テリー・ジョーンズ監督脚本、サイモン・ペッグ主演のSFコメディ「ミラクル・ニール!」(2015年)をご紹介します。
"ミラクル•ニール(668🎥)#jdgmovie" Photo by Jdgmix
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探査機によって地球人の存在を知ったエイリアン評議会のメンバー達。
ですが、人類の自分勝手な愚行の数々を知って評議会は地球消滅を決定しかけます。
でも評議会は「ま、一応銀河法規に則って適当に地球人を1人選んで全知全能の銀河パワーを与えて観察の後に人類を評価しよう」となります。
全能のパワーをサンプル1名に与えることで本性を測り、人類が存続する価値があるか判断する、というわけです。
で、無作為に選ばれたのが英国在住の教師ニール(サイモン・ペッグ)。
全人類の運命が冴えない中年男に委ねられます。
でもニールはそのことを知らないまま。
ニールはよく分からず手にした銀河パワーを使い始めますが、理想の細マッチョな身体を手に入れたり、楽に着替えするのに使うとか、とにかく発想が平凡。
だから、ひたすらしょうもない願い事を叶えているだけ。
ある日、ニールは想いを寄せるキャサリン(ケイト・ベッキンセイル)と両想いになるためにパワーを使います。
実はこの時ばかりは、偶然評議会の都合でパワーが効かない時間帯だったんですね。
そうとは知らないニールは、キャサリンが自分に猛アタックしてきたことをパワーのおかげと勘違い。
実は前々からキャサリンは優しいニールに好意を寄せていたんです(ここからラブコメ的すれ違いが発生します)。
でもその様子をキャサリンのストーカーと化したグラント大佐が見ていて怒り心頭、ニールを拉致してしまいます。
ニールは絶体絶命のピンチに、そして人類の運命はどうなる?というお話。
この映画、最高でした。
邦題があまりにB級っぽくて、あやうく見逃すところでした。
銀河パワーが「完全に何でも」ではなく、「ほぼ何でも」叶えるもの。
なので、ChatGPTに指示する(プロンプト)ように、銀河パワーに伝わる言い方でないと願いがうまく叶わない、というのが笑いのポイントの1つ。
指示がうまくいかないと文字通りのことが起きてしまうのです。
例えば雨降りのロンドンを「ロサンゼルスと同じ天気になれ!」とパワーを使うと夜中になっちゃう。
「今現在のLAの天気じゃない!」。時差を考慮していないから、とか。
ニールの愛犬デニスが可愛いんですが、物語はパワーによってデニスが喋るようになってさらに面白さが増します。
デニスが「お気に入りのビスケットを早くくれ!」とねだると、ニールはデニスの欲望を無くすためにパワーを使いかける。
デニスから「やめろ!食べた後に理性的になるから!」とか、「欲望は必要だ!だって生きる源だろ?」と言われて妙に納得するニール。
「秀逸に皮肉っているのは英国流コメディなんだろうな」と思いながら観ていましたが、監督脚本がモンティ・パイソンのテリー・ジョーンズなんですね。
(さらには評議会のメンバーの声をモンティ・パイソンズが演じています。ファンの方は嬉しいでしょう)
上位存在のエイリアン評議会にしても人格者かと言えばそうでもなく、早く地球消滅させたくてウズウズしている始末。
「ルール」がギリギリ彼らにボタンを押させないようにしているだけ、というのも痛烈な風刺です。
グラント大佐みたいな悪党がパワーを得たら?には身震いしますが、ニールみたいな平凡な人が手にしたところで…なんですね。
と言うか、どんな人間だろうと全能のパワーを得ても…ということです。
仮に善意で人類のためにこのパワーを使えば幸せになるか?というと実はそうでもない。
結局「どういうことが幸せか?」というところまで踏み込んでいるのがこの映画の良さです。
説教くささもありません
笑いの後に納得感があるんです。あとは心あたたまる感動も。
オチにしても、皮肉や風刺を織り込んでいるのが良い。。
この辺りはイギリス的、モンティ・パイソン的なブラックユーモアなんですね。
サイモン・ペッグはヤッパリ面白い。
映画が単なるオバカな笑いにならないのはモンティ・パイソン的笑いなだけでなく、この人が知的だからでしょう。
ケイト・ベッキンセイルを「アンダーワールド」で初めて観た時、あまりの美貌にびっくりしましたが本作でも相変わらず綺麗ですね。
彼女がこの手のコメディに出演するのは意外でしたが、元々演技派ですからどんな役を演じてもハマります。
愛犬デニスの声はロビン・ウィリアムズで、これまたオモシロイ。
この映画はデニスがキーパーソンで、ワンちゃんムービーでもありますね。