世界バレエフェスティバル ガラ・パフォーマンス Part1@東京文化会館 | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

 3年に1度のお祭りも、とうとう最終日になってしまいました。微かな喪失感、寂寥感に襲われつつ、思い出しながら記録しておきます。まず本編のプログラムから。ところでダンサーさんたちは、AプロとBプロでそれぞれ複数回踊る演目とガラで1回だけ踊る演目を決めるわけですが、その3つの演目を皆さんどういう観点で、これは複数回用、これはガラで、と決め分けるのだろうと思ったり。

 

「眠れる森の美女」振付 マリウス・プティパ

マリアネラ・ヌニュス/ワディム・ムンタギロフ

 トップバッターから凄いの持ってきましたねーって感じで、いきなりガラ気分揚げ揚げです。素晴らしかったー🎊 Aプロ「ドン・キホーテ」、Bプロ「海賊」、そして「ガラ」でも古典で攻めてきた今回の2人。何か思うところがあったのでしょうか。そしてやはり、2人の(どちらかと言えばワディムの)持ち味からしてこの「眠り」が一番良かった。2人の身体や表情やダンスからエレガンスがこぼれ落ち、まさにロイヤルファミリー同士の結婚披露宴のダンスとしての、気品あるパフォーマンスでした。ステップも身体やアームスの動きも、そして顔・首の角度も、きっちり正確に “あるべきところ” にありましたね。

 ワデム完璧でした。ふわっとしたプリエに気品があり、ス…ッと伸び上がるトゥールアンレールが美しい。ずいぶん前のリハ映像か何かでモニカ・メイスン氏が「(眠れる森の美女などの)王子は脚を60度以上に上げてほしくない、品性がなくなるから」とおっしゃっていたのを思い出します。テクニックをつい見せたくなる、そこをグッと抑えるのがロイヤル風なんですね。ネラさまもキラッキラの姫でした。シュッシュッと動くポワントのさばきにまで気持ちがこもり、上体を伸ばして上方を向いた姿に姫としての気高さがあった。はぁ~この多幸感😊


「コンセルト・アン・レ」振付 モーリス・ベジャール

大橋真理/アレッサンドロ・カヴァッロ

 ベジャール独特のステップやラインが垣間見えるPDDですが、ベジャールらしさといえる個性はあまり強くなく、メッセージ性も特にない、音楽のリズムや流れに乗って、2人で自由に遊んでいるような感じ。抽象的だけどとても楽しげ且つ綺麗な作品でした。ときどき見せるベジャール独特の動きがアクセントに。しかし正直なところ、もっとベジャールらしい作品があるのに、どうしてこれを披露しようと思ったのかイマイチ解せないです。

 

「ロミオとジュリエット」振付 ケネス・マクミラン

ヤスミン・ナグディ/リース・クラーク

 Bプロでのサラ&ウィリアムと同じバルコニーのPDDっていうのがなー😓 踊りたいのは分かるけど。で、もちろん良かったです。サラ&ウィリーにはフレッシュさ、初めて恋を知った2人の驚きや戸惑いやときめきがストレートに伝わってきた。こちらのヤスミン&リースのはもう少し深い抒情性を感じました。ヤスミンのジュリエットは愛らしさと同時に華やかさがあり、積極的に人生を切り開いていく少女。軽やかなステップ、リフトされたときの形の美しさ、喜びに満ちた表情とロミオを真剣に好きだという時の真っ直ぐ見つめる目とか、とても丁寧な表現でした。リースのロミオは絵に描いたような好青年というか、無鉄砲さや子供っぽささは薄く、正統派の青年の初恋に見えた。ダンスには力強さがありサポートの安定感は抜群、リフトがダイナミックです(マクミラン版ではこれ大事かも)。

 

「アダージェット」振付 ジョン・ノイマイヤー
シルヴィア・アッツォーニ/アレクサンドル・リアブコ

 じんわりと暖かさが心に染み渡るような、身体の奥から感動が湧き上がってくるような、そんな作品でした✨ 音楽(マーラー)のせいもあると思うけど、その音楽からイメージされる情緒的言葉を、2人が身体で丁寧に表現しているというダンス。そうやって2人で踊ることで、そこに何か有機的なもの、2人が歩いてきた人生を語るストーリーのようなものが生まれていくのを見たような気持ちにもなりました。とっても漠然とした書き方ですが、そういう抽象的な感覚を得たわけですよ〜。

 

「シルヴィア」振付 リセット・ダルソンヴァル
オニール八菜/ジェルマン・ルーヴェ

 私の中ではこの2人のパフォーマンス、Aプロ「ル・パルク」も、Bプロ「ソナチネ」も何かパッとしなかったんですよね。で、この作品も特に印象には残らなかったな。パリオペで「シルヴィア」といえばノイマイヤー版ね、と思うわけですが、今回のダルソンヴァル版は1979年にパリオペで初演されて以来踊り継がれてきているヴァージョンだそうです。ノイマイヤー版は敢えて言えば現代版ですが、こちらは神話の世界が描かれていて、小綺麗でクリアな作品ではあった。八菜さんもジェルマンも普通に良かったです。

 

「スプリング・アンド・フォール」振付 ジョン・ノイマイヤー

菅井円加/アレクサンドル・トルーシュ

 大変好みでした。全体的にとてもフレッシュ、瑞々しさを感じさせるパフォーマンスでした。最初のトルーシュのソロ、軽やかな跳躍で見せる力強さやエネルギーのほとばしり。何かを期待するような、未来から来る何かを待っているような、気持ちの高まりがあった。そこに現れる円加さん。2人がシンクロしたり、リフトがあったり、追いかけたり、それぞれ自由に踊ったり。出会えたことの喜びを確かめ合うような感じかな。見交わす時の爽やかな笑顔はこれから2人で歩いていくことに喜びや期待を感じているよう。リフトされた円加さんが滑るように降りていくところの動きが好きでした。

 

Part2に続きます→

 

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