「ブロークバックマウンテン」(2005年)はヴェネチア国際映画祭金獅子賞を始め、この年の国際映画祭から数々の賞を受賞した作品です。今回はこの物語からお話を。
"Broke Mountain Poster" Photo by wxheather
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1963年ワイオミング州、ブロークバックマウンテンで青年イニス(ヒース・レジャー)はジャック(ジェイク・ギレンホール)と共に羊番の季節労働をすることになり、山中でひと冬を越すことに。
二人は親交を深めてゆきますが、ある晩一線を超えます。下山したその年の秋にイニスは婚約者のアルマ(ミシェル・ウィリアムズ)と結婚し、2人の娘が生まれます。
ジャックは再びブロークバックマウンテンに行きますが、イニスが来ていないことに失望し、テキサスに流れ着いてそこで出会ったラリーン(アン・ハサウェイ)と結婚、彼女の父が経営する会社に勤めます。
4年後ジャックはイニスの家を訪れ、再会した二人は物陰で抱擁しますが、アルマはそれを目撃してしまいます。
そうとは知らないイニスとジャックは、釣りに行くと家族には伝えて年に数回ブロークバックマウンテンで逢瀬をします。
その後夫婦の溝ができてイニスは離婚し、トレーラーハウスで惨めな生活を独り送ります。養育費の支払いのため多忙なイニスに、中々会えないジャックはしびれを切らせて「一緒に牧場を経営しよう」と言いますが・・・。
"431.brockback mountain_1_1" Photo by petcor80
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イニスは幼少期に虐殺された同性愛者の死体を父親に見せられた記憶があるのです。そしてその虐殺に父親が関与していることがにおわされてるのです。この記憶がずっとイニスの心に強烈に刻まれていたのです。
ジャックとイニスの関係は禁断の愛、命懸けの恋だったゆえに、よりふたりの純粋な愛が際立って描写されていますね。
純粋さに憧れた二人の青年が雄大で美しいブロークバックマウンテンでたまたま運命的に出会ってから20年間の純愛物語です。
トレーラーハウスでシャツを抱きしめるイニスの姿がとても印象深いですね。ヒース・レジャーの遺した名場面として語り継がれるでしょう。
この作品は亡くなったヒース・レジャーを始め、若手演技派が主要キャストを務めました。アン・リー監督の演出した映像美も素晴らしかったですね。
ヒース・レジャーは特殊メイクに頼らず、表情や仕草といった演技力でもってに20代~40代のイニスを見事に表現しました。
"brokeback(press photo) " Photo by independentman
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さて、純粋な人が社会で生きることが厳しい、ということが往々にしてあります。よく言う「生きづらさ」の原因の中には、その人物が社会で生きるにはあまりに純粋すぎる、という場合があります。
この作品は純愛というテーマだけでなく、現代社会の生きづらさと人の純粋さの関係を提示していると感じましたね。
価値観は人それぞれですが、それを自分以外の人間に押し付けることは避けたいものです。人間関係にまつわる疲れや嫌気の原因の一つがこれですから。
そして人が人間社会に疲れて嫌気がさして、そしてかつての純粋さに憧れるとき、人は無条件で誰をも受け入れてくれる純粋な大自然に向かうものなのかもしれません。
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