「心の旅路」~寂しくて美しい場所を目指して | ネコ人間のつぶやき

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 「心の旅路」(1942年)はメロドラマの名作です。

 

 第一次世界大戦終戦間近の1917年。メルビルの精神病院に戦傷で記憶喪失の大尉(ロナルド・コーマン)が入院していた。終戦の喧騒の中、病院を抜け出した大尉は親切な踊り子ポーラ(グリア・ガースン)に救われる。…

 

"Niebla en el pasado" Photo by Ethan Edwards

source: https://flic.kr/p/eJbyJX

 

 心優しいポーラの身の上は説明されていません。


 でも、彼女が身寄りが無く孤独な女性であることがうかがわれます。


 ポーラは大尉と自分に通じる何かを感じたんだと思います。


 逃げるようにしてメルビルを去った二人は、優しい牧師の手助けを得てリバプール郊外に落ち着き、互いに愛し合うようになるんですね。

 

 大尉はジョン・スミス(スミシー)と名乗り、リバプール郊外の家を借りてポーラと結婚します。

 

 幸せな3年が経ち、可愛い子どもにも恵まれる二人。


 「過去は真っ白、でも今が幸せなんだから良いよね」とスミシーとポーラは微笑む。


 リバプールの新聞社に就職が決まったスミシーは「明日帰って来るからね」と妻子に告げて一旦リバプールへ。

 

 ところがスミシーはリバプールで交通事故に遭い、スミシーとしての3年間の記憶が消え、本来の記憶=チャールズ・レーニエの記憶が呼び戻るのです。

 

 富豪の次男チャールズは実業家として成功しますが、チャールズはずっと霧のようにモヤモヤとした何かを抱えていたんですね。

 

 それは空白の3年間。自分は誰かと過ごしていたはず・・・。

 

 ウォレットチェーンには記憶にない家の鍵をつけている。


 ことあるごとに指先で鍵に触れるチャールズ。

 

 そしてチャールズの傍には彼の片腕で有能な秘書マーガレット。

 

 なんと彼女はポーラ!

 

 でもチャールズはマーガレットがポーラだとは気づかない。・・・

 

 ポーラが愛したのはスミシー。

 

 ポーラはスミシーの記憶が戻って欲しいと内心願っているのですが、自分からは正体を明かさない。


 こればかりはスミシー自身が思い出さねばならないこと。

 

 ポーラは切ないわけですね。ずっと傍で見ているのはチャールズです。

 

 この後話はさらなる展開を見せるのですが、それは伏せておきます。

 

 チャールズの心の濃霧が晴れて、あの日の幸せとポーラを思い出せるのでしょうか?

 

 でも運命なら何がどうなっても再び出逢うはず。


 チャールズとマーガレットはスミシーとポーラとして。

 

 「心の旅路」とはチャールズの空白の3年間を探す旅。


 そしてスミシーが戻って来るのをポーラが待っている時間。

 

 その旅の終着地とは、寂しいけれどとっても美しいあの場所。

 

 そこは愛するひとと暮らした家。


 ラストは分かっていても涙腺が・・・。


 どこを切っても優しさに包まれた世界観。


 記憶喪失もののメロドラマなんてベタに聞こえるかもしれませんが、リアルワールドがあまりに殺伐として世知辛い今だからこそ、私は「心の旅路」をお勧めします。


 「心の旅路」は優しさが心に染み入るラブロマンスの秀作なのですよ。