「レザボア・ドッグス」(1992年) | ネコ人間のつぶやき

ネコ人間のつぶやき

ご訪問いただきありがとうございます。映画、音楽、アート等々好きな話題を綴っています。

 前回「ジャンゴ 繋がれざる者」をレビューした際、絶賛しておきながらレビューしていなかった「レザボア・ドッグス」(1992年)を今回ご紹介します。

 

"Reservoir Dogs" Photo by 米利士

source: 

 

 クエンティン・タランティーノ監督衝撃のデビュー作です。


 オープニングからビックリでした。

 

 ダイナーでブラックスーツ・ネクタイ、白シャツの中年男達が朝食をとっている。

 

 そのうちの一人がマドンナの「ライク・ア・ヴァージン」について強引な解釈を喋り出す。

 

 すると「いや、あの歌は傷ついた女の歌だ」、「それは『トゥルー・ブルー』だよ」、「何それ?」、「知らないのか?マドンナの大ヒット曲だぜ?」「とにかく『ライク・ア・ヴァージン』はさ…」。

 

 その後もオヤジ達によるたわいのない話が続く。

 

 ボスらしき男が「朝食代は俺が出す。お前らはチップを出せ。1ドルずつだ」。

 

 皆が1ドルを置いていくが、一人の男が細かい屁理屈を言ってはチップを支払うのを嫌がる。

 

 結局ボスの一言で渋々チップを置いて行く。

 

 通りに出たブラックスーツの男達はグラサンをかけて歩きだす。


 コマ送りの映像となり、ジョージ・ベイカーの「Little Green Bag」がかかる。

 

 曲の終わりに声だけがする。

 

 「畜生!やられちまった!俺はもう駄目だ!」「しっかりしろ!」。

 

 ここまでで10分弱。

 

 でも観る者はまだ何が起きているのか、どんな話かも分からない。

 

 ところが長回しによるそのざん新なオープニングによって既に惹き込まれています。

 

 そもそもダイナーでのダベリは無駄話。

 

 この話は本編と全く関係がない。でも無駄じゃない、という。

 

 ボスが名付けたコードネームで互いを呼び合う寄せ集めの不良中年達は、ダイヤ強盗を決行するが、ものの1分で警察に取り囲まれる。

 

 撃ち合いとなり、皆ちりじりになってその場を離れる。

 

 ミスター・ホワイト(ハーヴェイ・カイテル) は腹を撃たれた瀕死のミスター・オレンジ(ティム・ロス)を連れて集合場所の古倉庫に到着する。

 

 遅れて倉庫に現れたミスター・ピンク(スティーヴ・ブシェミ)が計画が早々に失敗したのはグループ内に警察か裏切り者がいたに違いない、と言う。

 

 犯罪者達は皆、疑心暗鬼になって互いの腹を探り合う。

 

 タランティーノらしい時間軸の巧みな使い方によって、犯罪者達の素性が徐々に明らかになる作りが巧い。

 

 それぞれのキャラクターの描写も細かく描き、映像はスタイリッシュで音楽もクール。

 

 隠れ家と過去の回想シーンの組み合わせなので、密室劇のテイストも味わえます。

 

 タランティーノ作品は、彼らしさが時に悪ノリになっちゃいますが、「レザボア・ドッグス」は悪ノリが皆無。

 

 脚本がすごく練られていて面白い。そして切ない。


 今でも斬新でスタイリッシュなクライム・ムービーだと思います。

 

 タランティーノ的な生々しい暴力描写は、彼の作品によっては個人的に受けつけませんが、「レザボア・ドッグス」は凄い作品だと思います。