今回はジョーン・クロフォード主演のフィルム・ノワール「ミルドレッド・ピアース」(1945年)です。
"MARTINATI, Luigi. Il Romanzo di Mildred (Mildred Pierce), 1945" Photo by Halloween HJB
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ある夜ミルドレッド・ピアース(ジョーン・クロフォード)の夫モンティが何者かに射殺されるという事件が起きます。
すぐに容疑者としてミルドレッドの前夫バートが逮捕されます。
しかし「バートが犯人ではない」と言うミルドレッドは、事件までの経緯を刑事に語りだす。
ここからミルドレッドの回想が描かれてゆきます。
平凡な主婦ミルドレッドは長女ヴィータ(アン・ブライス)のために無理してでも贅沢をさせようとしています。
我が儘なヴィータの言いなりになっているミルドレッドにバートは忠告しますが、ミルドレッドは聞く耳を持ちません。
結局ミルドレッドはバートと離婚してしまう。
シングルマザーとなったミルドレッドはウェイトレスとして働きます。
その後独立したミルドレッドはレストランを起業してチェーン展開するまでに成功します。
ミルドレッドが身を粉にして一生懸命働き、モンティと再婚までした理由はヴィータに上流階級のような暮らしをさせるため。
でもヴィータは感謝どころか「ウェイトレスあがり」と母を軽蔑しているのです。
さらにはヴィータはミルドレッドから逃げようとしているのです。
ヴィータが後に身を落としたのも、ミルドレッドへの復讐でしょう。
ただ、映画ではヴィータがなぜ母親をこれほど軽蔑し憎悪するのか理由を全く説明していません。
映画の始まりからヴィーダはそういう娘なのです。
ヴィーダに献身するミルドレッド。
母親、母性の持つ顔の1つにも思えるのですが、ミルドレッド母娘の心の結びつきは歪んだ主従関係になっているように見えます。
"Ann Blyth , Joan Crawford" Photo by Jack Samuels
spurce:
映画「ミルドレッド・ピアース」は、ミルドレッドの供述の真偽は?誰が真犯人なのか?というミステリー、サスペンスに焦点を当てています。
が、映画版もラストまで目の離せない展開はサスガ。
監督は「カサブランカ」で知られるマイケル・カーティス。
「郵便配達は二度ベルを鳴らす」「深夜の告白」でも有名な原作者ジェームズ・M・ケイン。
人間とアメリカ社会のダークサイドを欲望というキーワードで描いていましたね。
映画のラストが朝陽であったことを考えると、救いのない物語の一筋の希望を暗示しているのでしょうか。