TCS Command Rules supplementary edition(増補版) (1)

 

もう一度、注意点
 

最初のころの書き込みで述べた通り、TCS Command Rulesは、上級組織の指揮官としての立場(連隊長や旅団長、師団長?!)をプレイするシステムであり、ゲーム規模として紹介される中隊・大隊は、現場組織の指揮官としての立場をプレイするシステムです。

 

したがって、直感的に誤解が起きてしまうと思うのですが、TCS Command Rulesは、いわゆる「プロット制のゲーム」システムではありません。

(TCS Rules v4.02 6.2 Unit Actions Unaffectedby Commandにも、私の意図とは異なりますが、明確に記載されています)

 

一般的な、プロット制のゲームの場合、プロットする(プロット内容を考える)立場(A)のプレイヤーとプロットを実行する(プレイでプロット通りに部隊ユニットを動かす)立場(B)のプレイヤーが同じですが、TCS Command Rulesでは、(A)と(B)が異なり、一人のプレイヤーが(A)と(B)の二役を演じることになります。

 

例:同時制を再現するためにプロットが行われる空戦ゲームなどは、プロットを計画するのは動きを考えるパイロットの立場のプレイヤーであり、プロット通りを実行(飛行)するのもそれをプロットしたパイロットの立梅のプレイヤー自身です。

 

例:同様に同時性を再現するため、敵が見えるまで移動プロットを外れてはいけないなどのシステムもCommand Rulesとの違いを示しています。(Command Rulesでは、当該部隊にとって敵が視認できなくても、上級指揮官が敵の存在を認識して、部隊に命令が出されて、それが伝達され実行されれば、当該部隊は見えていない敵の裏をかくこともできるのです)

 

 

TCS Command Rulesに含まれる2つのシステム

上述のとおり、TCS Command Rulesには、「上級指揮官用ルール」と「下位指揮官用ルール」の二面が存在します。この2つのルールシステムの取り扱いの相違が、システムの理解について、しばしば混乱を生じる原因になります。

 

上級指揮官の立場では、自分の複数の配下の部隊にそれぞれ作戦シート(Op Sheet)を作成して、現場の下位指揮官に手渡し、実行させることで、上級指揮官が指揮する組織としての作戦成功を目指します。

 

下位指揮官の立場では、(他部隊の状況や全体の戦況などは分からない)限られた情報の中で、与えられた自部隊の作戦シート(Op Sheet)が唯一の行動指針であり、これを正確に読み解いて、自部隊の作戦目標を成功に導く事を目指します。(当然ながら、生き残りも目指すはずです)

 

 

上級指揮官用ルール

上級指揮官の立場をプレイするルールは、まさに Op Sheetを描くルール です。

言い換えれば、「Standard NATO symbol terminologyに基づき、作戦をOp Sheetに記述する作業そのもの」です。

なので、下位指揮官(の立場のプレイヤー)に命令の内容が正確に伝われば、ルールとしては何も問題ありません。ですから、[TCS Rules v4.02 6.5a The Graphic]の通り、

Players can use custom-designed symbols as long as both players agree to their meaning. The graphic alone should provide much of the information needed for another person to understand the Op Sheet. 

両プレイヤーがその意味に同意する限り、プレイヤーはカスタムデザインのシンボルを使用できます。 グラフィックだけでも、対戦相手がOp Sheetを理解するために必要十分な情報が提供されねばなりません。

これがキーなのですが、自身の考えるプレイを実現してゲームに勝利することに固守し、ルールの穴を見つけて活用しようとする”ルール弁護士”としては、「お互いが理解できる様なOp Sheetを描くのがルールって、どういうこと?!」という、ある意味一義的でないルールに理解が追いつきません。(多分)

 

例えば、前出の”OPERATIONALTERMS ANDGRAPHICS (HEADQUARTERS DEPARTMENT OF THE ARMY)”に記載された”direction of attack(幅の無い矢印1本で示されるルート)”の定義では、

 

direction of attack – (DOD) A specific direction or route that the main attack or center of mass of the unit will follow. The unit is restricted, required to attack as indicated, and is not normally allowed to bypass the enemy. The direction of attack is used primarily in counterattacks or to ensure that supporting attacks make maximal contribution to the main attack. (Army) A specific direction or assigned route a force uses and does not deviate from when attacking. See also axis of advance. (FM 3-90) (See page 7-29 for symbol.)

 

sample Table 7-9

 

sample Table 7-10

 

ユニットの主な攻撃または重心がたどる特定の方向またはルート。 ユニットは制限されており、指示に従って攻撃する必要があり、通常は敵を迂回することは許可されていません。 攻撃の方向は主に反撃で使用されるか、サポート攻撃が主攻撃に最大限の貢献をするようにするために使用されます。

(陸軍) 軍隊が攻撃する際に使用し、逸脱しない特定の方向または割り当てられたルート。 

と、詳しく記述されていて、大変多くの派生グラフィックが存在します。

つまり、これらの全てが「TCSの上級指揮官用ルール」になるわけです。実際の上級指揮官と下位指揮官は、これを読み解いて現場で実行するためのトレーニングを受けるわけです。

 

そこで、ユニット規模が決められたゲームのタイトルとして設定された戦況下では、想定される上級指揮官からの命令内容が非常に限定されるであろうという観点から、限定されたGraphic Symbolsをゲームルールとして抜き出して、上述のような定義付けとすることで、「TCS Command Rules supplementary edition(増補版) 」を構築することにします。

 

下位指揮官ルール

下位指揮官の立場をプレイするルールは、"TCS Rules v4.02  6.0 Command"以外の全てのルールと”6.3 Unassigned Units"、その他・・・・(整理して後に記載します)です。

”6.0 Command"以外のルールは、若干システム的には古くなりましたが、後に”Command Rules"を導入する事を考えれば、戦術級ゲームとしては簡単で十分に洗練されたものだと、個人的には感じています。(ゲームは、各々描こうとしている異なる題材を持ちますが、このシリーズが描こうとしている題材は、現時点では明確にCommand Rulesです)

 

補完すべきルール

「TCS Command Rules supplementary edition(増補版) 」で構築すべきルールは、当然ですが、上述2つの立場のルールをつなぐ項目です。先に述べた通り、ゲームタイトルとしてデザインされる制限から、表現すべき戦況は限定的であり、上級指揮官が出せる命令も下位指揮官が取りうる戦術も限られています。

それを前提にしてまとめるため、おそらくゲームタイトル毎に選択して採用されることを念頭に置く必要があると感じています。

 

また、特にプレイに習熟してくると、使用される(プレイヤーが使用したくなる)であろうGraphic Symbolsが多岐に渡ることが想定されますが、それらは、各部隊の行動の意図(主軸、支援、フェイントなど)を上級指揮官が下位指揮官に知らしめるための言語表現であり、一人二役を演じるゲームプレイでは、上級指揮官の立場をプレイする(作戦を計画する)楽しみとしての意味のみ存在することになります。つまり、好きなだけ使ってください。

ただし、それらの知識に詳しくない対戦相手には、「増補版ルール」で規定されているGraphic Symbols以外で、自分の書いたGraphic Symbolsについての説明をしておきましょう。うんちくトーカーとして嫌がられない程度が無難です。そして、実際にはOp Sheetは、意図を悟られない様に、プレイ終了まで対戦相手には公表しないのが通常かもしれませんが。