「荒野の七人」(1960年) | ネコ人間のつぶやき

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 「荒野の七人」(1960年)は、黒澤明監督の「七人の侍」(1954年)を西部開拓時代に舞台を変えてリメイクした名作です。

 

 

 メキシコのとある貧村では毎年盗賊団が現れて、作物などを搾取されてしまい苦しい生活を強いられているのです。

 

 村人たちはいつもおびえて暮らしている。ついに村人が一人殺されてしまう。

 

 そこで村の全財産をかき集めて盗賊退治をガンマンに依頼するため、テキサスに村人の数人が向かうのです。

 

 最初に現れたのがクリス(ユル・ブリンナー)とヴィン(スティーブ・マックイーン)の2人のガンマン。

 

 人種差別のために墓に埋葬してもらえないネイティブアメリカンの死体を2人が埋葬してあげるのです。

 

 人種差別者が銃を構えているのだけれども2人にはかなわない。

 

 その様子を見ていた村人がクリスに仕事を依頼するのです。

 

 クリスが村人に条件を聞くと「6週間で20ドル」。

 

 安すぎてお話にならない値段なわけです。

 

 でもクリスは村人の話を聞いて「全財産で依頼されたのは初めてだ」と依頼を受けるのです。

 

 クリスは腕の立つガンマンを募集。ヴィンも値段を聞いて一度は去るのですが引き返して来ます。

 

 話を聞きつけてクリスの元に集まってくるガンマンたち。

 

 「何人だ?」の問いにクリスとヴィンが黙って指を2本立てる(「今は我々2人だ」の意味)。

 

 う~ん、カッコイイ。こうして7人のガンマンが集まって村を守りながら盗賊を撃退するための戦いが始まるのです。

 

"McQueen & Brynner" Photo by Insomnia Cured Here
source: https://flic.kr/p/3mRqVU

 

 7人のガンマンの人格や事情がそれぞれで、観ている者は誰かに自分を重ねて観るのも良いですね。

 

 ユル・ブリンナーやスティーブ・マックイーン、チャールズ・ブロンソンの他にも、ジェームズ・コバーンやロバート・ヴォーンといったスター俳優たちの競演なのです。

 

 ユル・ブリンナーの精悍な顔立ちと鋭い眼光がイイですね。

 

 厳格な一面があるけれどもリーダーのクリスそのもの。オリジナル版では志村喬が演じてました。

 

 そしてスティーブ・マックイーン。彼が演じたヴィンはクリスの厳格さを和らげるようなところがあって、一見とぼけた語りが実は名言だったりするのです。

 

 村の外に住む長老にクリスが「守れないから村の中に入ってくれ」と言うのですが、長老は「自分みたいな老ぼれを盗賊は殺さんよ」と言うのです。

 

 するとヴィンは「10階から飛び降りた男が各階の住人に『俺はまだ生きているよ』と(落ちながら順に)言ったとさ」。

 

 また、盗賊のボスに「なんでこんな採算の合わない仕事を引き受けたんだ?」と聞かれて、ヴィンは「ある男が素っ裸でサボテンに抱きついたとさ」。

 

 当然盗賊のボスは「なぜだ?」。ヴィンは「そのときはいいと思った」。

 

 私は個人的にはこういうとぼけた感じで、でも実は人格者なヴィンが好きですね。

 

 まあ、スティーブ・マックイーンが大好き、というのも大いにありますが。皆さんはどうでしょう。

 

 怪力男のベルナルド(チャールズ・ブロンソン)は村の子どもたちに慕われ、大人気になるのです。

 

 あるとき、子どもたちがベルナルドに「自分の父親は戦おうとしない腰抜けだ」と言うのですね。

 

 ベルナルドらガンマンの方が男らしい、と。

 

 するとベルナルドが男の子のお尻を叩いて「お前たちのお父さんたちの方が立派なんだぞ。汗水たらして大地を耕して家族を守っているじゃないか」と叱るのです。

 

 クリスらガンマンたちは、英雄的で格好良く見えるけれども、悲しいかな、定住できないアウトローな存在。己の銃の腕で生きている。

 

 負ければそれは即孤独な死を意味する。だから家族を作らない。

 

 ガンマンたちは本当は根付きたいけれども、それができないので旅の人生を送っている。

 

 彼らは実は農民に憧れているのですね。

 

 大地に根をはり、地道に働いて家族を守っている、そういう生き方への憧れの気持ち。

 

 自然の中で地道に素朴に大切な存在と暮らしてゆくことは当たり前のようで実は当たり前ではない、尊敬に値する生き方なのだよ、というメッセージでもありますね。

 

 もし英雄の必要もなく、そういった生活ができるのなら、(それは搾取されない平穏な日々なのだから)一番良いよね、ということでもありますね。