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「どうせ順番待ちの幸せ」
そんな皮肉たっぷりのフレーズに貫かれた。
かと言って反発するわけでもないし、アイデンティティが無いわけでもない。
『Bedford Hedgehog』、Enfants初フルアルバムが完成した。
『Q.』『E.』『D.』という3枚のEPは彼らの足跡。
その名の通り、存在証明を告げる曲達。
今回加えられた新曲達のおかげでさらに幅を思い知らされる。
このバンドの主人公は、とても純粋だ。
世界に絶望していても、その絶望を受け入れる。
この平凡な世界に映る美しさを拾いあげ、無意識に聴者の観点を変えてくれる。
時に吠え、時にタオルで包むような松本大の歌。
僕らは子供のように、心が開かれる。
開演前のSEは流れているものの、子供達の声や雷鳴、雨音にかき消される。
そして何よりも通常のライブと異なる、360度オーディエンスに囲まれたセンターステージ。
メンバーはお互い向かい合うことになる。
このワクワクする異質な感覚が高揚感を上げる。
スモークに当てられた『惑星』から始まり、言葉を落としていくのではなく打ち上げていくように叫ぶ。
間髪入れず始まった『HYS』では天井の蛍光灯が点滅。
さっきまでの宇宙のような広域空間から現実に切り替わる。
照明の使い方がとても美しくて感情と同期した。
続く『デッドエンド』でハンドマイクを片手にステージを歩き回る。
伺えたのは実験的なステージの感触を確かめるような表情。
『ひとりにして』『R.I.P.』『Autopilot』『Good News』など、これまでのEPを噛み締めつつ新入りの曲を混ぜ込むことで
さらなるEnfantsというバンドの在り方を示す。
『Dying Star』のダークな世界から『Punk Head』でオーディエンスを煽って拳を振り上げていく。
『Play』からの『Drive Living Dead』は爽快で、折り返しであることを宣言してさらにお互い加速する。
松本くんは、他のメンバーが傷つかないようにソロとしてこのプロジェクトを始めたと話す。
3枚のEPを出して、その結果の答え合わせをした。
3人からは前向きな言葉が返ってきたと言う。
数年前に僕が聞いた「自分のために始めた音楽」という言葉の意味をようやくここで理解できた。
このアルバムは、松本大そのものである。
彼の中を覗くことで、自分と重なることも事実。
何万、何億とある音楽の中で出会えたこの世界も宇宙で。
何かしら求めたいから、掴みたいから、知らぬ間に僕は『星の下』で手を伸ばして泣いていた。
4つのミラーボールが生み出す広い世界があまりにも綺麗だった。
何かを伝えたいのに伝えられない。
最近はSNSも消極的で。
そもそもそれを伝えてどうしたい?とかね。
意義が見当たらないし、メリットデメリットもない。
他人を見ないことに落ち着いた最近の僕。
それでもぶつけたい何かしらを、毎朝、毎晩、大好きな音楽に溶かしている。
大切な人たちのことを考えながら。
"できるだけ、生きてみるけど"
end