今回はヒッチコックがハリウッドに渡って「レベッカ」に続いて監督した「海外特派員」(1940年)です。海外特派員としてヨーロッパに派遣されたジョニー(ジョエル・マクリー)は、和平交渉の鍵を握るオランダのヴァン・メイに取材を試みる。しかし、アムステルダムでヴァン・メイがジョニーの目の前で射殺されてしまう。・・・
"London Transport STD18." Photo by alan farrow
source: https://flic.kr/p/2gf34Rs
ヨーロッパに戦争の影が立ち込めている時代なのにジョニーは世の中の動向に全く関心がない、という男なんです。
血の気が多く警官を殴ったために解雇を覚悟していたジョニーを社長は海外特派員に大抜擢するんですね。
社長が分厚い本を書いた専門家を避けてジョニーを選んだ理由は、偏見のない報道をしてほしいから。
社長はごたくはいいので行動力が欲しかったのです。この辺りはヒッチコックの風刺でしょう。
とはいえ、ジョニーが急に変わるわけがない。
最初はヴァン・メイを追って平和化運動家フィッシャー主催のパーティーに潜入するも、フィッシャーの娘キャロルに一目ぼれしてボワ~っとしている始末(確かにキャロルを演じたラレイン・デイは美しすぎます)。
そんな普通のあんちゃん・ジョニーが知りすぎた男になってしまい、キャロルと共に本気で事件に向き合う・・・というヒッチコックお得意の展開になるのです。
ラレイン・デイ
"Laraine Day" Photo by Insomnia Cured Here
source: https://flic.kr/p/3mqi8J
「海外特派員」の映像はスタイリッシュの極みです。1940年公開の作品なんですけども、ヒッチコックはどうやって撮影したんでしょう?
アメリカに向かう飛行機が海に墜落して海上まで逃げるシーンはなんと1カットだそうです。
コクピットに海水がなだれ込み、客室がどんどん浸水、皆は流されながら窓を割って翼に避難する。この流れを一発勝負で撮影したとは・・・。
もうね、圧巻!リアルそのものですから、迫力はCGの比ではありません。
そして、風車の場面でジョージが犯人グループに見つかりそうで見つからないヒヤヒヤ感。階段をソロ~リ、ソロ~リと手に汗握る展開はヒッチコックの真骨頂。
さいごまで観る者を引き込む手腕は、やはりヒッチコック!という感じですね。