いました。

 

 唐突な終わり方に置いてけぼりをくらってびっくりしましたが、刹那的な「勝手にしやがれ」の終わり方よりも後味悪かったですね。

 

 これもゴダール風虚無感かな、と思った次第。