【ソラニン】(まだ見てないけど……)
「大健闘(興行収入が)」
まだ見てないんですが(今日行こうと思ったけど疲れ切っていた)、これは久々の朗報。
”大きな変動が少なかった今週のランキングの中で、唯一、初登場ランクインを果たしたのは、浅野いにお原作の人気コミックを宮崎あおい主演で映像化した映画『ソラニン』。全国108館で公開され、初日2日間の成績は動員が6万4,444人、興収が9,315万3,190円となった。客層は女性やカップルが中心に集まっている。宮崎がTHE BLUE HEARTSの「1001のバイオリン」を歌う「earth music&ecology」のCMが話題を集めているが、同じく宮崎の歌声が楽しめる作品として注目を集めていた本作。CMのナチュラルな歌声とはひと味違った魅力がある作品だと評判も高い。”(シネマトゥデイより)
100館レベルの非テレビ局・非東宝作品ではかなりの健闘(テレ朝はついてるけど後乗り)。
これくらいの予算規模の作品にお客さんがどんどん入るようにならないと、テレビ映画の跳梁跋扈は止まらない(これ1作でも止まんないけど)。
まあ別にボクはテレビ映画でもいいんです。面白ければ。
でもやっぱ、もうちょっと低予算映画にも頑張って欲しい。
10年くらい前までは、20~30代の都会の若者たちは、大手映画会社の作る邦画なんかかっこ悪くて見に行かなかった。
テレビ映画とか撮影所が作る映画なんか、オッサンや子供が見に行くもんだと思っていた。
だから小規模でも利益を上げる映画は結構あった。
雲行きが変わってきたのはセカチュー辺りからかな。
「ルーキーズ」なんか恥ずかしくて見れませんっていう人は、もうアラフォーになっちゃった。
いまでも小規模ながら頑張って映画作りをしている人たちは沢山いるのだろうけど、見に行くのはマニアばかり(涙)。
それにしても宮崎あおいって凄い。
5億は超えて欲しい。あわよくば7億くらい行って欲しい。
無理かな……。
「ソラニン」がちゃんと”映画”していることを祈ろう。
単に宮崎効果だけの数字だったら……落ち込むだろうな、オレ。
【息もできない】
「窒息寸前の人間たち」★★★★★(02/APR/2010@シネマライズ)
「チェイサー」「母なる証明」と傑作続出の韓国映画界から、また新たな傑作が誕生。
映画と呼べるシロモノが枯渇状態の日本と違い、どうして彼の国からはこうもポンポンと傑作が生まれるのか。
家電業界(Samsung)や原子力開発、冬季オリンピックの結果に留まらず、映画界ももはや太刀打ちできないほどの差が出来てしまった。
「チェイサー」や「母なる証明」を見て心底思ったことだが、彼らはとことん性悪説に立って”人間”を描く。
そこになんの迷いもない。
出てくるキャラクターたちは、みな息を吸うように人を殴る(笑)。
慈悲や惻隠といった美徳は欠片もなく、ただただ一方的で感情任せの暴力がそこにある。
頼まれても人の顔など殴れない弱虫としては、いやぁ凄まじい世界だ、といつも他人事のように呆れていた。
暴力の根拠となるものがほとんど説明されない上記2作と違い、本作は凄くわかりやすいトラウマが設定されているから、前半までは「あれ、意外と簡単な映画なのかも……」と訝っていたのだが、全くの杞憂に終わった。
幼少期、父親が妹を殺してしまう、という忌まわしい事件に巻き込まれた少年・サンフンは、お陰でスーパーバイオレンスな大人に成長した。意味もなく人を平気で殴る。職業は借金の取り立て業だが、度が過ぎて相手を殺してしまったこともある。
刑務所から出てきたばかりの父親をいまだに許せず、顔を合わせればボコボコにする。
そんなサンフンも、姉と甥っ子のことは気にかけていて、稼いだ金で援助してやっている。
一方、母親は借金の取り立て屋に殺され、お陰で父親はアルツハイマーになり、イケメンの弟から金をせびられながらも高校に通い、家計を助けている少女・ヨニ。
二人はひょんなことから出会って……。
超簡潔にあらすじを書いてみたが、それにしてもなんて悲惨な初期設定(笑)。
あの美しいキム・ヨナがいる国の話かよ、と思う。
でも、こんな映画ばっかなんだよな、実際(韓流ドラマは知らんが)。
みんながみんなこんな映画ばっか撮るってことは、やっぱ彼の国のリアルってこんなものなのだろうか。
この映画は、単に幼少期のトラウマから解放されていく男女の物語に留まらず、人間社会の本質を描き切っている。
つまり、弱さと恐怖心は暴力を生み、連鎖し、その論に立てば我々は、無意味で一方的な暴力からは生涯逃れることが出来ない、ということ。
けど我ら人類の歴史って、”暴力に対する対処法”をいかに作り上げていくか、っていう道のりだったと思う。
隣のオッサンが急に怒り出して我が家を滅茶苦茶にすることを、いかにルールとして社会の仕組みの中で制御していくかっていう。
我々はその仕組みを作り上げるために、何百年という時間が必要だったし、トラウマなんかでひょいっとその壁を乗り越えて欲しくない(汗)。
でも、やっぱ……人間って本質的に弱い生き物だから、ボクらは常に無意味な暴力に備えなければならない。だからこの映画を単に”トラウマを乗り越えるお話”として見ちゃいけないと思う。
そんな映画は日本にも山ほどある。
トラウマがあるから人は変わるのではなく(それも一因ではあるけど)、
弱くて臆病だから、人は間違えるんだ。
そして、そんな弱い存在であるからこそ、主人公とヒロインの恋が、美しいのだ。
ヤン・イクチュンという役者がヨンフン役を演じているが(監督も彼!)、これがまあ、超リアル。
辰吉と亀父とを世界のナベアツで割ったような顔をしているが、震えが起こるほどの名演。
ヒロインは”韓国の多部未華子(勝手に命名)”キム・コッピ。
二人ともボクは始めて見た。凄くよかった。
漢江のシーンの美しさに涙しない者はいないだろう。
しかし漢江は画面には映らない。
監督のこの映画に対する意気込みを感じる(予算がなくてライトが足りなかったのかも知れないけど)。
いやぁ、凄いぞ韓国。
【NINE】
「人生は祭りなんだよ!」★★★(29/MAR/2010@UnitedCinema)
早く家に帰えって酒でも飲みたかったけど、心を鬼にして劇場に向かった。目の保養のために。
アメリカからもイタリアからも酷評ばかりが聞こえてくるこの映画……
しかし予告編は恐ろしく完成度が高い。このキャストで外すなんてあり得えない、と自分に言い聞かせた。
恥ずかしながら寡聞にも、こんなミュージカルがあったなんて知らなかった。
疎いんだよなぁ、舞台に。
この映画がイタリアで撮影されていたとき、ボクもイタリアにいた。
Piazza Farnezeのカフェにいたら、近くでニコール・キッドマンが撮影している、と周囲がざわつきだした。
なんでもフェリーニの「8 1/2」の続編をハリウッドのクルーが来て作っているらしいとの噂。
まずその時点でちょっとした矛盾を感じてしまった。
「8 1/2」はフェリーニの自叙伝的映画だ。
ある特定の人物の自伝的映画の続編を他人が作るって、なんかよくわからん。
公開が近づき、この映画は「8 1/2」の続編なんかじゃなく、「8 1/2」というフェリーニの自叙伝的映画を元にしたミュージカル 「NINE」の映画化なんだな、ということがわかった。
なんか複雑。
「8 1/2」の主人公と同じ名前のグイドは、イタリアを代表する大監督。
しかし、9本目になる映画「イタリア」の撮影を前に、彼はドスランプに陥っている。
いわゆるDirector's Blockってヤツだ。シナリオが一行も書けないような状態だが、撮影の準備はどんどん進んでいく。そんな状況なのに、彼を取り巻く女たちが彼を更に悩ませ、彼は空想と郷愁に駆られ……というような話。
俳優たちを見ているだけで飽きないし、まあ音楽も映像も良い。
イタリアの切り取り方(画の)も「アマルフィ」と比べるべくもなく上手い。
ストーリーも「映画監督を志してしまった男の悲哀」を描いているという意味では、まあムリはない。
でも……
でもやっぱ、この映画って構造的に欠陥があると思う。
で、その欠陥ていうのは、やっぱ上記したように、ある特定の人物の自叙伝的映画を元に、赤の他人が何かを作ろうとすること自体が持つ矛盾というか、例えるなら「人類はクローン人間を作っていいのか」的な、根源的矛盾にぶち当たる(笑)。
一々そんな堅いこと言うなよ、と怒られそうだな……(汗)
まあいいや、怒られても。
ボクは「8 1/2」を愛してるから。
しかし堅いことを抜きにしたとしても、妻と愛人の描き方は、全然イタリアーナな感じじゃなかったな。
そこが一番残念。チマチマし過ぎ。泣く前に怒らないなんて……そんな清楚な女性、いるんでしょうか?
ファーギー扮するサラギーナは、正直迫力不足。顔も体型もインパクト不足。
しかもたぶん「8 1/2」じゃサラギーナはジプシーだろ?
ジプシーに「Be Italian」って諭されるってなんだかな……。曲は凄くよかったけど。
「Be Italian」と「Cinema Italiano」は必聴。この2曲を見るためだけでもこの映画は見る価値がある。ボクの今年のテーマソングにしよっと。
ペネロペはエロ過ぎ。とんでもない。ペネロペだけに1800円払っても構わない。
でも個人的にNO.1はケイト・ハドソン。超カワイイ。
ローリングタイトルバックのメイキングでちょっとだけスッピンが映るけど、あまりのかわいさにコーラをこぼしそうになった。
【ブルーノ】
「疲れているし、誤解を恐れず言ってしまおう。これは”アメリカ”を描いた傑作だ」
★★★★(28/MAR/2010@バルト9)
ずっと仕事とつまらない人間関係に悩まされてきて、映画も本も一向に進まず。
こんなヘタレな気分の時は、この映画を見るしかないだろう。
「ボラット」であまりにお下劣で不道徳なコメディーを作ったサシャ・バロン・コーエンの新作。
前回はカザフスタン国営テレビのテレビレポーター。
今回はオーストリアのゲイファッション評論家。
お下劣度も不道徳度も下品度も、「ボラット」と五十歩百歩。ストレートがゲイに変わっただけ。
ボラット同様、どうしてこんな厄介なところに、と思う人物に、ブルーノは体当たりしていく。
インタビューの相手は「アメリカンアイドル」の審査員とか、慈善活動家とか、スワッピング愛好家とか、ゲイを改心させるための運動をしている牧師とか、ハリソン・フォードとか、リバタリアンの元大統領候補とか……。
「ああ、世の中はなんてバカバカしいんだろう……」と思っている人はこの映画を見るといい。
自分もバカにならないと、そんなバカバカしい世の中を乗り切っていくのは難しいということが、この映画を見るとよくわかる。
例えば、ブルーノはアメリカのセレブの多くが養子を育てていることを知り、アフリカで黒人の赤ちゃんを養子にする(自分もセレブになりたいから)。
トークショーにその赤ちゃんと出演し、
ブルーノ「ボクはアフリカでこの子を交換してきた」
観客「なんと交換してきたのよ」
ブルーノ「iPod」
この発言に観客たちは大激怒する(ちなみにiPodはU2ヴァージョン)。
確かに、不謹慎極まりないこの発言だけど、iPodと交換することと、ある程度のお金で養子を受け入れることとどう違うのかというと正直よくわからない……。
息子にどんな名前をつけようと(ブルーノはアフリカらしい名前ということで”OJ”とつける……アホ過ぎ)、「養子」という行為の本質的な問題はそこにはない。
また、慈善事業のコンサルタントに相談に行く(アメリカンセレブはみな慈善事業をしているから)。
コンサルタント「何か興味のあるものがありますか?」
ブルーノ「うん、結構色んな問題に興味があるよ」
コンサルタント「そうね、地球温暖化とかどう? 結構問題だけど」
ブルーノ「いいね!」
コンサルタント「そうなの。もう逃れられない問題よ。東の、例えばアフリカとかに援助することは凄くいま受けているわ」
とまあ、こんな風な会話があるんだけど、無知でろくな受け答えも出来ないブルーノと、訳知り顔で上記のような台詞を偉そうに吐く金持ちアメリカ人と、どっちがマトモかというとよくわからなくなる……。
要は。
世の中で正しいと思われている事なんか、見方を変えればバカバカしい事でしかないってことがよくわかる。
本編が終わり、ローリングタイトルが上がってくると、ボクの隣に座っていたカップルはソッコー席を立った。ボクが大爆笑していても、クスリともしなかったしな……。
気持ちはわかる。こんな下品なものを80分も見せつけられたら気分も悪くなる。
でも、これ以上に下品でバカバカしいリアル人間関係に疲れ切っていたボクには、スーパーな”癒し”になった。
ボノ、スティング、エルトン・ジョンも生出演。
なんて度量が大きいんだろう。
こんなバカな映画でも、何となく”アメリカ”というものが見えてくるから不思議だ。
あー面白かった。
世界は広くて、怖い
あまり日本では大きく報道されていないけど、今年の1月19日にドバイで起きた暗殺事件の話。
1月19日、パレスチナのイスラム原理主義組織・ハマースの一員であるMahmoud al-Mabhouhが、ドバイのホテルで何者かに殺害された。al-Mabhouhは、イランなどの国から武器の密輸をしていた男だ。
al-Mabhouhは19日10:05発のエミレーツ航空でシリアのダマスカスからドバイに入国した。
彼はイスラエルの諜報機関モサドから指名手配されていたから、いつもならボディーガードを従えていた。
ただ、たまたまその時はボディーガードのエアチケットが取れず、1人だけ先にドバイに入った。
プラス、彼は今回の出張に限って、2つのケアレスミスを犯していた。一つはホテルをオンライン予約したこと。もう一つはガザにいる妻に、そのホテル名を電話で告げてしまったこと。
3つの偶然が重なったことで、彼はその10数時間後、ドバイのホテルで遺体で見つかることになる。
遺体発見から10日ほどは「自然死」と考えていたドバイ警察だったが、al-Mabhouhがドバイに入国する7~14時間前に、少なくとも11名の暗殺集団がヨーロッパ各地から偽造パスポートでドバイに入国していた、と発表した。
そしてその偽造パスポート野郎たちはみな、al-Mabhouhの宿泊したホテルの監視カメラに写っていた(暗殺集団の人数に関しては色んな意見あり)。
ドバイ警察は、この事件をイスラエルの諜報機関モサドの犯行と断定した。
実行犯グループは2人ずつペアを組み、大きく4つのグループに別れていた。
実行犯は互いに連絡は取り合わず、みなオーストリアの本部とSMSでやりとりをしていた。
al-Mabhouhのドバイ入国後の足取りは、15:15入国、一旦ホテルにチェックインし、バルコニーのない、閉め切り窓の部屋を取る。16時過ぎに一旦外出し、部屋に帰ったのが20:24分。21時にかかってきた妻の電話に出なかったことから、このおよそ30分の間に殺害されたものと思われる。
それにしてもなんという早業だろう。
彼が一人でドバイに入国する、という情報が入ってから、瞬く間にヨーロッパ中から暗殺者たちがドバイに集結し、たった数時間で暗殺を終え、そして瞬く間に全員出国してしまった。
当初29人いるといわれていた容疑者の内訳は、イギリス12人、アイルランド6人、フランス4人、ドイツ1人、オーストラリア4人、そして2人のパレスチナ人(パレスチナ人は現地ロジスティックスを担当させられていた)。彼らのほとんどは偽造パスポートで入国している。
al-Mabhouhが外出していた3~4時間の間に、実行犯グループは彼の部屋の暗号キーのナンバーを変え、部屋に侵入していた。自然死だと思われていたが、電気ショック(強烈な筋弛緩剤という説も)を受け、枕に顔を押しつけられて窒息死をさせられていた。
もうほとんど職人技と言っていい。
「こんな映画みたいなことが本当に起こるのか?」と驚き、彼女とSkypeで大いに盛り上がった(彼女は事件自体にはあんまり驚いていなかったけど)。
で、今朝起きたら彼女が続報を教えてくれた。これがまた凄い。
イギリス政府は、パスポート偽造に関与した疑いで、イスラエル外交官を免職させたらしい。
この報道が正しければ、イスラエルは公の立場にある外交官すらもパスポート偽造に関与していたということになる……。
日本の密約騒ぎがお子様ランチに思えてしまうこの世界……怖すぎる。
もう一つ日本人にとっては怖いことがある。
al-Mabhouhの仕事は上記したように武器の密輸。
今回の旅行でドバイに宿泊したのはトランジットのため(1日だけ)で、彼の本来の目的地は別の国だった。
それは、今年万博が開かれる我らの隣国……。
だから日本では大々的に報道しないのか?……と勘ぐってみると更に恐怖を味わえる。
ミュンヘンはいまだ続いている。
















