【ハングオーバー】
「謎を解かない謎解き映画(笑)」★★★☆(03/JUL/2010@ブルク13)
なんか肩から背中にかけて疲れが”甲羅”のようにのし掛かっていて、思うように仕事が進まない。
だから今日は割り切ってパソコンを閉じ、桜木町にマッサージに行った。
マッサージ中、爆睡してしまった。
終了後、恐ろしいほどタオルがヨダレで濡れていた。
それにしても亀って大変だな、あんな重いモノをいつも背負っているなんて。
「今日は外してみよっかなー」とか思わないのかな。
ブルク13は、最近じゃ一番使用頻度が高い。
駅から近いし、綺麗だし、喫煙所が入り口の脇にあるし。
それになんといっても「No more 映画泥棒」のCMが流れない。
「踊る大捜査線3」が前作比102%の大入りだそうだけど、なんかそれほど混んでる感じはしなかったな。
本日初日を迎える作品といえば、「踊る~」よりやっぱこの「ハングオーバー」でしょ。
待ちに待った日本公開。彼女からも面白いと聞いていたし、何よりこういうバカ映画は大好き。
例え全世界で大ヒットした映画でも、有名俳優が一人も出ていない映画は日本ではなかなか公開されない。
この映画も公開が不安視されたが「映画ハングオーバー 劇場公開を絶対に求める会」なるものも出来、「ホットファズ」がそうだったように、無事公開にこぎ着けた。
配給会社は、超がつく駄作であってもディカプリオが出ていれば迷わず買い付ける。
しかしこんな地味なキャストじゃ、国際映画賞で受賞でもしない限り無理。
結婚式を目前に控えた新郎とその悪友たち(+義理の弟)は、バチェラーパーティーを開こうとラスベガスへ。ベガスの夜景を見ながら「今夜は楽しもうぜ」と乾杯すると、物語は時間が飛んで翌朝の描写になる。高級ホテルのスウィートはグチャグチャ、何故か鶏や虎や赤ん坊が部屋にいる。しかし誰一人、前夜の記憶がない。ドラッグと酒で記憶が吹っ飛んでしまったのだ。一体ここで何があったのか……おまけに挙式を控えた新郎は姿を消し、殺し屋に追い回されるハメに……。
この映画は構造的にはミステリーだ。何故こんな酷い目に遭わなければならないのか、新郎は一体どこに行ってしまったのか、悪友たちは強烈な二日酔い(hangover)に見舞われながら謎を解いていく。
しかしこんなバカ映画に謎解きの爽快感を求めてはいけない。
そもそも本編上では謎は解かれない(笑)。
ドタバタ劇が進むにつれてわかってくるのは、奴らが酔っぱらうとどれだけヒトデナシかということだけだ。
そのプロットが面白い。新郎失踪の謎を解こうとしながらも、暴かれるのは当人たちの本性なのだ。
しかしそれにしても……この地味なキャスティングはどうだ。
主演のブラッドレイ・クーパーは、「ニューヨークアイラブユー」とか「そんな彼なら捨てちゃえば」とか「バレンタインデー」とか、おおかたの日本国民が無視した映画ばかりに出演している。
別にボクは好きでも嫌いでもないけど、寄り目なのが気になる。
この映画は低予算ながら世界中で大ヒットした。なんと400億円以上の興行収入を叩き出した。
日本最高記録の「千と千尋の神隠し」が300億(日本)。実写最高の「踊る~2」が173億。
すでにパート2の準備が始まっているらしいが、日本で公開するかどうかは本作の興収如何か。
ちなみに、パート2には離婚騒ぎの渦中にあるSEX依存症の某有名プロゴルファーが出演予定とか。
本作にも超豪華ゲストが出演している。
この人が主役だったら、もっと早く公開できたかもしれない?
【孤高のメス】
「脳死移植がテーマの映画……でも脳死してるのは作り手」★(01/JUL/2010@川崎109シネマズ)
寝不足……昨夜の睡眠時間は2時間くらい。
8時間寝ないと調子が出ない。
仕事がまだまだ忙しいこともあるが、水泳を始めてからなかなか寝付けなくなった。
体が熱いんだよなー。
一人ベッドで熱くなっても、虚しいんですけど。
ま、いいや。
この映画の前売り券は6月の初旬に買った。
評判よかったし、”地味だけど良く出来た映画”的匂いがプンプンしてたし。
前売りが勿体ないし、昨日無理やり時間を作って見に行った。
家に帰って速攻レビューをチェックし直した。
6月の初旬にチラ見したレビューは、きっと違う映画のものだったんだろうと思ったからだ。
杞憂だった……なんて評価が高いんでしょう、こんなものが。
もう本当に嫌になる。
誤解を恐れずに言えば(かなり敵を作りそうだけど)、こんなものが名作扱いされるということは、観客側の映画を見る力が落ちていると言わざるを得ない(言ってしまいました……)。
これが「中学生日記」の中の1エピソードだったらボクも納得するだろう。
なにせシナリオの半分は説明台詞。
あんなに状況説明しながら生きている人間は、とりあえずボクの周りには存在しない。
主人公にはだいたいどのシーンでも押しつけがましい決め台詞が用意されている。
その"決め”を効果的にするためにだけに、他のキャラクターは存在しているかのようだ。
問題は台詞だけじゃない。
構成も、上映中3回くらいトイレに立ってもついて行けるくらいのわかりやすさ。
全てが作劇のための作劇でしかなく、俳優たちは1ミリも狂わぬ正確さで説明台詞と決め台詞を繰り返す。
こんなものを、映画表現というのか?
映画であることを拒否していると言ってもいい。
こんなもんを数億かけて作るくらいなら、東急ハンズで画用紙とクレヨンを買って紙芝居を作った方がいい。
肝心のストーリーも、脳死臓器移植をテーマにするのになぜ20年前の話にする必要があるのだろう?
いまだ日本が臓器移植後進国であるのは変わらない。
逆に現在を舞台にする方が、より複雑でドラマチックな問題提起が出来そうな気がする。
つまりはオリジナルが作れないだけなのね、って思ってしまう。
東映には、とにかく毎年呆れさせられる。
去年のワースト1は「笑う警官」がぶっちぎりだった。
けどまあ「笑う警官」は「北京原人」的トンデモ映画だと思えばまだ納得できる。
「さまよう刃」とか「剣岳 点の記」のような、一見立派に見えそうなものほどタチが悪い。
本作が上記2作よりも数倍罪深いのは、テレビドラマ的な作劇という意味では大きく破綻していない点だ。
だから、安いドラマでも見てるつもりの観客にとっては満足できてしまう。
東映の製作陣が高評価のレビューを見て「あ、こう作ればいいわけね」って思っちゃったらどうするんだ(思ってるな、すでに)。
で、ヤツらはテレビ局の作った映画とかを「あんなもん映画じゃない」とかってバカにするんだな。
地味ならいいのか? テレビドラマ映画じゃなければいいのか?
地味で仕事は真面目だけどマズイラーメンと、チャラチャラしてて親のスネ囓って作っているけど美味いラーメンとの区別がつく人間でありたいと、ゴーマンながら思います。
脚本の加藤正人は、かつては「尻を撫で回し続けた男・痴漢日記」という傑作Vシネマのシナリオを書いていた。このシリーズは(借りるのは死ぬほど恥ずかしいが)傑作だ。
「クライマーズ・ハイ」や「雪に願うこと」も彼だ。
けど忘れちゃいけないのは、「日本沈没」平成版も彼だ。
やっぱ監督って大事。
監督の成島出は、脚本家時代「大阪極道戦争」「シャブ極道」という傑作を生み出した。
「笑う蛙」も良く出来ていたし、初監督作の「油断大敵」もまあまあ。
しかしボク的には「ミッドナイトイーグル」を見てあまりの演出センスの無さに舌を巻いた。
本作も、そのセンスの無さが遺憾なく発揮されている。
脚本家に戻った方がいい。
しかし……なんてゴーマンなレビューなんだ。
睡眠不足だから許してください。
普段はもっと、温厚な男です。
そう言えば、前回のブログに書き忘れた映画があった。
この映画も見てました。
「ローラーガールズ・ダイアリーズ」★★★
【闇の列車、光の旅】&【告白】 それと、こむらがえり
5月の初旬からだから、1ヶ月半以上もブログを書かなかった。
忙しかった……泣きが入るほど。
4つも仕事を掛け持ちして、どれもそれなりに大きな仕事で、
もう自分でもわけがわからないような状態だった。
1ヶ月半の間に首が2回も回らなくなった(いや借金じゃなく、物理的に)。職業病だな。
鍼灸院で泣かされて(もう二度と針はやらない)、カイロも効かなくて、水泳を始めた。
ただでさえ仕事であっぷあっぷなのに、プールに通い出して余計に映画が見れなくなった。
ウン十年ぶりに競泳用水着を穿いて泳いだ初日、両足同時にこむらがえりになって補助員に救出された。
死んでしまおうかと思うくらい恥ずかしかった。
一応、この1ヶ月半で見た映画は、
「シャッター・アイランド」★★
「運命のボタン」★
「アリス・イン・ワンダーランド」★★★
「グリーン・ゾーン」★★★☆
「17歳の肖像」★★★★
「トロッコ」★★★
「セックス・アンド・ザ・シティ2」★★☆
「マイ・ブラザー」★★☆
「告白」★★★★
「闇の列車、光の旅」★★★★
なんかパッとしないのは「運命のボタン」のせいだな……ヒドイ映画だったぜ。
「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」と「武士道シックスティーン」を見逃したのは痛かった。
大ヒット満員御礼中の「告白」。
フツーに面白い。っていうか、ちょっと物足りなく感じるほどフツーな映画だとボクは思った。
”告白”形式で描く以上、中島哲也ならあのレベルのモンタージュは想像できる。
他のレビューを覗くと、ヒットしているだけあって評判良いね。
「のだめ~」とか「ダーリンは~」なんかが当たるより、こっちに当たって欲しい。
絶賛レビューを読んでつくづく思ったのは、
やっぱみんな気持ちよかったんだなー、ということ。
救いがないとか残虐過ぎるとか言っても、
やっぱ理解不能でクソ生意気なガキどもが泣き叫ぶ姿を見て、気持ちよかったんだよ。
虚しい自己実現のために人殺しをするようなガキには、それと同じ苦しみを味あわせてやればいい。
目には目を……ハムラビ法典が書かれたのは紀元前のことなんですけど。
さすがは死刑賛成論者が8割を超す国の映画です。
中島哲也たるもの、その先を描かないと巧いだけの監督で終わっちゃうぞ、と思った。
やでも、面白い。力のある映画です。
一方その頃メキシコでも、ガキ同士が殺し合いしてました。
「闇の列車、光の旅」
中島哲也に比べたら、こっちの若手監督は何倍も稚拙。
シナリオも下手だし、どー見ても予算もなさそうだし。
でも、ガエル・ガルシア・ベルナルが製作総指揮に入ってこの映画に協力してあげたかったのは、
故郷メキシコとそれを取り巻く中南米諸国のリアルを世界に訴えたかったからだろう。
列車の屋根に乗って、国境越えを目指す移民たち。
銃を持って縄張り争いをする子供たち。
もう希望など存在しないような中南米の描き方は、「告白」の世界観と通じるものがある。
ただ決定的に違うのは、本作は「目には目を」の先にある何かを描こうとしていることだ。
だから下手だけど★一個追加。
それにしても……
どうすればクロールの2ビートキックをマスターできるんだろう。
何回やっても沈んじゃうんだけど……。
コツコツとペタってくださった方々、ありがとうございました。
今日から何となく、再開したいと思います。
【イタリア映画祭&朝まで激論】
咳が止まらず、ずっと寝込んでいる。
もういやだ、映画館に行けない人生なんて。
別に家を出られないほど熱があったりするわけじゃないんだけど、上映中に咳が止まらなくなったら迷惑だし。
なんか激しく頭痛もするので、ブログも(っていうかネット自体)かなりご無沙汰。
彼女がイタリアに帰る前に、ボクと同じような症状になった。
咳が止まらなくなって、でも熱があるわけじゃなくて。
ウィルスだけ置いて帰るなよ……寂しいじゃないか。
たぶん、寂しすぎるから風邪が治らないんだな。
ウサギだったら死んでるところだったぜ。
ゴールデンウィーク中も映画や本から全く遠ざかっていたわけじゃない。
ただ前半は忙しくて、後半は風邪を引いていて、全くレビューを書けず。
薄れゆく記憶の中で、何となくまとめてレビューを書こうと思っているんだけど、
……本当に記憶が薄れてしまっていることにいま気づいた(号泣)。
とりあえずレビューは書けそうにないから、記録だけ残そう。まずは「イタリア映画祭2010」から。
「まっさらな光のもとで」★★★☆(03/MAY/2010@朝日ホール)
実は今回のイタリア映画祭で、一番期待していた作品。
理由は……勘。
監督のフランチェスカ・コメンチーニは、まさに映画一家の出身。
父・ルイジ・コメンチーニ監督はいわゆるCommedia all'italianaの代表格で、4人の娘がいる。
長女クリスティーナと次女のフランチェスカは映画監督、三女は美術デザイナー、四女はプロダクションマネージャー。もう一人作ってカメラマンにしたら、姉妹だけで映画が作れてしまう(笑)。
映画は悪くないんだけど……期待したほどじゃなかった。
主人公はアラフォーの女性(50代にしか見えないけど)。すでに自立した女性とはいえ、一人暮らしは寂しい。年下の男と情事を重ね、妊娠。シングルマザーになる決意をするが、6ヶ月で早期出産してしまう。保育器の中、不安要素と共に育っていく我が子を見ながら、女は、自分自身の人生と対話していく……というような話。
こうやって書くとイイ話だな。でもなんか新鮮味が感じられなかった。
描き方は違えど、こういった更年期の主人公の気持ちの揺れは、それこそ色んな国で映画になっている。だから悪いと言っている訳じゃなく、だからもう少しオリジナルな着地点が見たかった。
ナポリのケーブルカーが印象的。
「それもこれもユダのせい」★★★☆(03/MAY/2010@朝日ホール)
「トリノ、24時からの恋人たち」のダヴィデ・フェラーリオが監督。
若き舞台演出家・イレーネは、囚人たちによる演劇の演出を担当することになりトリノの刑務所を訪れる。得意の前衛劇をやろうと考えていたが、刑務所の教誨師からキリスト受難劇をオファーされ、無神論者のイレーネは戸惑う。それに囚人たちは、だれ一人として裏切り者ユダの役をやろうとせず……。
実際にトリノの刑務所で撮影は行われ、ほとんどの出演者は本物の囚人と看守。
彼らがいきなり歌い出し踊り出す。
みんなフツーに顔出して出演している。なんて微笑ましいんだ。
日本だったらボカシだらけの映画になって、とても見れたもんじゃないだろう。
映画はテンポもよくコミカルでブラック。宗教やモラル、自由というものを皮肉たっぷりに描いた佳作。
数年前、ローマのジャニコロの丘にいた時、夕陽に向かって叫んでいる親子がいた。
青春してるのかと思いきや、その親子は刑務所に入っているトーチャンに向かって叫んでいた。
息子も嫁さんも「アンター、アイシテルワヨ!」と人目もはばからず叫んでいる姿は、何とも微笑ましい光景だった。
この映画にも、全く同じようなシーンが出てくる。
なーんかまだ日本って200年くらい遅れてるな、と思ってしまう。
ということで、今年のイタリア映画祭は4本しか見れませんでした。
まあ忙しかったし、しょうがない。
上映終了後、この映画祭に第一回から参加している翻訳家の岡本氏と飲みに行く。
いつも岡本さんと飲むとただじゃ帰れない。
この日も午前様……ビール→紹興酒→ワイン→焼酎→日本酒と一応一通り飲んだ気がする。
岡本さんの好きな「まっさらな光のもとで」に関しては激論が交わされた。
よく憶えていないけど、激論だった気がする……(ヤバイ、最近本当に記憶がヤバイ……)
彼はソレンティーノの「Le conseguenze dell’amore」に「愛の果てへの旅」という邦題をつけるほど”文学的な”映画の見方をする人。
ボクは直感型だと思うから、結構意見が食い違う。
彼女とはベロッキオについて激論していた。イタリア語だからよくわからんかったけど。
ボクはもうクタクタになった。彼女は”時差を直さない女”なので、朝まで元気。
それにしても、祝日の早朝の新橋って、カラスしかいないんだな。
【クロッシング】
「地獄は、どっちだ?」★★★★(30/APR/2010@ユーロスペース)
ここ最近、”暴力”について考えることが多かった。
「息もできない」や「プレシャス」のような映画が作られる背景には、それ相応のリアルな現実があるのだろうし、それは日本とて同じことだ、と思った。
しかし、この「クロッシング」を見て、大いなる矛盾を感じてしまった。
この映画の舞台は北朝鮮という名の地獄だが、そこで描かれる家族は、我々自由な国の人々には、もうとてもじゃないが”リアル”に感じられないような、美しい愛情で結ばれているのだ。
ボクらが当たり前に享受している自由はほとんどそこにはないが、親子も親類たちも、信頼し合い最後の最後まで助け合い、餓死寸前の状況であっても自分の愛する者たちのために生きようとする。
なんなんだ、この美しさは、と思う。
わかっている。
別に北朝鮮だってこんな正しい家族ばかりじゃないだろう。
逆に韓国やアメリカだって、あんな暴力まみれの家族ばかりじゃない。
でも、近頃めっきり映画を通してしか世界と接していないボクは、単純にこう思ってしまう。
一体、地獄は、どっちなんだ?
主人公・ヨンスは、元北朝鮮ナショナルサッカーチーム代表で、将軍様から勲章やテレビまでもらった男。
ただそんな彼も、炭鉱で重労働を強いられ、三度の食事もままならないような暮らしをしている。
妻は二人目の子を妊娠した。しかし結核を患い、その薬も北朝鮮では手に入らない。
主人公は妻を救うため、幼い息子・ジュニにその看病を任せ、中国に密入国することを決意する。
北朝鮮での貧しい暮らしは、想像通りというか、そっち関連の本を数冊読んでいたからそれほど驚かなかった。
上記したように勲章までもらった人だから、一般の人々の暮らしはこんなもんじゃないだろう。
中国に入ればすぐに薬は手に入ると思っていたヨンスだったが、なかなか上手くいかない。
順調に仕事を得て金も貯まるのだが、中国公安部によってあっという間に無一文に逆戻り。
韓国に渡れば金がもらえる、と知り、ヨンスたち志願者は中国・瀋陽に連れて行かれる。
ドイツ大使館に逃げ込むためだ。
この大使館駆け込みのシーンは、涙なしには見られない。2002年に同じ瀋陽で起きた、日本領事館への駆け込み事件をどうしても思い出してしまうからだ。
全体を通して、”凡庸”としか思えないこの映画の音楽だが、この駆け込みシーンの音楽は素晴らしい。
韓国に渡っても、息子と会えない日々は続く。
そんな時、一方の北朝鮮ではすでに妻は死亡し、幼い息子は父を捜して三千里の旅に出る。
下にあるのが、映画ホームページに掲載されている、父ヨンスと息子ジュニの辿った”自由”までの道程だ。
勿論この映画はフィクションだから、全ての脱北者がこの経路を辿るわけではない。
しかし、この経路を辿った者もいる。
息子の辿った道程は、まさにそれこそが地獄と思えるほど。
彼の国の者たちにとって、自由とは、気が遠くなるほど面倒な手順の先にある。
それでも、彼らは家族を思い続ける。
家族のためなら贅沢もせず、気が遠くなるような理不尽に不平も言わず、歯を食いしばって耐え抜こうとする。
なんか凄く懐かしいぞ、こういうの。
「おしん」を見ている気分だ。
日本はおろか世界中の先進国において、彼ら主人公の性格設定はもはや著しくリアリティーに欠ける。
美しすぎるのだ。正しすぎる。
父親にレイプされていた娘とか(プレシャス)、親をタコ殴りする息子とか(息もできない)、そういう人々がボクら自由な国のリアルなんであって、こんな美しすぎる家族は大嘘だ!
食うに困っているわけでもないのに鬱に悩み、自殺者数は一向に減らない。洋服を買うために援交して、子供の給食費でパチンコに行く。
そんな自由を謳歌する我々には、妻子を助けるために一切の贅沢を拒否し、虫けらのような扱いを受けても歯を食いしばって耐え抜く人たちの物語なんて単なるお伽話だ!
……なーんて、思ってしまうくらい、この物語は美しい。
まあ、涙なくして見れない感動的な映画であることは間違いないんだけど、ちょっと作りが「韓流」過ぎ……。
久しぶりだな、こんなに”韓流な”演出の韓国映画。
上記した音楽の使い方もそう。何かが起こるたびにメローな旋律が涙腺を刺激。
監督は、この映画を”誰もが見られる映画”にすべきだと考えて、敢えてそんな演出を選んだのだろうか。
体制は違えど、北にも南にも同じ”雨”が降る。
この”雨”は効果的なこの作品のモチーフなのだが、韓流チックに何度も使い過ぎ(笑)。惜しいなー。
ボク的に最も印象的だったシーンは、幼いジュニが灼熱の砂漠をさまよっている際、鼻歌を口ずさんでしまう場面。モンゴル国境の広大な砂漠。人影はおろか動物も皆無。そんな砂漠を水も食事も一切なく、父に会うためにさまよい歩くジュニ。気を紛らわすためかジュニが口ずさんだのは、こんな地獄のような悲惨な状況を作った独裁者を讃える歌だ。
それしか、彼は歌えないのだ。
この映画は、日本公開までに2年かかった。
政治的な圧力があったと聞く。
そんな圧力に屈することなく、誰もが見るべき映画。
ボクらは”自由”の国に生きているのだから。





















