世界バレエフェスティバル ガラ・パフォーマンス Part2@東京文化会館 | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

→Part1からの続きです。

 

「ブレルとバルバラ」振付 モーリス・ベジャール

ジル・ロマン/小林十市

 何度も言いますが(あれ? 初めて言うかな?)、ガラではジルによる1回だけのベジャール版「アダージェット」を静かに期待していたんですよね。でも十市さんもガラに出ると知って、そうか……それはないのか……と。観たかったよ😔

 気を取り直して「ブレルとバルバラ」です。抜粋上演だとブレル「行かないで」からバルバラ「いつ帰ってくるの?」の部分とか、バルバラ「黒い鷲」部分がよく踊られるんだけど、今回は十市さんが打ち掛けをふわっと羽織ってたから、バルバラ「孤独」の曲の部分だと分かった。そのあとジルのソロでブレル「エレガンスをもって」でした。このソロが良くってさー😭 やっぱりジルはベジャールダンサーだなとしみじみ思いました。ベジャールの振付どころか、ベジャールの精神性がジルの血肉に、細胞の一部になっている。音楽が始まり、腕と首が動いたところからもう完全にベジャールの世界に体を預けたジルで、そのあとのダンスは体が勝手に動いているというような風だった。ジルの身体のキレはまだ健在で「アダージェット」踊れたんじゃないか?(と、まだしつこく言う😅)。ところでこの作品では、左右のパネルに歌の訳詞を映すべきだと思います。

 

「ジゼル」振付 ジャン・コラーリ/ジュール・ペロー

ドロテ・ジルベール/ユーゴ・マルシャン

 このあいだパリオペで踊ったばかりで手応えがあったんで今回披露したのかな。ドロテのジゼルが思いのほか良かったです✨ 最初から “悲劇を背負ったウィリ” になりきっていた。お墓の十字架前に立ったところから、アルブレヒトをそこに押し留め、上手にいるであろうミルタに懇願して踊り始めるところ、しっかりと “愛する人を守ろう” と献身的な愛を見せるウィリだった。ダンスには浮遊感が十分にあり、感情を抑えた表情ながら、アルブレヒトを包みこむような身体の動きもよかったです。ユーゴのアルブレヒトも後悔に苛まれた貴公子然としていて、物腰は優雅、ジゼルをサポートする腕は柔らかく、そこに相手を思う優しさが見えた。ソロで踊るところでのジャンプも美しい。彼らでの「ジゼル」観たいなあ。

 

「カジミールの色」振付 マウロ・ビゴンゼッティ

エリサ・バデネス/フリーデマン・フォーゲル
 この2人が踊るコンテ作品を観られてよかったです。以前に何かのガラ公演でこれを観た時はあまりピンとこなくて、プログラムの紹介記事にあるように、どこが「画家カジミール・マレーヴィチに触発された作品」なのかも未だによく分からないのだけど、今回あらためて観て、作品として面白いなと思いました。ユニークな動きがあるし、スローな動きの中に緊張感が見えたりするし、幾何学的なラインの綺麗さも感じました。

「レ・ブルジョワ」振付 ベン・ファン・コーウェンベルグ

ダニール・シムキン

 これを最初に観たのはバリシニコフのときでした。すっごく良くって一瞬で作品を好きになったのです。酒タバコ女に溺れ、今はちょっとボロッとした、かつての色男が、中年になり自分の人生を振り返っての自嘲気味なモノローグ……何とも言えないほろ苦さがあった。その後に観たのがシムキンで、今やすっかり彼の持ち作品になっているみたいですね。年齢を重ねたシムキンのこれ、味わい深いものがありました。まだやさぐれ感とか背中で見せる哀愁とかは薄いけど、とにかく表情がいいし、ダンスにも、溜めるところやキレを見せるところのメリハリがあり、ダンサーであり役者でもあるような、身体で語っている感じがとっても良かったです。

「シンデレラ」振付 フレデリック・アシュトン

サラ・ラム/ウィリアム・ブレイスウェル

 やはりロイヤルはアシュトン作品を踊らないわけにはいかないということでしょうかね。夢の世界で踊っているような2人でした。サラは透明感があり、丁寧なステップ、キリッとしたライン、サポートされている時の可憐で少し儚げな感じがとてもいい。ウィリアムはプリンス感は少し弱いのだけど、ナイーヴと言ってもいいほどの繊細さがあり、そこにシンデレラをいたわり愛する優しさが現れていた。実は「シンデレラ」というバレエ作品自体(誰の振付かは関係なく)あまり好きじゃないんで、どうしてもあっさりめの感想になっちゃう🙇‍♀️

「作品100~モーリスのために」振付 ジョン・ノイマイヤー

ロベルト・ボッレ/アレクサンドル・リアブコ

 最初にガラ演目が発表になったとき、ボッレさまはマリファント振付「Two」を踊ることになっていて、とってもカッコいい作品なので、すっご~く楽しみにしてたのに、すぐに、リアブコとのコレに変わってしまった。どうして?😖 納得できなかったです。リアブコはアッツォーニともう1演目踊るのだから、ボッレさまにも「Two」も踊ってほしかったです。公演当日までそれを期待していましたよ(未練がましく言う💦)。
 ところがですね、これがまた素晴らしくて、あっという間に溜飲が下がりました、泣きました😭 ファニーガラが強烈すぎて本編の感想が吹っ飛びそうですが、個人的に最も良かったのはこれです。リアブコとボッレさま2人にしか出せない世界が広がりノイマイヤーとベジャールとも重なって、深く感動した。ボッレさまがリードするように前に進み、その横で戯れるように踊るリアブコ。リアブコが後ろからボッレさまの肩に手をかけると、振り返ってその手を取りフッと笑顔を見せるボッレさま、表情が輝くリアブコ。信頼で結ばれた師弟、友情、仄かな憧憬……。どちらかが先に死んでも虹の架け橋によって永遠に繋がる絆。そんな美しいメッセージと音楽とダンスと2人のダンサーの美しい身体を堪能しました。

 

 今回はAプロ、Bプロ、ガラ本編を通して「もう日本で踊る姿は観られないだろう」と思われるダンサーによるパフォーマンスが多く、その意味で、個人的には貴重なフェスでした。

 

Part3(ファニーガラ)に続きます→

 

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ バレエへ
にほんブログ村

バレエランキング
バレエランキング

明日もシアター日和 - にほんブログ村