「グラン・プリ」~相手の生き方を理解できなくとも | ネコ人間のつぶやき

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 「グラン・プリ」(1966年)は、死と隣り合わせのレースを走る4人のF1ドライバーと彼らを愛した女性たちの物語です。

 

"1966- Grand Prix" Photo by James Vaughan

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 F1の初戦・モナコGPでピート(ジェームズ・ガーナー)はマシントラブルを起こし、同僚のスコット(ブライアン・ベッドフォード)が巻き込まれてクラッシュ。

 

 ピートは怪我で済むが、スコットは重傷を負ってしまう。

 

 事故の責任を負わされてチームを解雇されたピートは、実業家の矢村(三船敏郎)に誘われて彼のチームに移籍をし、F1に復帰。

 

"1966 Royat, tournage du film Grand Prix, l'acteur américain James Garner" Photo by Michel Huhardeaux 

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 フェラーリのサルティ(イヴ・モンタン)はベテランドライバー。

 

 サルティと妻の仲は冷え切っており、今やビジネス絡みだけの関係。

 

 サルティはパーティで出逢った編集者のルイーズ(エヴァ・マリー・セイント)と惹かれ合う。

 

 サルティの同僚ニーノ(アントニオ・サバト)は若手の有望株。

 

 ニーノはパーティーでリーザ(フランソワ・アルディ)と出会い恋をする。

 

"1966 Royat, tournage du film "Grand Prix", Françoise Hardy" Photo by Michel Huhardeaux 

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 スコットの妻パット(ジェシカ・ウォルター)はスコットの元を離れてモデルに復帰。しかもピートと恋仲になる。


 スコットは鎮痛剤を打ちながら奇跡の復帰を遂げる。

 

 4人のドライバーはしのぎを削り合い、年間チャンピオンの行方は最終レースのイタリアGPまでもつれこむ。・・・

 

"1966 Royat, tournage du film "Grand Prix"" Photo by Michel Huhardeaux

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 レースの映像は斬新で大迫力です。

 

 車載カメラによる映像によってドライバーの目に映る時速290キロの世界を体感。

 

 揺れや衝撃も伝わって来て、ちょっと車酔いした気分に。

 

 当時の有名レーサーが登場しますし、顔が分かる場面は俳優が実際にレースマシーンを運転しているので、リアルさが違うのですね。

 

 画面分割やカメラワークなど、演出と映像に凝りまくっています。

 

 雨中のレースでは、危険度マックスなのに美しく幻想的に見える不思議な映像です。

 

 車に詳しくなかったり、レースに興味なくても引き込まれる映像になっているのです。

 

"1966 Royat, tournage du film Grand Prix, Yves Montand" Photo by Michel Huhardeaux

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 女性達は彼らがなぜ危険なレースを続けるのか理解出来ないのですね。

 

 その理由を聞かれれば、「死の危険を感じることで生を実感するから」とか「俺は不死身だから怖くない」など、男達はそれぞれの言葉で理由を言うことは出来ます。


 でも「この生き方しか出来ない」というのが本音。

 

 サルティはレーサーという生き方に疑問を抱きながらも「俺は変えられない。変わりたくない」とルイーズに言います。

 

 これが4人のドライバーの正直な気持ちでしょうね。

 

"1966 Royat, tournage du film Grand Prix, l'acteur américain James Garner écoutant Yves Montand" Photo by Michel Huhardeaux 

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 冒頭に大クラッシュして手術を受けてなんとか一命を取り留めたスコットにパットは「あなたはまたレースに戻る。私にはわかる」。

 

 そう言い残して病室を出て行くパット。

 

 パットは、スコットがレースをする理由は理解出来ないけども、ボロボロでもサーキットに舞い戻ることは理解している。

 

 だからもう一緒に生きてはいけない。

 

 スコットは術後のベッドの上で身動き取れないし、喋ることも出来ず、パットが病室を出た後ただ涙するのです。

 

 その後、松葉杖歩行まで回復したスコットにマスコミが「復帰はありますか?」と尋ねられると、スコットの母親が「復帰するわ」と本人より先に答える。

 

 パットもスコットの母親も、スコットにレースを辞めてほしいのだけれど、彼が復帰することはわかっているんですね。


 彼女達は彼を誰よりも理解しているんです。

 

 ただ、それと一緒に生きていくかはまた別。

 

"Françoise Madeleine Hardy" Photo by RV1864

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 終盤、ピートの元から戻って来たパットにスコットは「俺も変わってない。だから何も約束出来ない」と言う。

 

 パットは「いいの。人はすぐに約束しすぎるわ」。

 

 このシーン、良かった。セリフも。

 

 スコットは正直だし、パットはレースが嫌いなのは変わらない。


 でもパットは今のスコットを受け入れて一緒に生きていく、と決めたんですね。

 

 いつかはわからないけども、スコットがレースをやめて彼の命の危険を心配せずに暮らせる日が来ることを心の片隅で思いつつ。

 

 このやりとりの直前にスコットが語った「言ったっけ?…居てくれてありがとうって」という言葉がパットの心に刺さっていたと思うな。

 

 「グラン・プリ」はレースとレーサーと女性達の恋模様を描くことで、それぞれの生き方だったり、一緒に生きてゆく悩みがよく描かれています。

 

 「グラン・プリ」は、レース好きはもちろん、私のようにF1レースそのものに詳しくなくても楽しめる作品になっていると思います。