「バベルの塔」で知られるブリューゲルの「怠け者の天国」(1567年)を初めて観たとき、その滑稽でユーモラスな描写が心を捉えたんですね。
"bruegel_land_cockaigne_1567" Photo by Art Gallery ErgsArt - by ErgSap
source: https://flic.kr/p/zVBA2S
マンガチックなんでよね。でも16世紀に描かれた作品なんです。
食べ物が載ったテーブルの真下に寝そべる聖職者、兵士、農民の3人の男たち。
3人の体型は丸々としており、ゴロゴロダラダラしております。
食べ物の方から動かない人間たちに食べられに行くのです。
卵の殻から足が生えて食べられに自ら歩いています(拡大図)。
焼いたガチョウは自らお皿に乗っかりに行き、ブタのグリルはナイフでスライスされながら走っている。
コミカルに描いた表現ですが、ちょっと怖いですね。
3人の男たちはただ食べ物がやって来るのを寝そべりながら待っているんです。
屋根の下で座っている騎士は口を開けて空から焼けた鳥が降ってくるのを待っている始末だし。
拡大図(部分)
"Het gekookte ei" Photo by Helena
source: https://flic.kr/p/dRru8W
この絵は人間の怠惰というものを風刺しているんですね。
でも、ブリューゲルは怠惰の結末を描いていません。この絵は、いわばただ皆でぐうたらしているだけです。
例えば宗教画が描いた罰という恐怖でなく、むしろユーモアを感じさせます。この点がブリューゲルのユニークなところでしょうね。
もしかしたら相田みつをさん的な「にんげんだもの」という視点がブリューゲルにあったとか?・・・