今回は「悪女/AKUJO」(2017年)。
タイトルから「ファム・ファタールものか?」と一瞬思いますが、全く違います。
"The Villainess" Photo by Ged Carroll
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「悪女/AKUJO」は、孤独で哀しき女アサシンの物語。
いわばリュック・ベッソン監督の「ニキータ」的なお話です。
「ニキータ」のほか、「キル・ビル」(あと、もしかしたら「007/カジノ・ロワイヤル」)といった名作をオマージュした場面が観られます。
少女時代、父親を何者かに殺されたスンヒはマフィアのボス・ジュンサンに拾われる。
マフィアで殺し屋として成長したスンヒ(キム・オクビン)は、ジュンサンに恋をして結婚する。
しかしジュンサンは、新婚旅行中に対立する組織に命を奪われてしまう。
復讐に燃えるスンヒは、単身乗り込んで組織を壊滅させる。
その場で逮捕されたスンヒは、国家が秘密裏に組織する暗殺者集団で訓練と新たな身分を与えられる。
「今後10年任務を果たせば『平凡な人生』を約束する」という殺し文句と共に…。
…というお話。
オープニング、説明なしでアクションシーンから始まります。
この斬新なカメラワークが特筆すべきかと。
ゲームのような主観視点でアクションが長回し的に続き、途中からスンヒを接写する客観的視点にカメラがスムースに変わってアクションが続く。
バイクアクションとか、どうやって撮影したのかな?というくらいの迫力。
カメラがスンヒの後ろから前に回り込み、さらに車外へ、目まぐるしく変わるとか「マトリックス」のバレットタイムを複雑にしたようなカメラワークも斬新。
このジャンルの映画では外せない裏切りと騙し合いの応酬をしっかり押さえ、黒幕は誰か?という謎をスンヒと共に追うような展開も良いですね。
しかしあまりに凄惨な描写の連続に段々シンドイ気分に…。
個人的に直接的な描写を好まないということを除いても、やはりこれはやりすぎでしょう。
一番肝心のオチ、ラストも不時着感が否めず…。
先述の「ニキータ」は個人的に大好きな作品で、ヒロインの哀愁と孤独が胸を打ちます。
対して「悪女/AKUJO」の方は、ヒロインの哀愁と孤独の描き方もやり過ぎ、と思いました。
ただ、作り手と演者、特にアクションのほとんどを吹き替えなしでスンヒを演じたキム・オクビンの並々ならぬ意気込みを感じさせます。
あと、韓国は国の支援もあって映画を作る環境もかなり整っているのでしょう。
でもせっかく(?)「悪女」とタイトルづけるなら、こういう話より魔性の女系のお話の方が良いなぁ…(それはそれでコワイ映画ですけどね)。