TCS Command Rules supplementary edition(増補版) (5)

 

項目毎の検討(つづき)
 

ルールとしてまとめるのは、項目毎の検討が終わったらにしますので、とりあえず、参考資料を引用しながら、ルール化する上でのバックグラウンドや合理性を確認できるように整理するための続きです。

 

 

参考資料:

Field Manual (FM) 1-02 "OPERATIONALTERMS AND GRAPHICS"
 (HEADQUARTERS DEPARTMENT OF THE ARMY), Sep. 2004

 

Field Manual (FM) 3-90 "TACTICS" 

 (HEADQUARTERS DEPARTMENT OF THE ARMY), Jul. 2001

 

 

Supplemental(増補対象項目) ⑫

  • Op Sheet上では、LD と FL を使用 します。特に攻撃命令では、全ての部隊がLDを通過し、その後、それぞれの部隊のPLに到達するまで、いずれの部隊も攻撃命令を進めることはできません。

まずは、LDとPLについて、です。前出「Supplemental(増補対象項目) ③」で出てきた命令の指定時刻を記述するときにも使われます。基本的に、LD(Line of Departure)は、PL(Phase Line)の一つになります。

 

まずは、PL(Phase Line)についてです。

FM1-02より、

phase line – 

(DOD) A line utilized for control and coordination of military operations, usually an easily identified feature in the operational area. 

(NATO) A line utilized for control and coordination of military operations, usually a terrain feature extending across the zone of action. 

Also called PL. See FM 3-90. (See page 7-15 for symbol.) 

フェーズライン – 

(DOD) 軍事作戦の制御と調整に利用されるライン。通常は作戦地域で容易に識別できる機能です。 

(NATO) 軍事作戦の制御と調整に利用される線で、通常は行動範囲全体に広がる地形特徴です。 

PLとも呼ばれます。 FM 3-90 を参照してください。 (記号については7-15ページを参照してください。)

 

FM3-90より、

PHASE LINE
2-116. A phase line (PL) is a line utilized for control and coordination of military operations, usually a terrain feature extending across the operational area [JP 1-02 uses zone of action] (JP 1-02). (See Figure 2-27.) 

 

A commander establishes PLs to control the maneuver of his units. 

 

Phase lines are not boundaries unless designated as such and do not establish any specific responsibilities between units, unless the operations order so specifies. 

 

When possible, the commander places them along easily recognizable terrain features—such as roads, railroad tracks, rivers, and ridgelines—to ensure easy identification. 

 

As with boundaries, this is less important if all units are equipped with precision navigation devices. 

 

Some PLs have additional designations for specific purposes, such as a LD or a probable line of deployment (PLD). 

Chapter 5 discusses these specific purposes.

 

フェーズライン

2-116. フェーズライン(PL)とは、軍事作戦の統制と調整のために利用される線であり、通常、作戦区域を横切って延びる地形の特徴である。(図 2-27 参照)。

指揮官は自部隊の作戦を統制するために PL を設定する。

フェーズラインは、作戦命令で指定されていない限り、境界線ではなく、部隊間の特定の責任を定めるものでもない。

可能であれば、指揮官は容易に識別できるように、道路、線路、河川、尾根などの地形に沿ってフェーズラインを配置する。

境界線と同様、すべてのユニットが精密ナビゲーション装置を装備していれば、この点はさほど重要ではない。

PL の中には、LD や PLD(Probable Line of Deployment)のような、特定の目的のための追加指定があるものもある。

第5章では、これらの特定の目的について説明する。

 

PLとは、この様に指揮下の部隊を統制するために設けられたマップ上のラインであり、それぞれの目的によって、、別名がつけられています。通常は、戦闘作戦領域全体に渡って引かれます。

上の参照図(2-27)では、図の上下端にある師団の合計4本のLateral Boundaryを横切るように設けられています。

PL => JOHN(LD/LC), RON(PL), ROBERT(PL), BASIL(LOA)

 

次に、PLの一種であるLD(LoD ; Line of Departure)についてです。

 

[FM1-02]

line of departure – 

(DOD, NATO) 

1. In land warfare, a line designated to coordinate the departure of attack elements. 

2. In amphibious warfare, a suitably marked offshore coordinating line to assist assault craft to land on designated beaches at scheduled times. 

 

(Army) 

A phase line crossed at a prescribed time by troops initiating an offensive operation. 

 

Also called LD. 

See also "line of contact"; "line of departure is line of contact."

(FM 3-90) (See page 7-31 for symbol.) 

Line of Departure

(国防総省、NATO)
1. 陸戦において、攻撃部隊の出発を調整するために指定された戦線。
2. 水陸両用戦において、強襲艇が予定時刻に指定された海岸に着陸できるようにするために、適切にマークされた沖合調整線。
(陸軍)
攻撃作戦を開始する軍隊が所定の時間に通過するフェーズライン。LDとも言います。
「接触線」 、「出発ライン=連絡ライン」 も参照。

(FM 3-90) (記号については 7-31 ページを参照してください。)

 

 

つまり、部隊が攻撃に出向く際に通過する出発点ですが、敵と接触している前線から出発する場合と、敵接触の無い場所からの出発で表現が異なるようです。

line of contact – A general trace delineating the locations where friendly and enemy forces are engaged. [Note: the Marine Corps definition replaces “friendly and enemy forces” with “two opposing forces.”] Also called LC. 

(See page 7-14 for symbol.) 

Line of contact

味方軍と敵軍が交戦している場所を示す一般的な痕跡。
[注: 海兵隊の定義では、「友軍と敵軍」を「2 つの対立する軍」に置き換えています。
LCとも呼ばれます。
(記号については 7-14 ページを参照してください。)

 

そして、接敵中のラインを出発点とする場合には、

line of departure is line of contact – 

The designation of forward friendly positions as the line of departure when opposing forces are in contact. Also called LD/LC. 

See also line of contact; line of departure. (FM 3-90) (See page 7-31 for symbol.) 

敵対勢力が接触した場合の出発線としての前線味方陣地を指定すること。
LD/LCとも呼ばれます。
接触線も参照。 出発ライン。 (FM 3-90) (記号については 7-31 ページを参照してください。)

※記号については、前出Table 7-10を参照。

 

ゲームルール的には、

1) LDを始めとしたPLsを使ってOp Sheetを作成し、作戦全体の表現を

  正確(豊か)にし、下位指揮官に精度良く計画の詳細や意図を伝えること。

2) 特にAttack Type Op Sheetでは、

 ① 攻撃に参加する全部隊が通過するLDを設定する。

 ② 攻撃に参加するそれぞれの部隊が側面を開けないために維持する

   前進ラインとして、必要な場所にPLsを設定する。

   (Op Sheetをまたぐ場合は記号で識別できるようにする)

 

下記の例は、包囲攻撃をする際のPLsの例で、部隊RODONEYが敵に圧力をかけるラインに沿って、部隊HOODが回り込んでいく動きを統制している。

 

 ③ 攻撃に参加する部隊がそれぞれのPLsを超えない限り、いかなる部隊も

   それ以上の前進はできない。

3) 機動防御を行う場合も同様。

 

各TCSのタイトルでは、限られたマップ上での作戦をOp Sheetに記述することになるため、特に攻撃命令については、少し、詳細を記述するゲーム的な工夫が必要と思われます。

その際に、以下の"Probable Line of Deployment (PLD)"をゲームルール的に活用したいと考えています。

 

[FM1-02]

probable line of deployment – 

(Army) A phase line that a commander designates as the location where he intends to completely deploy his unit into assault formation before he begins the assault. (FM 3-90) 

(Marine Corps) An easily recognized line selected on the ground where attacking units deploy in line formation prior to beginning a night attack. 

Also called PLD. (See page 7-31 for symbol.) 

展開予定線 - 

(陸軍)司令官が突撃を開始する前に、部隊を完全に突撃隊形に展開する場所として指定するフェイズライン。(FM 3-90) 

(海兵隊)夜間攻撃を開始する前に、攻撃ユニットが隊列を組んで展開する地上に選択された容易に認識できる線。

PLDとも呼ばれる。(記号は 7-31 ページ参照)。

 

 

Supplemental(増補対象項目) ⑬

  • 夜間のすペての移動 (Preliminary instruction の実行による移動などを含む)には、"Direction of Advance" (つまり、具体的に指定され たルート)を使用する必要があります。また、SYRまたはその他の原因により、ルートから外れたユニットは道に迷ったとみなされ、夜明けまで移動できなくなります。

まず、記事に出てくる"Direction of Advance(i.e. specified routes)"という具体的な用語は、トップで紹介した2つの参考資料では出てきません。ただし、記事の意図は夜間における移動の困難さから、予め指示される非常に具体的なルートになります。

 

これは、"DIRECTION OF ATTACK"という用語と同等のようですので、定義を引用(抜粋)します。

DIRECTION OF ATTACK[FM3-90]
3-17. The  direction of attack is a specific direction or assigned route a force uses and does not deviate from when attacking. 
It is a restrictive control measure. 
The commander’s use of a direction of attack maximizes his control over the movement of his unit, and he often uses it during night attacks, infiltrations, and when attacking through smoke. 

3-17. ”Direction of Attack”とは、部隊が攻撃する際に使用し、逸脱しない特定の方向または割り当てられた経路のことである。これは、非常に制限的な統制手段である。
指揮官が”Direction of Attack”を使用することで、部隊の動きを最大限に統制することができ、夜間攻撃や潜入、煙幕の中を攻撃する際によく使用される。

 

補足すると、"Direction of Attack"のスタートは、"Point of Departure(点)"で示され、ルートは一本線で示される。また、容易に認識可能な地形に設置された目標基準点の明示によって、限られた視界の状態でも、迅速な射撃転換と機動部隊の方向転換を可能にする。

 

<描画サンプル>

 ”JOAN” => ”DIRECTION OF ATTACK”

 ”JAN”  => ”AXIS OF ADVANCE”

 

 

 

TCSでは、夜明け、昼間、夕暮れ、黄昏、夜間が定義されています。

夜間でも昼間でも無い、夜明け、夕暮れ、黄昏は、各個別ゲームのターン記録トラックに示されているように、最大視認性は制限されています。しかしながら、2ヘクスという夜間のVisibilityと比較すれば、移動行動に大きな支障をきたすものではないと考えられます。

 

BoadGameGeekの"Goose Green" Forumでは、夜間とそれ以外と定義し、Op Sheet上では、夜間の間に移動するPLsを設けて、そこまでのルートをDirection of Attack/Advanceとし、それ以降をAxis of Advanceとするプレイが紹介されていて、作戦的にも夜間の前進限界を統制することは妥当という意見がまとめられています。

 

ルールデザイン的には、

1) Op Sheet上での全ての移動指示は、ルートの中央ヘクスを指定して、

  ルートが特定されるように記述する。

2) 指定されたヘクスを中心に、「Supplemental ② : Axis of Advance」

  規定されたルート幅、すなわち、中隊は2~3 ヘクス、大隊は、5~8へクスの

  幅帯を夜間以外に使用するAxis of Advanceとする。

3) 夜間における移動は、Op Sheet上で指定したヘクスを沿ったルートを

  Direction of Attack/Advanceとする。

 

HOW TO PLAYとしとしては、

 ・ Op Sheet上で夜間ターンの前進統制を行いたい場合には、

  PLs(Phase Lines)を設けて、そこに時刻を設定するなどの対応を行う。

 

以上で、増補対象項目13件について、個別の検討を終えました。

いよいよ、ルールとしての組み立てです。

これまでの検討にも出てきた通り、上級指揮官が自身が計画している作戦を上手に(下位指揮官に正確に伝えるために)OPシートに記述するための項目と、下位指揮官が規定(ルール)として守らなければならない項目がありますので、それをうまく記述しないと、「守らなくても良いルール」や「守ろうとしても、どうやって守ったら良いか分からないルール」が混じってしまいます。

そのあたりに注意していきたいと思います。

 

つづく