「風と共に去りぬ」(1939年)は激動の時代を生き抜くスカーレット・オハラ(ヴィヴィアン・リー)の半生を壮大に描いた名作です。
"Gone With The Wind Poster" Photo by elycefeliz
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※今回はネタバレです。未見の方は その点ご了承下さい。
1860年代、アメリカ南部ジョージア州アトランタ。
社交界の華・スカーレット・オハラは勝ち気でお姫様気質。
美しいスカーレットに男性陣は皆心奪われてしまう。
スカーレットは女性陣から警戒されて嫌われる性格です。
そんな彼女に興味を持つのが無頼漢レット・バトラー(クラーク・ゲーブル)。
スカーレットと真逆の存在がメラニー(オリヴィア・デ・ハヴィランド) で、彼女は淑女で良妻賢母タイプ。
メラニーはスカーレットが思いを寄せるアシュレー(レスリー・ハワード)と婚約。
スカーレットは余計にメラニーを嫌うわけです。
でも運命は二人を友情で結びつけることになります。
ついに南北戦争が勃発、北軍に押されてゆく南軍。
"Gone With The Wind (1939) - Vivien Leigh & Hattie McDaniel" Photo by Rossano aka Bud Care
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スカーレットは傷病兵の看護を悲惨な現場で手伝っていましたが、アトランタが 陥落したため、身重のメラニーを連れて、レットの助けを得て命からがら脱出します。
奴隷制の上に成り立っていた南部の繁栄が南北戦争によって風と共に去ってゆきます。
すべてを失ったスカーレットはその後も時代に翻弄されます。
第一部のラスト、誇り高きスカーレットが空腹の果てに、畑から根菜を引き抜いてそのままかじる。
情けなさに涙した後にスカーレットが夕焼けを背に「私は二度と飢えません!」と神に誓う名シーン。
その誓いを秘めたスカーレットは、目的のためなら手段を択ばず、自力で邁進して財を成してゆく。
一方アシュレーは戦後、何をしてもパッとしない。
不器用というだけでなく、アシュレーはずっと消え去った南部の上流社会という幻に未だに囚われているのです。
そして「メラニーは現実以上の夢だった」とつぶやくアシュレー。
この時スカーレットはハッとした表情をするんです。
彼女はアシュレーという人物にこの時( やっと)気づいたんだと思います。だからスカーレットは冷めたんでしょう。
スカーレットの父親もすべてを失って心が壊れて、もうタラの農園は無くなったという現実を見失います。
時代の大きな変化に適応できず、ついてゆけなかった彼らは、スカーレット達たくましい女性達との対比なんですね。
"Gone with the wind" Photo by Marysol*
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一方、レット・バトラーはスカーレットと似た者同士と自認するだけあります。
元々レットは戦前から戦争は無駄だとわかっていたし、物資と設備に勝る北軍に精神論だけを振りかざす南軍が勝てないことも分析済みでした。
国や主義が崩壊して茫然自失のアシュレーらと違って、レットは自分だけを信じていたから、己の道を見失わずに生きていられたのでしょう。
レットは現実をずっと見ているんですね。スカーレットもこの辺はレットと同じです。
でもスカーレットはアシュレーを思い続けていて、レットの愛は伝わらない。
狂おしい感情につぶされそうになるレットは、喪失体験によって酒浸りになってしまう。
"Gone with the Wind" Photo by Kent Wang
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スカーレットはレットの愛に気づけず、2人はすれ違う。
スカーレットは過去、消えた南部の上流社会という幻を振り返らないように生きてきたのです。
ただ、スカーレットは戦前に輝いて見えたアシュレーという過去、幻を思い続けていたから、目の前のレットの愛を見誤ったのかもしれません。
映画のラスト、泣き崩れるスカーレット。するとスカーレットの脳裏に響く声が彼女に決心させる。
そうだ、タラの赤い土だ。故郷へ行こう、と。後のことはそれからよ、と。
再び立ち上がるスカーレット。
""Gone with the wind"" Photo by Annie Warhol
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この時スカーレットのセリフが「After all… Tomorrow is another day !」。
直訳は「所詮(結局)、明日は別の日よ!」。
私の持っているDVDでは「 明日に希望を託して」でした。
個人的には、子ども時代にテレビで観た「明日は明日の風が吹く」の方が馴染みがあってしっくりきます。
この時のスカーレットの心情を想像してもそう思うんですね。
"ZZ55" Photo by Raoul Luoar
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ラブストーリーとして、女性の友情物語、そして人生の苦難を生き抜く強い女性の物語として「風と共に去りぬ」は、不朽の名作だと再認識しました。
人生には突然思いもよらないことが降りかかってくるもの。
めげることもあるし、絶望することもある。
ひとしきり落ち込んだり泣いた後、スカーレットのように「Tomorrow is another day 」と思えるかどうか、なんですね。