マイク・ミルズ監督脚本「人生はビギナーズ」(2010年)を10年ぶりに観直しました。
この作品は監督の父親との思い出を基に作られたんですね。
"Beginners" Photo by Wolf Gang
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アートディレクターのオリヴァー(ユアン・マクレガー)は38歳独身、内向的で愛に臆病な男です。
母が亡くなって数年後のある日、父のハル(クリストファー・プラマー)が自身がゲイであることをカミングアウト。
75歳の突然な告白にオリヴァーはびっくり。
ハルはそれからクラブやパーティーに出かけ、若いゲイの恋人との交際を始めます。
その後、ハルはがんを患いながらもポジティブに残りの人生を過ごすのです。
厳格だったハルのカミングアウトと変化に戸惑うオリヴァーでしたが、父との関わりと対話を通じて親子の距離が少しずつ縮まってゆきます。
ただ、ハルが母をどう思っていたのかは釈然としないオリヴァーでした。
そしてハルを看取って3ヶ月、悲しみに暮れるオリヴァー。
心配した同僚に無理やり連れて行かれた仮装パーティーで、オリヴァーはフランス人女優のアナ(メラニー・ロラン)と出会います。
アナに運命を感じるオリヴァーですが、喪失感に苦しんでいます。
アナも情緒不安定な父親がいる。
互いに父親をめぐる複雑な思いがあるんです。
しかし、それゆえに2人は相手を重荷に感じてしまい、関係がギクシャクしてゆく…。
"Beginners 2" Photo by Craig Duffy
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ハルはカミングアウト後、積極的に生きるんです。
ハルは恋をしようとしないオリヴァーに「お前は臆病だよ。逃げてばかりいる」と語る。
ハルはオリヴァーに言う。
「私は悩むのをやめた。今は人生を愉しんでいるよ」。
父と息子の関係を通して「人は皆人生の初心者である」と教えてくる映画ですね。
ハルもオリヴァーも、アナも皆、常に初体験のことばかりなんですね。
悩み、傷つき、悲しみ、すれ違う。
失敗もするから臆病にもなる。
でも人生のビギナーなんだから、おそるおそる試してみる。
そういう人間の愛すべき姿をマイク・ミルズは繊細に、丁寧に紡いでゆきます。
"Mélanie Laurent" Photo by Rob Corder
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オリヴァーは中年男です。中年というのは、自分と親との関係を振り返る時期ですね。
自身や両親の衰え、結婚や子どもをもつといったことが多い時期なので、どうしても自分の心の内の親子関係が賦活するからでしょう。
心の中の、そして現実の親子関係を今一度見つめ直すのですね。
それだけでなく、今までの半生を振り返り、これからをどう生きるか?と考える時期なんです。
どれも初体験なわけで、人は皆人生のビギナーなんですね。
「人生はビギナーズ」は確かにシビアなテーマを含んでいますが、そこを独特のユーモアでもって描くことで、なんとも優しい作品となっています。
ハルの愛犬アーサーが可愛い!アーサーはオリヴァーのことを分かってくれている。愛犬家も堪らない映画でしょう。
味わい深い演技を魅せたクリストファー・プラマーは、本作でオスカーを受賞しています。
(※2014年9月2日の過去記事をリライトしました)